第6話:【第1章】野に咲く花のように③
「ええ!?中央公園で今川焼売ってたの!?」
家に帰り、晩御飯を食べながら、今日の事をマルタに話したのだった。
「知らないお兄さんが助けてくれたから、助かったのら!!」
「助かったのらって、あなたねえ……
あそこは勝手にお商売したらいけない区域だから……頑張ってくれるのはすごくうれしいんだけど……
次からは、先に私に話してね。ちゃんと手続きしたら、正式に許可書を貰えるかもしれないんだから……」
「わかったのら!!」
「でも、その方のおかげね……
この街の自衛団の人って、獣人族を恨んでいる人が多くて、
もし捕まっていたら、今頃何をされていたか……」
その時、扉の方で音がした。
「マルタ、いるかい?ボクだ……」
「アルベール様!!」
家の中に男を迎え入れるマルタ。
「あ!助けてくれたお兄さんなのら!」
キヤの声に驚くアルベール。
「キミは、昼の……」
「え?キヤちゃんの言ってた助けてくれた方ってアルベール様だったのですか?」
キヤの事をアルベールに説明するマルタ。
「そうだったのか……とにかく昼間は無事でよかったよ」
そしてアルベールとマルタ二人の話。
「キミとのことは父上にはちゃんと説明している。必ず、わかってくださると信じている」
「アルベール様……」
キヤは見つめ合う二人を交互に見上げている。
「二人は好き同士なのか?」
「え?もう、キヤちゃんったら……」
そう言って顔を赤らめるマルタ。
アルベールがそんなマルタの肩に優しく手を置いて答える。
「そうだ、僕たちは愛し合っているんだ……」
「キヤと聖女様みたいなものか?」
「セ、聖女様?」
マルタはキョトンとして聞き返す。
アルベールは何かに気付いたようだが……
「そう言えば、新たな聖女様は初の獣人族と聞いているが……その獣人の聖女様と知り合いということなのか?」
「???」
今度はキヤがキョトンとしてアルベールを見ている。
「と、とにかく……
私のお父さんが今川焼を領主さまに献上する機会があってね。
そこで、私とアルベール様は出会ったの」
「もし父上から、キミとの関係が認められないときは……
マルタ、駆け落ちしよう。
二人で誰の手も届かないところに行くんだ。」
「……それしかないのね……わかりました、アルベール様」
「駆け落ちー?二人でどこかに行ってしまうのか?」
「そうよ……キヤちゃんとも会えなくなってしまうかもね……
あ、それともキヤちゃん、私たちと一緒に来る?」
「ダメなのら!父上と母上が生きているのに、二人と離れ離れになるなんて!絶対に良くないのら!」
キヤのその言葉を聞いて、初めてアルベールが少し感情をあらわにした。
「そうはいっても、僕たちは貴族と平民。本来かなわぬ恋なのだ!それしかない。」
「それで本当に、マルタは幸せになれるのか!?
逃げ伸びた先で、おやつ丸を食べて本当に笑顔になれるのか!?」
「キヤちゃん……」
少し考え込んでしまうアルベール
「その通りかもしれないな……
僕はもう少しで道を間違えるところだったのかもしれない……
駆け落ちして、転々と逃げ回ってもキミの笑顔は見れない……
もう少し……父上たちを説得できるように、頑張ってみよう」
「なのら!」
「アルベール様!」
そう言って二人で強く抱き合うアルベールとマルタ。
キヤは二人を見守りながら今川焼を口いっぱいに頬張るのだった。
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