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野に咲く聖女放浪記  作者: けけりーな
第一章 野に咲く花のように
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第4話:【第1章】野に咲く花のように①

「お金なんか持ってないって言ったら、馬車のオヤジに叩き下ろされてしまったのら……ひどすぎるのら……」


キヤは、ふらふらとした足取りで街道を歩いていた。


「なんだか、おなかもすいてきたのら……なんか目の前がグルグルなのら……」


そのまま街道の真ん中で、ぶっ倒れてしまうキヤ。

すると、一人の女性が駆け寄ってきた


「ちょっと、あなた大丈夫!?」


二十歳過ぎぐらいだろうか?女性はキヤを抱きかかえて、心配そうに顔を覗き込んでくる。


「おなかがすいたのら……」


「おなかが?じゃあ、ウチの今川焼きで良かったら食べる?」


キヤは、その女性の顔を見たまま空腹で気を失ってしまった。



甘く香ばしい匂いで、キヤは目が覚めた。

小さな部屋の布団で寝ている。

どうやらさっきの女性が、空腹で気を失ったキヤを連れてきてくれたようだ……


「なんだか部屋の外から良い匂いがするのら……」


匂いに釣られ、玄関に行くと、そこでは、円形のくぼみのある独特の鉄板で、多くの今川焼が焼かれていた。


「あら?目が覚めたのね。」


肩よりも少し長い甘栗色のストレートへアに、白い割烹着をかぶっている。

なかなかに整っているが、看板娘らしく親しみやすい顔だちの美人。



「これ、食べる?焼き立ての今川焼よ!」


「うまいのら!おやつ丸なのら!久々に会えたのら!!」


「え?おやつ丸?誰?」


「コイツの名前なのら!おやつ丸なのら!!」


今川焼を頬張りながら、嬉しそうに語るキヤ


「え?それは今川焼だけど……あ、地方によって呼び方が違うって聞いたことがあるわね……

アナタのところでは、おやつ丸って呼ばれてたんだ……」


二つ三つとバクバクたいらげていくキヤ。

その様子を微笑ましく見ていた女性だったが、少し表情が曇る。


「獣人族には、厳しくあたる町や村って、いまだにあるからね……

行き倒れになってたけど、アナタもひどい目に遭ってきたんじゃない?


あなた、お名前はなんて言うの?」


「キヤの名前はキヤなのら!お姉さんはなんて言うのら?」


「私はマルタよ。この街で今川焼屋をやってるの。」


キヤは出された今川焼をすべて平らげ満足そうにする。


「ありがとうなのら!めっちゃおいしいおやつ丸だったのら!!」

満面の笑み。


「そこまで嬉しそうにされると、ご馳走した甲斐があったわ……

この街はそこまで獣人族への偏見はないからゆっくりしていってね。


さっき寝てた部屋なら、自由に使ってもらっても良いからね」


「本当か!?ありがとうなのら!

あ……でもキヤはお金持ってないのら……」


「大丈夫よ、キヤちゃんみたいな小さい子からお金とろうなんて思ってないから!」


そう言って笑うマルタ。


「なんか悪いから、お仕事探してくるのら!」


「え?そんなの構わないわよ……どうせこの家、私一人だし……

……でも、すぐに働こうとするのは感心だわ……じゃあ、ウチの仕事手伝ってくれる?」


「わかったのら!手伝うのらっ!」

飛びあがり喜ぶキヤ


店の前で魔導拡張機を持って売り子をするキヤ。


「おやつ丸~おやつ丸~美味しい、おやつ丸なのら~!!」


店頭で、今川焼を焼いていたマルタが大きな声でキヤに説明する。

「キヤちゃん!今川焼だから!おやつ丸じゃないからね!!」


旅の冒険者のような男が、今川焼ののぼりを見て足を止める。

「へ~今川焼か……」


すかさず寄っていくキヤ。

「おやつ丸なのら!!」


「おやつ丸?新商品か?どれどれ……」


キヤと二人で、店にやってくる冒険者。


「おやつ丸ってやつを見せてくれ。どんな菓子なんだ?」


「いらっしゃいませ……って……えっと、普通の今川焼しかなくって……」

困り笑で対応するしかないマルタ。


「なんだそりゃ?この菓子をおやつ丸なんて呼ぶ国はあったかな?

まあ、俺も全世界を回ったわけではないが……

妹は獣人族なのに、姉貴のアンタは人間なんだな?」


「ああ、いえ、妹と言うわけじゃなくって、バイトしてくれてるって言うか……」


「そうなのか……獣人族の女は成長したら色々と危険が増える……

聖女様は撲滅にお力を注いではいるが、まだまだ密猟者は多くいるからな……まあお前も気を付けることだ」

そう言ってキヤの頭を撫でる冒険者。

この男は聖女がルミナリアからキヤに変わったことをまだ知らないようだ……


「よし、三個貰おう。今から向かう隣街までは結構距離がある、腹持ちの良い今川焼は良い携帯食になるからな」


「あ、ありがとうございましたー!」


冒険者は今川焼を持って街を出て行った。


「キヤちゃんのおかげで、早速売れたわ。あなた商才あるんじゃない?」


「おやつ丸売れたのら!良かったな!!」


「だから、おやつ丸じゃなくて、今川焼なんだってば……」


そう言って、笑い合うキヤとマルタなのであった。


最後までお読みいただきありがとうございます。


よろしければ、次のお話もまたよろしくお願いいたします。

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