マインドコントロールと洗脳
長い時間が過ぎ、友美がやってきた。
たぶん、一日経ったんだろう。
わたしは、ぼうっと友美を見上げていた。今日は、最初から男達と一緒だった。
「奈々。今日も、まず儀式からよ」
わたしは身構えた。儀式?
友美は、目配せして、男達が、わたしの方に歩み寄ってきた。わたしは、思わず、ベッドにしがみついた。
男達は、無理矢利わたしをベッドからひきはがすと、隣の部屋へとひきずって行った。それから、わたしの着ているものに手をかけ、それを脱がせると、水をかけた。
もう、わたしは、何も考えないようにして、抵抗しなかった。
抵抗しても仕方が無い。これは、どうしても行われるのだし、恥ずかしいとか、つらいとか、そういうことを考えても仕方が無い。
わたしは、寒さで気が遠くなり、それから、昨日と同じように、いつの間にかベッドに戻っていた。友美一人が、わたしの隣に座り、優しくわたしの体を抱いている。
ワンピースは新しいものに着替えさせられていた。
「さあ、奈々」
友美は、わたしの頬を優しく撫でた。
「懺悔をしましょう。」
わたしは、頷いた。
「奈々。あなたの罪は何?」
わたしは、再び頷いた。何も思い浮かばなかった。
「奈々」
友美は、優しく頬を撫でながら、わたしの顔を見つめていた。わたしは、じっと壁を見ていた。罪、わたしの罪。
「わたしは、洋一を殺したわ」
わたしは、自分でも知らないうちに、そう言っていた。
「殺したって、どういう意味?洋一は交通事故で死んだんでしょ?」
わたしは、頷いた。
「あの日、わたしは洋一に、図書館に行って本を返してきて欲しい、と言ったの。わたしがそう言わなければ、彼は死ななかった」
友美は、頷いた。
「そう。それは、あなたの責任よね。あなたが、そんなことを言わなければ、彼は、まだ生きていたのよ」
わたしは、友美の顔を見た。涙、わたしが目を閉じると、頬を温かいものが流れた。
「奈々。あなたは、それを懺悔する?」
「ええ」
「後悔している?」
「ええ」
友美は、わたしを抱きしめた。そして、わたしの濡れた髪を、そっと撫でながら、再び、しっかりと抱きしめた。
わたしは、本当に幸せな気分を味わっていた。
「よくやったわ、奈々。あなたは、自分の罪を認めた。えらいわ。何日も瞑想した努力が報われたのよ。これで、あなたは生まれ変わることが出来る。」
「わたしの罪は消えるの?」
友美は頷いた。
「そうよ。これから、そのためのトレーニングをすればね。」
そう言うと、友美は、わたしを立たせ、それから、手を引いて地下室から連れ出してくれた。
わたしは、従順なふりをしていた。
友美が引っぱって行くのに任せて、ふらふらと歩いた。事実、ふらふらしていたし。階段を上り、それから久しぶりに太陽の光を見た。
懐かしい太陽の光。
わたしは、眩しくて目を細めたけれど、決して目を閉じなかった。あの光が、こんなにも美しいなんて。
「奈々。まずはシャワーを浴びてらっしゃい。それから、報告に行くわ」
「報告?」
「そうよ。トレーナーに報告するの。奈々が生まれ変わるために、いろいろなことを助けてくれる人よ」
それって、わたしを地下室に閉じ込めた人?笑わせるわね。もちろん、そんなことは、全然、顔には出さなかった。
懺悔なんて、言えばいいのよ。それをわたしが信じているのだ、と思わせることが出来ればいい。とにかく、地下室から出たかっただけ。
そう、これはマインドコントロールじゃない。テクニックで言えば、「洗脳」かしら。拷問による、思考のコントロールのことを「洗脳」と呼ぶ。まともに考えられないほど痛めつけて、それから自我を破壊する。
「じゃあ、温かいシャワーを浴びてらっしゃい。食事を用意しておくわ」
友美は、にっこりと笑うと、わたしをシャワールームへと送り出した。




