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第27話「アメリカという国」

________________________________________

1. 田中邸への招集

________________________________________

【前日・官邸】


藤堂は、田中に電話をかけた。

「田中さん、ドラープ大統領の動きを見ていると」

「日米関係の前提が、崩れつつあると感じます」

「一度、腹を割って話したいんです」

田中の声が聞こえる。

「わかった。明日、わしの家に来い」

「高橋と磯村も呼ぶ。ミネルにも準備させる」

「アメリカという国について、真剣に考える時が来た」

________________________________________

【翌日・田中邸 応接間】


庭で小鳥がさえずる、すがすがしい朝。

藤堂総理、高橋俊介、磯村匠海が集まった。

そして、AIミネルも質問に答えられるよう、スタンバイ済みだ。

田中は、ゆっくりと湯呑を置き低い声で語り始める。


「総理、高橋、磯村......」

「わしは、アメリカという国を」

「どうしても素直に、信じられん」

「原爆を落とされた国として」

「あの国を『善意の守護者』とは、思えんのだ」

藤堂が、静かにうなずく。


「今日は」

田中が続けた。

「アメリカという国について」

「みんながどう思っているのか」

「それぞれの考えを、聞かせてくれ」

________________________________________

【田中の問題提起】


「日米安保が、日本を守ってきたのは認める」

田中が言った。

「だがな、安倍総理の集団的自衛権の解釈変更」

「高市総理の武器輸出三原則『5類型』の撤廃......」

「あれは、日本をアメリカの戦争に巻き込む道じゃ」

「わしは、それが怖い」

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【高橋の現実論】


「オヤジの気持ちは、よく分かります」

高橋が落ち着いた声で言った。

「ただ、日本は日米安保の下で守られてきたのも事実です」

「アメリカが軍事費増額を求めるのは」

「ある程度は、仕方ない面もある......」

「でも、今の状態が最善だとは」

「私も、思っていません」


藤堂は、少し言葉を選びながら続ける。

「アメリカの政権が変わるたびに」

「日本の立場が、揺れる」

「ヘンドリクス大統領の時は、協調的でしたが」

「今のドラープ大統領は『自国の利益が最優先』という姿勢が」

「より明確です」

「日本として、どう自立性を確保するか......」

「悩んでいます」


高橋が、腕を組み冷静に語る。

「アメリカは、オバマ政権の頃に」

「『世界の警察をやめる』と宣言しました」

「その後は『選択的関与』です」

「つまり、アメリカは『自国の利益に合う時だけ動く』」

「台湾防衛も、今や『国益に見合う範囲で』という発想に」

「変わりつつある」

「そして忘れてはならないのは」

高橋が続けた。

「アメリカは、世界最大の核保有国でありながら」

「長年、中東で武力行使を続けてきた国だということ」

「ロシアや中国が侵攻を批判されると」

「『アメリカも同じことをしている』と反論するようになった」

「これは、国際秩序にとって非常にまずい流れです」

磯村が、眉をひそめて聞く。

________________________________________

【磯村の理想論】


「高橋さんの言う通りです」

磯村が、少し感情を込めて言う。

「日本は、アメリカに依存しすぎている」

「このままでは、アメリカの都合で」

「日本が動かされるだけじゃないですか」


高橋が、やんわりと制する。

「磯村、感情的になるな」

「アメリカとの同盟は、必要だ」

「ただし『依存から対等へ』という方向性は」

「間違っていない」


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2. 両国民が持つイメージ

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【データで見る日米関係】


「田中さん、高橋さん、磯村さん」

藤堂が言った。

「議論の前提として、確認したいことがあります」

「日本人とアメリカ人は、お互いをどう見ているのか」

「ミネル、データはあるか?」


「はい」

ミネルが答えた。

「興味深い調査結果があります」

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【日本人のアメリカ観】


「高橋さんの言う通り」

ミネルが説明した。

「かつて、日本人にとってアメリカは『頼りになるお兄さん』だった」

「そして『シンデレラ・ストーリーの国』という憧れの対象だった」


「しかし現在は、大きく変化しています」

「日本人のアメリカ観は」

「『憧れの国』から『現実的な同盟国』へと変化しており」

「世論調査でも、その変化が明確に確認できます」

「特に、1970〜80年代の『シンデレラ・ストーリーの国』というイメージは」

