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恋愛小説のオムニバス  作者: 蒼井スカイ
桜と橘
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23/32

5.上京

 寝る前と目覚めてすぐにスマホの画面を真っ先に確認する習慣ができていた。それも東京に戻っていった彼から時々メッセージが送られてくることがあったからだ。


――今週は九州に出張だったよ。仕事の合間に温泉をはしごして、地元のグルメも味わったよ。佐倉さんにも食べさせてあげたい。

――今、出張でマレーシアに来てるよ。今夜は星空が綺麗だ。佐倉さんのいる街でも見えてるかな?


 彼からのメッセージの内容は他愛のない話題だったが、いつからかメッセージが届くのを楽しみに待つようになっていた。もちろん、その都度返信もしている。彼が「星空が綺麗だ」とメッセージを送ってきた時には、その日の夜空を撮影して画像を送信した。返信が長くなると迷惑になると思い、最小限に抑えるよう何度も文字を消したりして。



 彼が東京に戻って1カ月もすると、不定期に送られてきたメッセージはパタリと途絶えた。きっと仕事が忙しいのだろうと思い、自分からメッセージを送れるのを躊躇っていた。


 それ以来、彼からの連絡はなくなり、寝る前と目覚めてすぐにスマホの画面を確認していた習慣もなくなってしまった。



大学3年の夏、地元企業のインターンシップに参加したが、魅力を感じる会社はなかった。というのも志望職種は本社がある東京での採用ばかりだったからだ。



 その年の冬、久しぶりに彼からメッセージが届いた。


――久しぶりだね。実は海外でトラブルに遭ってね、帰国するのに時間がかかったんだ。ようやく自宅に戻ってくることができたよ。

 佐倉さんは今頃就活で忙しくなってきたところかな? もしも東京に来ることがあったら連絡してね。これでも社会人経験は長いからね、就職の相談にも乗るよ。


 彼が海外で何かのトラブルに巻き込まれていたと知り、驚いた。無事に帰国したというから心配はないのだろうけど、何故だか胸がザワザワとした。


 それから、週2~3回の頻度で再び彼からメッセージが届くようになった。私が就活で忙しいということが分かっているからか、メッセージは夕方以降に届くことが多い。滅多にないが、時々、話題が尽きなくて寝る前までやり取りが続くこともあった。


 彼とのメッセージでのやり取りはほぼ毎日になっていた。お互いに忙しい時でも、「おやすみ」を欠かすことはなかった。




 季節は流れ、大学4年の春――。


 悩んだ末に、東京での就活を決断した。他の学生から1歩も2歩も遅れた中での就活は思った以上に苦労した。特に、本社のインターンシップに応募もせずにエントリーしたことで、企業の担当者から嫌味を言われた時は正直堪えた。それでも、やれることはやろうと思い、筆記試験や面接対策に集中した。



 本社主催の企業説明会に参加するため、私は東京へ行くことになった。


 仕事で忙しい彼に連絡を取るかどうか迷ったが、何かと私を心配してくれていたから報告だけはしておこうと思い、メッセージを送った。


 その日の夜、彼から返信があった。


――佐倉さん、東京で就職することにしたんだね。きっと佐倉さんなら大丈夫だよ。もし佐倉さんさえ良ければ、企業説明会の後に夕食でもどうかな?


 東京での就活や就職後の生活について話を聞きたかったこともあり、「ぜひよろしくお願いします」と返信した。





「佐倉さん、待たせてしまって悪かったね」

「いえ、さっき来たばかりですから」

「会社を出る前に、部下に捕まってしまってね」

「橘さんはお仕事されてるんですから、お気になさらず」

「ありがとう……そうだ、夕食だけど、何か食べたい物はある?」

「食べたい物……こってり系よりさっぱり系でしょうか?」

「さっぱり系か……じゃあ、和食かな?」

「はい、あっ、でも高級なお店とかではなくても全然いいのでっ! もっとカジュアルなお店でっ!」

「僕が知ってるお店だと……佐倉さん、僕の幼馴染みがやってるお店があるんだけど、そこでもいいかな? 居酒屋メニューとかも置いてある比較的カジュアルな店だから、気負わずに食事を楽しめると思うよ。もちろん味は保証するよ」

