第7話:【第1章】野に咲く花のように④
「おやつ丸のコンテストを開くのら!!
そこでマルタが優勝すれば、アルベールの父上たちも認めてくるのら!!」
「い、今川焼のコンテストって……
そんなもの開いたところで……
この街には今川焼のお店は五万とあるもの。
……私に優勝なんてできないわ……」
「……いや、彼女の言う事は名案かもしれないぞ……
確かに、コンテストで優勝すれば、屋号に拍がつく。
そうなれば、父上だって認めざるを得ないかもしれない……」
「む、無理よ!!
うちは人気店でもないのだし……」
「いいやマルタ!キミのお父上は、かつて我、屋敷に今川焼を献上しに来たほどの実力者だったのだ。
その、レシピや技を引き継ぐキミになら、優勝も夢ではないはずだ!」
マルタの肩を優しくつかむアルベールだが、マルタは首を強く左右に振る。
「お父さんには、亡くなるまで、今川焼の修行で褒められたことなんて、結局一度もなかったわ!
実際に、私に代替わりしたときに、当時のお客様はみんな、味が落ちたと言って、他の店にとられてしまったし!」
「……」
アルベールはマルタと向き合い真剣な表情で語りかる。
「マルタ……キヤが来てくれなければ、僕たちは駆け落ちしていただろう……
しかし、寸前で踏みとどまれたんだ……僕はキミの笑顔を消してしまう、最低の男にならずに済んだ。
このタイミングで、僕らの前にキヤが来てくれたのは運命だったのかもしれない……
その彼女が、提案してくれてるコンテスト案。
僕は乗ってみるのもありだと思ってる。
むしろ、これしかないんじゃないかとも思えてくる……
なんとか、頑張れないだろうか……?」
「……わかりましたアルベール様……
優勝できるかはわからないけど、せっかく認めてもらえるかもしれないチャンスなのだもの……
出来る限り頑張ってみる!!」
「よし、そうと決まれば、早速、父上にイベントを提案してこよう!
街の住民も盛り上がるものだし、すぐに実行に移せるはずだ!!」
そういうと、アルベールは意気揚々とお屋敷に帰っていった。
「良かったな!マルタ」
キヤはそう言って、マルタと向かいあった。
「キヤちゃん……あなたは不思議な子ね……
見た目とかは、すごく子供っぽいのに……あなたが言えば、そうしなきゃいけないような……
なんだか、すべてが上手くいきそうな……不思議な説得力があるもの……
アナタは私たちの聖女様なのかもしれないわね」
そう言って、マルタとキヤは二人で笑い合うのであった。
アルベールの予想通り、今川焼コンテストはすぐに開催が決定した。
その日からマルタは特訓を始めた。
父から教わったレシピや焼き加減などの技を一から見つめなおして、
人気店のものと食べ比べて、違いを突き詰めていく作業……
キヤは町の中の公園で座り大量の今川焼を食べていた。
「どこのおやつ丸もめちゃくちゃ美味しいのら!
並んででも買う価値があるのら!!」
どうやら人気店の今川焼を食べ比べているようだ。
「マルタのおやつ丸もめちゃくちゃ美味しいけど、
ずば抜けているというわけでもないのら……
たくさんおやつ丸を食べたら、なんだか眠たくなってきたのら……」
そのままベンチで横になって、うたた寝してしまうキヤ……
真っ白な世界……
キヤの夢の中の空間。目の前にテーブルと椅子があり、聖女様が笑顔でこちらを見ている……
そのうしろでは、シグルーンが瞳を閉じて待機している。
「キヤちゃん!大好きなおやつ丸よ!今日は私が焼いたの!召し上がって!!」
「聖女様が焼いてくれたのか?
これは……中に餡子と生クリームが入っているのら!!」
「ふふふ……ルミナリアスペシャルよ!」
「聖女様のオリジナルおやつ丸なのら!こっちのはチョコレートの味がする餡子なのら!!
どれも、めちゃくちゃ美味しいのら!!」
……
頭を抱えているマルタ。
テーブルには、他店の今川焼が皮と餡子を分解しておかれている……
恐らく、生地や入っている餡子のグラム数などをはかっていたのだろう……
「やるとは言ってみたものの……ダメだわ……その差が全然わからない……
私が焼いたものと、人気店のものの差が、そこまで無いように感じてる……
ううん、それどころか、お父さんから受け継いだうちの味が一番だって思っちゃう……
実際には、お客様はみんな離れて行ってしまうほどに差があるというのに……」
そんなところにキヤが飛び込んできた
「マルタ!おやつ丸作るのら!」
「キヤちゃん、お帰りなさい……って、うわ、なんかすごいいろいろ買ってきたわね……」
両手にお店の袋を抱えているキヤ。
「クリームとかチョコとか、いろいろ買ってきたのら!!
おやつ丸を作るのら!!」
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