「90年代の貿易摩擦、2000年代以降の対テロ戦争」

「そして近年の米国内分断を経て」

「より複雑で、多面的な評価へと変わっています」


「2010〜2020年代の調査では」

「米国内分断とドラープ政権で、複雑化している」

「日米共同調査では」

「日米関係の評価は両国民とも『出来事に連動して上下する』ことが示されています」

「米国内の政治的分断や政権交代は」

「日本人のアメリカ観にも、影響を与えているようです」

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【アメリカ人の日本観】


「それでは」

高橋が聞いた。

「アメリカ人から見た、日本のイメージはどうなんだ?」


「アメリカ人の『日本へのイメージ』は」

ミネルが答えた。

「1980年代の『経済的ライバル』から」

「現在では『最も信頼できる同盟国の一つ』へと、大きく変化しています」


「外務省の『米国における対日世論調査』では」

「近年のアメリカ人の日本観は、非常に良好です」

「2025年の調査結果では:」

「・日本との関係は友好」

「・日本は信頼できる」

「・アジアで最も重要なパートナー」

「・日米安保を維持すべき」

「などの意見が多く」

「アメリカ人の圧倒的多数が『日本は信頼できる同盟国』と認識している」

「また、日本は米国経済に『良い影響を与えている』という評価も高い」

「つまり、1980年代の『経済的脅威』というイメージは完全に消えています」


「それと、別の国際調査(2025年)では」

「アメリカ人の日本への好感理由として」

「日本食、歴史・文化、商品の品質の高さが高く評価されていて」

「文化的魅力が、アメリカ人の日本観を強く支えています」

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【高橋の解釈】


「アメリカ人から見た日本のイメージは、非常に良好だ」

高橋が言った。

「これは、外交資産として極めて重要です」

「同盟国として信頼されているということは」

「日本の発言力を高める、土台になる」

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【田中の反論】


「待て、高橋」

田中が言った。

「『イメージが良い』ことと『守ってくれる』ことは、別じゃ」

「アメリカ人が日本の寿司や文化を好きでも」

「戦争になったら、自国の若者の命を賭けてまで」

「日本を守るのか?」

________________________________________

【ミネルの補足データ】


「田中さんの懸念は、的を射ています」

ミネルが言った。

「実は、興味深いデータもあります」

「2024年の調査では」

「アメリカ人の60%が『アメリカは世界の警察であるべきではない』と答えています」

「また、『同盟国を守るために米兵の犠牲を払うべきか』という質問には」

「賛否が分かれています」

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【議論の深まり】


「ほら見ろ」

田中が言った。

「アメリカ人自身が『他国を守りたくない』と思っとる」

「これが、現実じゃ」


「しかしオヤジ」

高橋が反論した。

「それでも、日米安保は維持されている」

「世論と政策は、別です」

「政府間の合意と、国民の軍事同盟は」

「別次元で機能しています」


「磯村さん、あなたはどう思う?」

藤堂が聞いた。

「オヤジの言う通りです」

磯村が答えた。

「『イメージ』と『安全保障』は、別次元の問題です」

「日本は、この『好感度』に甘えすぎてきたのではないでしょうか」


「......その通りですね」

藤堂が言った。

「『好感度』は、外交の出発点にはなりますが」

「それだけでは、国は守れない」

「では、次に具体的な歴史を見ていきましょう」

「アメリカが実際に、どう行動してきたのか」


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3. アメリカとイラン

________________________________________

【アメリカの中東政策】


「高橋」

田中が言った。

「お前は『日米同盟は必要』と言うが」

「アメリカが実際に、どんなことをしてきたか知っとるか?」

「イランでの話を、ミネルに説明させてみろ」


高橋は、少し躊躇した。

「......わかりました」

「ミネル、1950年代以降のイランについて」

「アメリカとの関わりを、説明してくれ」

「わかったわ」

ミネルが答えた。

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【クーデター】


「1953年、イランではクーデターが起きました」

ミネルが説明した。

「1958年のクーデターによって」

「王族を排除して共和国を樹立したカーセムは」

「その5年後、バース党による軍事クーデターで殺害されました」

「このクーデターには、アメリカのCIAが関与していました」