「はい、じゃあ、そのお店でお願いします」




 街中の飲食店で賑わう一角に、彼の幼馴染みが経営しているというお店があった。暗めのグレーの外壁に木のドアが一つだけ。窓はなく、何のお店なのか、一目見ただけでは分からなかった。


 彼は木のドアを開けて、中へ入って行った。


「いらっしゃーい……あれっ? 結人じゃん、珍しいな、平日に来るなんて……はは~ん、そういうことか」

「おい、勝手に自己完結するなよ」

「そちらの可愛いお嬢さんは? まさか、お前……」

「ちげ~よ、変な想像するなっ。彼女は佐倉咲さん」

「あぁー、もしかして出張先で世話になったっていう?」

「えっ?」

「咲ちゃん、初めまして、俺は高杉遼。結人とはガキの頃からの腐れ縁でね」

「おいっ、馴れ馴れしく下の名前で呼ぶなっ」

「何だよ、大の大人が嫉妬なんて恥ずかしいぞ」

「馬鹿言うなっ」

「ねぇ、咲ちゃんもそう思うでしょ?」

「えっ、その……」

「遼っ! 佐倉さんを困らせるなっ。座敷空いてるだろ?」

「あぁ、奥の座敷なっ」

「佐倉さん、行こう」

「あっ、はい……。あの、佐倉です。よろしくお願いします」

「うん、礼儀正しいね~。こちらこそよろしくね~」

「佐倉さん、コイツの相手はしなくていいから」

「えっと、失礼します……」

「咲ちゃん、腕を振るうから、たくさん食べてってね」

「はい、ありがとうございます――あわ……」


 橘さんに手を引かれ、一番奥の座敷へと移動した。


「佐倉さん、アイツがごめんね。馴れ馴れしくって」

「いえ、大丈夫です。でも、驚きました。橘さんも砕けた話し方をするんだなって」

「あぁ、野郎同士だとあんなもんだよ。仕事相手と話す時間の方が長いから、自然と丁寧な話し方になるけど、遼と話す時はいつもあんな感じかな」

「そうなんですね、とても新鮮でした」

「そう、かな?」

「はい」


 彼はやさしい微笑みを浮かべながら、「好きな物を選んで」とメニュー表を差し出した。



「お待ちどうさま~、咲ちゃん、これは俺からのサービスだよ」

「ありがとうございますっ」

「おい、さっさと置いて仕事へ戻れよ」

「ちぇっ、俺だって咲ちゃんと話したいのに~」

「ふふふ」

「ねっ、結人って冷たい男だと思わない?」

「いえっ! 橘さんはいつもやさしいですっ」


 高杉さんはニヤニヤしながら、彼を見ている。そんな友人の揶揄いに嫌気が差したのか、再び仕事へ戻るよう徐々に口調が強くなっている。高杉さんは「はい、はい、邪魔者は消えますよ~」と言い、座敷を後にした。


「ったく、アイツはいつまでも学生気分が抜けないんだから」

「高杉さんととても親しいんですね」

「アイツとは幼稚園からの腐れ縁でね、高校まで一緒だったんだよ。高校卒業後は、遼は調理師を、俺は商社を選んだ」


――橘さん、「僕」から「俺」になってる。もしかして、「俺」って言っている時の方が素なのかな。何だか、橘さんの新たな一面を発見したみたいでうれしいな。



「佐倉さん、今日は企業説明会だったよね。感触はどうだった?」

「はい、希望職種なだけに、とても魅力的でした。皆さん、生き生きとしていて、とてもいい会社だなって思いました。私もあんな会社で働くことができたら楽しいだろうなって」

