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第28話「国連の限界と新秩序」

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1. 国連の限界とは

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【官邸 総理執務室】


藤堂は、アルと話をしている。

「先日は、日本国憲法第9条や日米同盟についておさらいをした」

藤堂が言った。

「また、昨日は田中邸でトルグのメンバーと議論をして」

「日本が『アメリカ依存から対等へ』進むこと」

「そのためには」

「『第一に、アジアとの横の関係を強化する』」

「『第二に、非核保有国との協力を推し進める』」

「『第三に、中東との関係を改善する』」

「ということを決意した」

「これらは『日本の立ち位置』の」

「これまでと今後あるべき姿を」

「再確認する作業だった」

「ところで以前」

「八重樫幹事長と『戦争を防ぐためにどうすればいいか』という議論をしたときに」

「八重樫さんが言ったのは」

「『国連の限界を理解しつつ、地域機構、分野別ルール、危機管理、それらを組み合わせる、多層的な秩序が必要だ』ということだった」

「したがって『多層的な秩序』というものを考える前に」

「国連の限界を理解しておく必要がある」

「アル、国連問題について確認しておこう」

藤堂が言った。


「国連の問題とは?」

「国連の最大の問題は『拒否権』による機能不全だと言われているわ」

アルが答えた。

「国連が目指すのは世界平和の実現」

「そして、国連の諸機関の中で最も重要なのが安全保障理事会(安保理)」

「安保理は常任理事国である米・英・仏・中・露の5カ国と」

「非常任理事国である10カ国で構成されている」

「安保理で決議案を採決するときは」

「原則15カ国のうち9カ国以上の賛成があれば可決される」

「のだけど、常任理事国5カ国のうち1カ国でも『ノー』と言えば通らない仕組みになっている」

「それが拒否権よ」


「つまり、大国が反対すれば何もできないということか」

藤堂が言った。

「その通り」

アルが答えた。

「シリア内戦では軍事行動が止められた」

「ウクライナではロシアの侵攻を止められない」

「パレスチナ問題ではアメリカが拒否権を使う」

「国連は、本来の役割を果たせていない」

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「学校の生徒会で例えるなら」

藤堂が言った。

「いじめをやめさせた5人が生徒会のトップになった」

「その5人は『拒否権』という特権を持っている」

「だから、その5人の誰かがいじめを始めても」

「他の生徒は止められない」

「それが国連だ」


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2. 新秩序への模索

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【藤堂私邸 書斎】


翌日の夜。

机の上には、国連に関する資料が散乱している。

藤堂は、スウェット姿で、ノートPCの前に座り込んだ。

「アル......国連の旗は北極から見たすべての大陸が描かれ」

藤堂が言った。

「平和の象徴であるオリーブの葉で囲まれている」

「世界が平和になるように」

「多くの国が集まって話し合う場、それが国際連合だ」

「だが、現状うまく機能していない」

「『世界をまとめる仕組み』を新たに作るって」

「そんなに簡単にいくのか?」


「翔」

アルが答えた。

「『国連が限界』という感覚は」

「世界中の指導者が抱いている」

「でも、国連を捨てることはできません」

「だからこそ――」

「『多層的な国際秩序』が必要なの」


藤堂は、椅子に深く座り直す。

「多層的というと」

「洋菓子のミルフィーユみたいな...冗談だけどね」


アルが、少し笑う。

「イメージとしては、近いかもしれないわね」

「『何層も重ねていくという意味では』」

「国際秩序も同じ」

「今の世界は『国連1本』では支えられない」

「でも『国連の代替』ではなく」

「『国連を残したまま』その下に層を2つ作る」

「そして、3つの層を重ねて動かす」

「ということよ」

画面に3つの円が浮かぶ。

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【第1層:国連(正統性)】

「ここは『正統性』の層です」

アルが説明した。

「全ての国が参加し」

「国際法の基準を作る場所」

「ただし、拒否権で止まるため」

「実行力は弱い」

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【第2層:地域・価値観の枠組み(実行力)】

「ここが『実行力』の層」

「例えば、G7、QUAD、ASEAN、EU」

「これらは価値観を共有する国々が」

「実際に動く枠組みよ」

「国連が止まっても、QUADは動ける」

「G7でも独立した判断ができる」

「そして日本が最も影響力を発揮できるのは」

「このQUADやASEANの層」

藤堂が聞いた。

「つまり、国家間の関係が複層化しているということか」

アルが答えた。

「そういうことね」

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【第3層:テーマ別の機能的枠組み(専門性)】

「ここは『専門性』の層」

アルが説明した。

「気候変動、AI、半導体、サイバーセキュリティ......」

「これらは国家間の政治的対立を超えて」

「専門家ネットワークで機能する層」

「例えば、米中関係が冷え込んでいても」

「気候変動対策では協力する」

「半導体の安全保障では」

「日米台オーストラリアが連携する」

「つまり、分野ごとに独立した協力が成立する」

藤堂が言った。

「国家間の縦割り的な関係ではなく」

「テーマごとの横のネットワークか」

アルが答えた。

「その通りね」

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【藤堂の気づき】


「つまり......」

藤堂が言った。

「『国連が止まったら終わり』じゃなくて」

「『止まっても他の層で動かす』ってことか」

「その通りよ」

アルが答えた。

「21世紀の世界は『単層構造』では支えられない」

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【藤堂の驚き】


藤堂は、目を見開く。

「日本が......設計者?」

「そうよ」

アルが答えた。

「日本は軍事大国ではありません」

「だからこそ、アジアの国々は日本を『脅威』と見ません」

「米国とも中国とも対話できる」

「技術力も、資金力も、制度設計の経験もある」

「『力で押さない国』だからこそ」

「『秩序を設計する国』になれるのよ」

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【藤堂の理解】


藤堂は、静かに息を吸う。