「モサデグ政権(1951〜1953年)は」

「長年イギリスに利権を握られていた石油産業の、国有化を断行しました」

「これに対し、イギリスに助けを求められたアメリカは」

「CIAを送り込み、軍事クーデターによって政権を転覆させました」

「そして、イランをパフラヴィー2世による」

「中東屈指の親米国家にしました」

「アメリカは、イランの石油利益の半分を」

「西欧諸国と分け合いました」


田中が、机を叩く。

「石油利権のために、他国の政権を転覆させる」

「これが『自由と民主主義の守護者』のやることか」


「オヤジ」

高橋が冷静に言った。

「当時は冷戦の真っ只中です」

「ソ連の影響力拡大を防ぐという、戦略的な判断もあった」


「でも結果として」

磯村が言った。

「反米感情を生んだのも、事実です」

________________________________________

【イラン革命】


「パフラヴィー2世は、独裁色を強めていったため」

「1979年『イラン革命』が起こり、失脚しました」

「イランは、ホメイニ師を担ぎ上げて」

「反米イスラム国家に変わりました」

「この革命の最中に」

「反米のイラン人学生らが、テヘランのアメリカ大使館を占拠し」

「外交官ら52人を、444日間にわたり人質に取るという」

「アメリカ大使館占拠事件が起こりました」

「両国は、国交を断絶しました」

「......独裁政権を支援した結果、革命が起きた」


藤堂が言った。

「そして、アメリカは敵を作った」

「そうじゃ」

田中が頷いた。

「自分で蒔いた種じゃ」

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【ソレイマニ司令官殺害】


「2020年」

ミネルが説明した。

「アメリカ・ドラープ大統領(当時)の指示により」

「イラクのバグダッド国際空港付近において」

「米軍がドローン空爆により」

「イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を、殺害しました」

「イラン国内では、最高指導者に次ぐ実力者とも称される」

「国民的英雄の死により」

「アメリカとイランの対立は、一触即発の危機に陥りました」


「これは......」

磯村が聞いた。

「国際法上、正当化できるんですか?」

「グレーゾーンです」

高橋が答えた。

「アメリカは『自衛』と主張していますが」

「国際社会からは、批判されました」

「ドラープ大統領の判断か......」

藤堂が呟いた。

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【米・イスラエルによるイランへの攻撃】


「そして2026年」

ミネルが続けた。

「2025年以降、イランが核兵器開発へ近づいているという懸念から」

「緊張状態が続いていました」

「そして2026年2月28日」

「ドラープ米政権は、イスラエルと共同で」

「イラン各地の都市および主要施設へ、軍事作戦を開始しました」

「イランの最高指導者である、ハメネイ師が殺害されたと報じられました」


部屋に、重い沈黙が落ちる。

「最高指導者を、殺害した」

田中が言った。

「これは、もはや宣戦布告と同じじゃ」

「核開発を阻止するための、予防的措置という建前ですが......」

高橋が言葉を濁した。


「......日本は」

藤堂が聞いた。

「この軍事作戦を、支持したのか?」


「曖昧な態度を取りました」

高橋が答えた。

「明確な反対も、していません」


「それが問題じゃ!」

田中が声を荒げた。

「日本は、アメリカの戦争に巻き込まれとる」

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【議論の深まり】


「どうじゃ、総理」

田中が藤堂を見つめた。

「これが、アメリカの正体じゃ」

「石油のために政権を転覆させ、邪魔者は殺す」

「こんな国に、日本の命運を預けていいのか?」


藤堂は、深く息を吐く。

「......田中さんの言いたいことは、分かります」

「でも、だからといって......」


「総理」

高橋が言った。

「現実問題として、日本単独では」

「中国の軍事的圧力に、対抗できません」

「理想だけでは、国は守れない」


「でも」

磯村が言った。

「このままでいいはずが、ありません」


「......そうですね」

藤堂が頷いた。

「では、次はイラクを見てみましょう」

「アメリカの中東政策の全貌を」

「理解しなければならない」


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4. アメリカとイラク

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【イラク】


「イランだけじゃない」

田中が言った。

「イラクでも、アメリカは同じことをしとる」

「ミネル、イラクとアメリカとの関わりを説明してくれ」

「了解よ」

ミネルが答えた。

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【ラマダーン革命】