「そうか、いい会社に出会えて良かったね」

「はい、でも、本番はこれからですから」

「そうだったね。6月位から筆記試験や面接が始まるんだったよね」

「はい、できるだけ日程が被らない企業を選んだので、対面での面接を受けるのに2週間はこっちに滞在するつもりです」

「2週間か……滞在先はもう決めてるの?」

「いえ、さすがに……まだ最終面接まで行けるか分からないので……」

「でも、6月以降は就活生や受験生でホテルの予約が取りにくくなるからね。仮でも早めに予約をしておくといいよ」

「そっか、そこまで考えてなかった。でも、たぶんホテルの宿泊費は高いので、シェアハウスを探そうかと……」

「シェアハウスか……うーん、それも選択肢の一つかもしれないけど、あまりおすすめできないな。シェアハウスとなると、同居人が全員男になる可能性もあるし、そうじゃなくても2週間とはいえ、素性が分からない他人と1つ屋根の下で暮らすのはリスクが高いと思うよ」

「う~ん、そうですよね……こっちに親戚や友人がいれば良かったんですけど……」

「――佐倉さん、それなら俺の部屋から通えばいいよ」

「――えっ!」

「あー、いや、俺は6月から海外出張の予定があってね。と言っても、普段から会社に缶詰めだから、時々寝に帰るだけでほとんど使ってないんだ」

「いえ、それでも、さすがにご迷惑はかけれませんし……」

「ちょうど空き部屋があるし、マンションはオートロックでエントランスにマンション専属のコンシェルジュも常駐しているから、女性1人でも安全だし。もちろん、佐倉さんがいる間、俺は会社で寝泊まりすればいいから安心して使ってくれていいよ。どうかな? 俺としても無駄に家賃を払うよりも、佐倉さんが就活の間だけでも使ってくれれば有難いよ」

「――」


――オートロックでマンション専属のコンシェルジュが常駐のセキュリティが完璧なマンション。私が部屋を借りている間、橘さんは会社に……。でも、さすがにタダで泊まらせてもらうのは……。


「とても有難いお話ですが、やっぱり……タダでお部屋を借りるのは申し訳ないですし……」

「もし、タダで部屋を借りることを気にしてるなら、こうしようか。俺が東京に戻ってきたら、今日みたいに食事に付き合ってほしい。俺の休日と予定のない日が重なったら、俺の行きたい場所に付き合ってもらうってのはどうだろう?」


――ん? 食事に付き合う? 橘さんの行きたい場所に付き合う? それってまた前みたいに2人で出かけるってこと? でも、そんなことで、橘さんの部屋をタダで借りることと釣り合うのかな?


「佐倉さん、今ここで結論を出さなくてもいいよ、まだ時間はあるからね。強制するつもりはないし、選択肢の一つとして考えてくれればいいよ」

「――はい、少し考えさせてください」

「もちろんだ。でも、突然、部屋を貸すって言われても困るよね。つい佐倉さんのことが心配で、お節介だったよね?」

「いえっ! そんなことはありません。橘さんは私のことを考えた上で提案してくださったと思うので。こっちに知り合いはいませんし、知らない土地でこうして知ってる方に会えるだけで、少しホッとしてるんです」

「――そうか、それなら良かったよ」

「あの、1つだけ聞いてもいいですか?」

「何かな?」

「その……」


――私が気になるのは、橘さんはどうしてそこまで私にやさしくしてくれるのか? ということ。話を聞いている限り、私を自宅に呼んでどうこうしようというような下心は感じられない。もしかしたら、橘さんが入院した時、私が親切にしたことへのお礼のつもりなのかもしれない。だとしても、ちょっと私にやさしすぎるのではないかと思う。


「あの、橘さんは、どうしてそんなに、私にやさしくしてくれるんですか? えっと、入院の時のお礼はしてもらいましたし、むしろ、私の方がご馳走になったり親切にしてもらったりしているので……」