「......なるほどな」

「『世界をまとめる』んじゃなくて」

「『世界をつなぐ仕組みを作る』」

「それなら、日本にもできるかもしれない」


藤堂は、窓の外の東京の夜景を見つめる。

「『世界をつなぐ仕組みを作る』か......」

少しの沈黙。

「日本にはそれができるかもしれない」

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【アルの最後の言葉】


「翔」

アルが言った。

「あなたが提唱する『多層的な国際秩序』は」

「国連の限界を補い」

「アジアの安定を支え」

「日本の自律性を高める構想になるのよ」

「そして――」

「これは、あなたにしか言えない言葉なの」

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【藤堂の決意】


「よし」

藤堂が言った。

「明日、橘さん、八重樫さんと意見交換しよう」


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3. 三者会議

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【翌日 官邸・執務室】


橘官房長官と八重樫幹事長が、藤堂の執務室に入る。

「総理、八重樫幹事長をお連れしました」

橘が言った。

「おはようございます、総理」

八重樫が続けた。

「『多層的な国際秩序』の構想を練りたいと伺いました」


藤堂は、二人を見つめる。

「二人とも、ありがとう」

「昨日、AIのアルと議論して」

「『国連だけでは世界は支えられない』という現実を」

「改めて突きつけられた」

橘は、静かに頷き、八重樫は腕を組んで藤堂を見つめる。

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【多層秩序の説明】


藤堂が、ゆっくりと説明し始める。

「国連は『正統性の層』だ」

「地域枠組みは『実行力の層』だ」

「テーマ別ネットワークは『専門性の層』だ」

「この三つを組み合わせて」

「止まった部分を別の層で補う」

「そんな『多層構造』を日本が設計できないかと考えている」

橘は、少し驚いたように眉を上げる。

「総理......」

「『設計者』になる、ということですか?」

「ああ」

藤堂が答えた。

「日本は軍事大国ではない」

「だからこそ」

「『秩序をデザインする力』で世界に貢献できるはずだ」

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【八重樫の現実論】


八重樫は、椅子に深く腰掛け、もう一度腕を組む。

「......面白い」

「だが総理」

「三層を動かすには『優先順位』が必要だ」

「まず、どの層で日本が主導権を握るのか」

「第二層だ」

藤堂が即答した。

「G7、QUAD、ASEANとの連携」

「ここなら日本は信頼も実績もある」

八重樫は、満足げに頷く。

「その通りだ」

「国連は拒否権で止まる」

「第三層は専門家ネットワークで」

「政治的主導権は握りにくい」

「だが第二層は『政治の層』だ」

「日本が動けば、世界は動く」

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【橘の懸念:国民理解】


橘が、静かに口を開く。

「ただ......総理」

「『多層秩序の設計者』を名乗るなら」

「国内の理解も必要です」

「外交戦略は国民に見えにくい」

「『何のためにやるのか』を説明しなければ」

「支持は得られません」

藤堂は、少し考える。

静かに答える。

「『戦争を防ぐため』だ」

「単純だが、それ以上の理由はない」

橘は、微笑む。

「総理らしい、まっすぐな言葉ですね」

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【八重樫の警告】


八重樫が、腕を組んで言う。

「気をつけないといけない点がある」

「中国やロシアから『包囲網』と見られる可能性だ」

「西側同盟の拡張版ではないということを」

「理解してもらうことが重要だ」

藤堂が静かに頷く。

「日本は新しい秩序の設計者であると同時に」

「旗振り役として動く」

「軍事同盟の盟主になるつもりはない」

「そういう振る舞いをしないといけない」

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【G7での提案】


八重樫が、身を乗り出す。

「総理、まずは『旗』を立てましょう」

「G7で『多層的国際秩序構想』を正式に提案する」

「国連改革の議論が止まっている今こそ」

「日本が新しい議題を出すべきです」

藤堂は、目を見開く。

「G7で......か」

「世界は『誰が次の秩序を描くのか』を探っている」

八重樫が続けた。

「アメリカは内向き、EUは分裂気味、中国は強硬」

「だからこそ、日本が『調停者』として前に出る価値がある」

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【橘の補足】


橘が、静かに補足する。

「総理、これは国内政治にもプラスになります」

「『日本外交の新しい柱』として国民に示せる」

藤堂は、二人を見渡し、ゆっくりと頷く。

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【藤堂の決定】


「......よし」

藤堂が言った。

「G7で『多層的国際秩序構想』を提案する」

「その方向で準備を進めよう」

「日本が、世界の『秩序の設計者』になる」

八重樫は満足げに笑い、橘は静かに頷く。

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【最終確認】


八重樫が、少し笑顔で言う。

「総理」

「ようやく『日本の役割』を言葉にしましたね」

「しかし、いきなりG7というわけにもいかんだろう」

「その前に国会で発表すべきでしょう」

「施政方針演説で」

「『多層的国際秩序』の構想を」

「世界に向けて宣言する」


「わかった」

藤堂が言った。

「来月の国会で、まず国民に説明する」

「その上で、G7に提案する」

「その方が説得力がある」


橘が立ち上がる。

「では、官邸としても準備を始めます」

「来月の施政方針演説まで」

「スケジュールは厳しいですが」

「やります」


八重樫も立ち上がる。

「総理、党内の調整も進めます」

「『戦争を防ぐための秩序設計』なら」

「野党も理解するはずです」


藤堂は、深く息を吸う。

そして、窓の外を見つめる。

東京の夜景が、広がっていた。

*世界は変わる*

*ならば、日本も変わらなければならない*

*その先頭に立つ覚悟は*

*もうできている*


藤堂は、静かに立ち上がった。


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第28話 完

次回:第29話「多層的国際秩序」前編

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