「1963年、ラマダーン革命が起きました」

ミネルが説明した。

「1958年のクーデターによって」

「王族を排除して共和国を樹立したカーセムは」

「その5年後、バース党による軍事クーデターで殺害されました」

「このクーデターには、アメリカのCIAが関与していました」


「またCIAか」

田中が呟いた。

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【イラン・イラク戦争】


「1980年、イラン・イラク戦争が始まりました」

ミネルが続けた。

「当時イラクで恐怖政治を敷いていた、サダム・フセイン大統領は」

「イラン革命の精神が、自分の国に拡大していくのを恐れて」

「イランに侵攻しました」

「このとき、アメリカはソ連、フランスとともに」

「イラクを支援しました」


「イランの敵だから、イラクを支援した」

高橋が補足した。

「『敵の敵は味方』という論理です」

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【クウェート侵攻】


「1990年、クウェート侵攻が起きました」

ミネルが説明した。

「イラン・イラク戦争停戦の2年後」

「イラン・イラク戦争で抱えた巨額の債務返済に窮したことなどにより」

「フセイン政権が、領土と資源を武力で奪おうと」

「クウェートに侵攻しました」

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【湾岸戦争】


「1991年、湾岸戦争が始まりました」

ミネルが続けた。

「イラクによるクウェート侵攻を受け」

「アメリカ軍は、国連の承認を得て多国籍軍を結成し」

「圧倒的な武力で、イラクを攻撃しました」


「支援していたイラクを、今度は攻撃した」

磯村が言った。

________________________________________

【イラク戦争】


「2003年、イラク戦争が始まりました」

ミネルが説明した。

「アメリカのブッシュ大統領ジュニアは」

「イラクのフセイン大統領が、アルカイダとつながっていると訴えるとともに」

「イラクが核・生物・化学兵器などの大量破壊兵器を」

「秘密裏に開発・保有しており」

「国際連合の安全保障理事会決議に違反して」

「査察に非協力的であると主張しました」

「そして、2003年3月」

「アメリカ率いる有志連合軍が、イラクへの軍事攻撃を行い」

「フセイン大統領は拘束され、死刑宣告を受けました」

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【磯村の指摘:2つの「やらせ」】


「アメリカは」

磯村が言った。

「イラクとの攻防で、2度にわたって『やらせ』による大嘘をついています」

「......やらせ?」

藤堂が聞いた。

「はい」

磯村が答えた。

「1つ目は、1990年の湾岸戦争前です」

「ナイラという15歳のクウェート人少女が」

「米議会で、涙ながらに証言しました」

「『イラク兵が病院の保育器から赤ちゃんを取り出して』」

「『床に叩きつけて殺した』と」

「この証言で、アメリカ世論は一気に反イラクに傾きました」

「しかし後に、この少女はクウェート駐米大使の娘で」

「証言は、広告代理店が作ったシナリオだったことが判明しました」


「......嘘の証言で、世論を操作したのか」

田中が呟いた。


「2つ目は、2003年のイラク戦争です」

磯村が続けた。

「ブッシュ政権は『イラクが大量破壊兵器を保有している』と主張しました」

「国務長官パウエルが、国連安保理で証拠を示しました」

「しかし、戦後の調査で大量破壊兵器は見つからず」

「証拠は、捏造だったことが明らかになりました」


高橋が、苦い表情で言う。

「......その通りです」

「アメリカは、世論を動かすために嘘をついた」

「これは、否定できない事実です」

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【議論の深まり】


「どうじゃ、総理」

田中が藤堂を見つめた。

「イランでもイラクでも、アメリカは同じことをしとる」

「支援したかと思えば、今度は攻撃して倒そうとする」

「そして、世論を操作するために嘘をつく」

「これでもまだ、アメリカを信じられるか?」


藤堂は、深く息を吐く。

「......信じたいですが、簡単には信じられない」


「しかし総理」

高橋が言った。

「だからといって、日米同盟を捨てることはできません」

「現実問題として、中国の脅威は増大している」

「北朝鮮の核・ミサイル開発も続いている」

「日本単独では、対処できない」


「高橋さんの言う通りです」

磯村が言った。

「でも、このまま盲目的にアメリカに従うのは危険です」

「アメリカは、自国の利益のためなら嘘もつく」

「そして、戦争も始める」


「では、どうすればいいのか」

藤堂が聞いた。

田中「それを、今日考えたいんじゃ」

「次は、アメリカの世論操作について」

「もう少し深く見てみよう」