「――そうだね、佐倉さんからすると、俺がしてることって『下心でもあるのか?』と思われても仕方のないことだよね」

「いえっ! そこまではっ……あっ、そうではなくて……」

「あははは、佐倉さんは素直だね。ちゃんと分かってるから大丈夫だよ」


 自分が失礼なことを言ってしまったと焦っていると、彼は歯を見せて笑っている。いつもの口調で私の疑問に答えてくれた。


「正直なことを言うとね、本当は俺にも分からないんだ」

「――」

「何故かな、佐倉さんのことが放っておけないんだ。不思議に思うよね? 佐倉さんと出会ってそんなに時間は経ってないのに、そんなことを言うのは。強いて言うなら、『佐倉さんを応援したい』かな?」

「応援、ですか?」

「うん、俺は佐倉さんの全てを知ってる訳じゃないけど、見ず知らずの俺のために病院まで付き添ったり、買い物を代わりにしてくれたり、俺が使いやすいように買った衣服の洗濯までしてくれた。普通なら、怪しがって関わろうとしないだろうね。けど、佐倉さんは何も知らない俺のことを疑わず、信じて、真摯に向き合ってくれた。それは、誰にでもできることじゃない。佐倉さんだからできることなんだと思う。

 それに、こっちに戻ってからも随分と君から届くメッセージに救われたんだ。帰国後は中々タイトなスケジュールでね、挙句の果てに一番忙しい時に帰国が遅れた。不運続きだったけど、君からの何気ない言葉が俺を奮い立たせてくれていたんだ。だからかな、俺は君に何かしてあげたくなるんだと思う。どうかな? これで佐倉さんが聞きたかった答えになったかな?」

「――はい……」



 彼が烏龍茶で喉を潤していると、彼の幼馴染みが再び顔を出した。


「結人、酒はいいのか?」

「あぁ。何しに来たんだよ、注文した料理は全部来たぞ?」


 高杉さんは彼の問いかけに答えず、片手に持っている1皿を私の目の前に置いて、にっこり笑顔を見せた。


「咲ちゃん、これは俺の嫁さんが考案したデザートプレート。俺からのサービスだよ」

「わぁ~、美味しそう~、本当に頂いてもいいんですか?」

「あぁ、もちろんだよ。可愛いお嬢さんにはやさしさとサービスを、が俺のモットーでね」

「へぇー、いつからそんなモットーができたんだ? 真希さんは知ってるのか?」

「お~い、冗談だろ、冗談っ。真希に入れ知恵するのは止めろよなっ」

「入れ知恵じゃなくて、事実だろ?」

「咲ちゃ~ん、結人がいじめるよ~」

「黙れっ、さっさと出てかないと真希さんを呼ぶぞ?」

「あ~、はい、はい。分かりましたよ……全く、嫉妬する男は嫌われるぞ」

「真希さ~ん?」

「おいっ、マジで呼ぼうとするの止めろよっ。分かったっ、すぐに出てくから、勘弁してくれよ」

「分かったなら、さっさと出てけっ」


 彼の幼馴染みは逃げるように座敷から出て行った。


 軽口を言う彼を見て笑っていると、目が合ってしまった。いつもならやさしい笑みを浮かべながら、視線を逸らしていくのに、何故か視線は重なったままだ。


――えぇ~、どうして、目が合ったままなの? 目を逸らす? でも、それって意識しすぎじゃない? ここは微笑んで、サラッと交わしてみる? そんな高等テクニックがあったら、苦労しないよ~。どうしよう、目を逸らせない……。恥ずかしすぎるぅ~!


 頭が混乱しかけた時、彼は「ふっ」と小さく笑い、自然な流れで目を逸らしてくれた。


「全く、ガキじゃあるまいし、俺が女性を連れてるからって、アイツははしゃぎすぎなんだよ……」

「高杉さんは、面白い方ですね。今まで連れてきた女性にもあんな風に?」

「あぁ、そうなんだよ。本当にいくつのガキなんだか……」

「――そう、なんですね……」


――そっか、そんなの当たり前だよね。橘さんはこんなに素敵な大人の男性だもの、女性の1人や2人、幼馴染みに紹介してる人がいるはずだ。それに、私は橘さんの彼女でも何でもないんだから……はっ! 私は何を考えてるの? 私はまだ学生で、橘さんは大人の男性……釣り合う訳がないしっ! あ~、こんなこと考えるのすら、橘さんに失礼だ。も~、何でこんなこと考えちゃうのよ!