________________________________________

5. アメリカの世論操作

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【2つの「やらせ」】


「オヤジ」

磯村が言った。

「アメリカの世論操作について」

「もう少し詳しく見るべきです」

「ミネル、ナイラ証言について説明してくれ」

「わかったわ」

ミネルが答えた。

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【第1回:ナイラ証言】


「1990年8月2日」

ミネルが説明した。

「イラクによる、クウェート侵攻の後」

「同年10月10日に、米国の『トム・ラントス人権委員会』で」

「公聴会が行われました」

「クウェート難民の『ナイラ』と名乗る15歳の少女は」

「イラク兵による悲惨な光景を涙ながらに訴えました」

「『イラク兵がクウェートの病院に押し入り』」

「『保育器から赤ちゃんを取り出して床に放置し、死なせた』と」

「この証言は、国際的な反イラク感情を急速に高め」

「のちの湾岸戦争における、アメリカの参戦を正当化する」

「世論を形成する、大きなきっかけとなりました」


「しかし、後にこの証言は」

「米国の大手PR会社『ヒル・アンド・ノウルトン』が主導した」

「プロパガンダ(情報戦)であったことが判明しています」

「少女の正体は、クウェート難民ではなく」

「当時の駐米クウェート大使の、娘であったことも明らかになっています」

「クウェート政府は、このPR会社に」

「1000万ドル以上を、支払ったとされています」


「つまり」

磯村が言った。

「1000万ドルを払って、嘘の証言をさせた」

「これが、アメリカのやり方です」

「......そこまでするのか」

田中が呟いた。

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【第2回:パウエル演説】


「そして2つ目は」

磯村が続けた。

「もっと悪質です」

「ミネル、パウエル国務長官の演説について説明してくれ」


「了解よ」

ミネルが答えた。

「2003年」

ミネルが説明した。

「パウエル国務長官が、国連安保理での演説で」

「イラクの生物兵器の証拠として」

「イラク人化学エンジニアの証言を示しました」

「『イラクが秘密裏に、トレーラー型の施設で』」

「『生物兵器を製造している』と」

「この証言は、イラク戦争の重要な開戦口実となりましたが」

「後に本人が、ドイツのメディア等の取材に対し」

「証言は虚偽であったことを、認めています」


「結局、イラク戦争終結後に」

「大量破壊兵器は、見つかりませんでした」

「この証言が、虚偽に基づく情報操作であったことは」

「アメリカのインテリジェンスの歴史における」

「最大の汚点の一つと、されています」


「国連安保理で、国務長官が嘘をついた」

磯村が言った。

「これは、国際秩序への重大な背信行為です」

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【田中の怒り】


「わしも、この話は聞いたことがある」

田中が言った。

「だが、改めて聞くと......」

「胸くそが悪くなる」

田中は、湯呑を置き立ち上がった。

「広島、長崎で原爆を落とした国じゃ」

「わしらは、あの国の『野蛮さ』を」

「最も知っているはずの国民なんじゃ」

「なのに、『核の傘に守られている』という言葉に甘えて」

「『本当にアメリカは日本を守るのか?』という」

「根本的な疑問を、持たずにきてしまった」

「ドラープが大統領になった今」

「本気で考えなければならん」

「頼りにならない、極めて危うい本性を持つアメリカに」

「国の生存を、委ね続けてよいのか?」

________________________________________

【高橋の現実論】


「磯村、オヤジ」

高橋が冷静に言った。

「お二人の指摘は、すべて事実です」

「アメリカは、自国の利益のために嘘もつく」

「そして、同盟国を見捨てることもある」

「ベトナム戦争では、南ベトナム親米政権を見捨てました」

「シリア内戦では、クルド人を見捨てました」

「散々かき乱しておいて、うまくいかなかったら退散する」

「これが、アメリカという国です」


「しかし、だからといって」

高橋が続けた。

「日米同盟を捨てられるのか?」

「中国は、尖閣諸島周辺で挑発を続けている」

「北朝鮮は、核・ミサイル開発を進めている」

「ロシアは、北方領土で軍事演習を行っている」

「これらの脅威に、日本単独で対処できますか?」

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【磯村の理想論】


「でも」

磯村が言った。

「このまま、アメリカに依存し続けるのは危険です」

「そして要注意なのは、今のドラープ大統領です」

「ある日、『ジェノサイドをやってみたら』と言う」

「で、次の日には『それはダメだ、終わりにする』と言う」

「そして、『ノーベル賞が欲しい』と言う」

「在日米軍があるから日本は大丈夫、などと」