「佐倉さん?」

「へっ? あ、えっと、その……」

「――念のため言っておくけど、俺が女性をこの店に連れてきたのは佐倉さんが初めてだからね」

「えっ? でも、さっき……」

「――はぁ、やっぱり……さっき言ってたのは俺のことじゃなくて、もう1人の幼馴染みのことだよ。高木晋っていうヤツなんだけど、3人とも高校が一緒でね。晋が彼女をとっかえひっかえ連れてくる度に、遼が揶揄ってたんだよ」

「あ~、幼馴染みの……、彼女をとっかえひっかえ……」


――橘さんのもう1人の幼馴染みの人は女ったらしなのかな? まさか、橘さんも……? それに「類は友を呼ぶ」って言うし……。


「佐倉さん、何か俺のこと誤解してない?」

「えっ、そ、そんなことは……全く……」

「誤解してほしくないから言っとくけど、彼女をとっかえひっかえしてたのは晋だけで、俺は違うからね。まぁ、ついでに言うと、遼もあの頃から嫁さん一筋だから」


――あっ、私の思考、完全に読まれてた? 私、そんなに分かりやすい顔をしてたのかな? 何だか、恥ずかしい……。でも、そっか、橘さんは女性をとっかえひっかえしてた訳じゃない、と。良かっ……、何が良かった? 良くはないだろう? 良くないことはない……あぁ~、もう訳が分からなくなってきた。もう止めよう!


「ぶはっ……あははは……」


 彼が突然、大きな笑い声を上げた。両腕はお腹を抱えている。一体何が起きたのだろうか? 彼が笑ってる理由が分からずに呆然としていると、笑いを堪えながら彼が口を開いた。


「佐倉さんは本当に見ていて飽きないよ」

「へっ?」

「表情がコロコロ変わるから、見ていて面白い」

「えっ、私、顔に出てましたか?」

「くっくっくっ……自覚なかったんだ……あははは……」


――また、笑われたぁ~。もう、恥ずかしすぎるっ! 何で私はそんなに分かりやすく顔に出ちゃうのよ。もう、知らないっ。


 これ以上彼に笑われないため、目の前にあるデザートプレートを味わうことだけに集中した。


「うぅ~ん、これ、美味しい~」


 ほんのり溶けかけたキャラメルのアイスが口の中でサーッと広がっていく。プリンのカラメルソースのような苦味があり、後味がくどくない。

 苺のソルベは甘酸っぱさのある爽やかな味わいだ。紅茶のシフォンを一口大にして溶けたソルベをソース代わりに染み込ませて口の中へ入れると、これまた紅茶のフレーバーとソルベが見事にマッチして美味しかった。口直しに添えられたフルーツの盛り合わせを味わった。どれも美味しく、贅沢とも言える逸品だ。


「遼の奥さんは元大手ホテルの専属パティシエだったんだよ」

「だから、こんなに美味しいんですね」

「気に入ったみたいだね」

「はいっ、今までで食べたスイーツの中で三本指に入る美味しさですっ」

「佐倉さんに喜んでもらえてうれしいよ。ここに連れて来て良かった」

「今日は素敵なお店に連れて来てくださって、ありがとうございました」

「佐倉さんに喜んでもらえて良かったよ。佐倉さんがこっちに来た時、また来よう」

「――はいっ、一緒に行けるよう就活頑張りますね」

「佐倉さんなら大丈夫だよ」

「ありがとうございます」

「じゃあ、気をつけて帰ってね」

「はい、おやすみなさい」

「おやすみ」


 私は彼と東京駅で別れた。

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