「呑気なことは、言っていられません」

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【藤堂の葛藤】


藤堂は、深く息を吐く。

「......磯村さん、田中さん」

「お二人の言いたいことは、よく分かります」

「でも、私は総理大臣として」

「現実を見なければならない」

「日本単独では、中国の軍事的圧力に対抗できない」

「北朝鮮の核・ミサイル開発にも、対処できない」

「では、どうすればいいのか」


「それを」

田中が言った。

「今から、考えるんじゃ」

「わしにも、考えがある」


________________________________________

6. 依存から対等へ

________________________________________

【新しい国際秩序への道】


「アメリカが『世界の警察』をやめたことで」

田中が言った。

「力の空白が生まれた」

「その空白を埋めようとする国が出てくる」

「それが、今の混乱の原因だ」


「アメリカの『選択的関与』は」

高橋が続けた。

「今後も続くでしょう」

「つまり、アメリカは『自分の利益にならない戦争には関わらない』」

「その結果、地域紛争は増え」

「国連は機能不全のまま」

「経済制裁だけでは、戦争は止められない」


「アメリカの外交姿勢が変わるたびに」

藤堂が言った。

「世界が揺れる」

「このままでは、国際秩序は『力の論理』に傾き続けるでしょうね」

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【磯村の理想と高橋の現実】


「日本は、アメリカの束縛から逃れる道を探すべきです」

磯村が言った。

「アメリカの都合に振り回されるのは、もう嫌です」


「磯村」

高橋が冷静に言った。

「逃げるのではなく『自立した同盟国』になるんだ」

「日米同盟を前提にしつつ」

「日本が主体的に意思決定できる体制を作る」

「『自立した同盟国』とは」

高橋が説明した。

「アメリカが戦争を始めるとき」

「日本が『ノー』と言える関係です」

「例えば、ドラープがイランを攻撃すると言ったとき」

「日本が『それは、日本の国益ではない』と明確に拒否する」

「そして、代わりに外交努力を提案する」

「これができない限り、日本は『従属国』のままです」


藤堂「その通りですね」

「言うべきことを言える日本」

「それが目指すべき姿です」

________________________________________

【藤堂の構想】


藤堂は、深く息を吸う。

「そのためには」

「日本が、世界に新しい選択肢を示す必要があります」

「世界の大多数は、グローバルサウスです」

「アジア、アフリカ、ラテンアメリカ......」

「これらの国々は、米ロ中の対立に巻き込まれたくない」

「彼らは、新しい可能性を求めています」

「それなら、日本がリーダーシップを取る」

「アメリカに依存するのではなく」

「アメリカとは別に、日本自身の価値と原則を確立する」

「そして、グローバルサウスとの連携を深める」

「これが『依存から対等へ』の具体的な形です」


藤堂が立ち上がる。

「第一に、アジアとの横の関係を強化する」

「ASEAN、インド、オーストラリア......」

「民主主義国家同士の連携を深める」


「第二に、非核保有国との協力を推し進める」

「世界の大多数は、非核保有国です」

「核兵器廃絶という理想を」

「日本が率先して掲げる」


「第三に、中東との関係を改善する」

「対立ではなく、仲介国としての日本を作る」

「ドラープ大統領がいかなる判断をしようとも」

「日本は日本の道を歩む」

「それが、『依存から対等へ』の第一歩です」

________________________________________

【田中の確認】


田中は、目を細め藤堂を見つめる。

「総理......」

「わしは、アメリカを信用しとらん」

「日本が世界の中でどう生きるかを考えるなら」

「『アメリカに従うだけの国』ではいかん」

「わしは、そう思う」

「そして今、わしは確信した」

「総理、お前ならできる」

「『依存から対等へ』の道を、切り開くことができる」

田中は、深く頷く。

「わかった」

「わしは、その日本を見たい」

________________________________________

【新しい決意の時間】


応接間に、新しい決意の時間が流れた。

重苦しさはなく、

むしろ清々しさが満ちていた。

世界の混乱の中で、

日本が進むべき道が、

ようやく見えた気がした。

窓の外、東京の夜景が揺らいでいた。


*依存から対等へ*

*アメリカに依存するのではなく*

*日本自身の価値を確立する*

*グローバルサウスとの連携*

*それが、21世紀の日本の道だ*


藤堂は、決意を新たにした。


________________________________________

第27話 完

次回:第28話「国連の限界と新秩序」

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