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第26話「憲法第9条について」

《これまでのあらすじ》

朝霧翔が憑依した藤堂は、総理大臣になって「日本を変える」という使命に加えて、世界から戦争をなくしたいという思いがある。戦争をなくすためには世界中の国が経済的な協力関係で結ばれる必要があると考え、経済サプライチェーンの構築に努めていた。

ところがある日、八重樫幹事長から「経済的協力関係では戦争を防ぐことはできない。」と告げられる。「それではどうしたらいいのか?」との問いに八重樫は答えた。「国連の限界を理解しつつ、地域機構、分野別ルール、危機管理...、それらを組み合わせる、『新しい秩序』です」

そして2人目の政務秘書官として採用した神宮寺美波に、藤堂誠司が実は朝霧翔であることを知られてしまう。藤堂は美波に真実を告白し、これまで通り秘書として協力してくれるよう要請した。

《主な登場人物》

アルテミス(アル) … AI軍師

美咲 … 藤堂誠司の妻

彩花 … 長女

健太 … 長男

吉村隆 … 政務担当秘書官

神宮寺美波… 政務担当秘書官

橘麗子 … 内閣官房長官

八重樫仁…幹事長

田中丈太郎 …トルグの総帥

ミネルヴァ(ミネル)…トルグのAI

高橋俊介…トルグのメンバー

磯村匠海…トルグのメンバー

メアリー…田中丈太郎の孫


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1. 豊岡市バス水没事故

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【藤堂邸での夕食】


「お父さん」

彩花が言った。

「この間テレビで、ドキュメンタリーを観てすごく感動したの」

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豊岡市バス水没事故 ― 37人の夜明け


◆旅のはじまり ― いつもの仲間、いつもの笑顔

「今年も、来れたなあ」

市役所OBの田村は、隣に座る病院OBの松永に笑いかけた。

平均年齢67歳。

このバスツアーは、兵庫県市町村職員年金者連盟の豊岡市部が主催する恒例の行事だった。

バスの中では、誰かが買ってきた土産話で盛り上がり、後ろの席では元看護師の女性たちが「来年はどこ行く?」と楽しげに話している。

台風23号が近づいているというニュースは、耳にしていたが誰も深刻には考えていなかった。

「まあ、帰る頃には通り過ぎてるやろ」

そんな楽観が、バスの空気を包んでいた。

________________________________________

◆帰路 ― 雨脚が変わった瞬間

福井を出た頃は、まだ小雨だった。

しかし京都府舞鶴市に入る頃、窓を叩く雨音が急に重くなる。

「ちょっと...道、見えへんで」

運転手の声に、車内のざわめきが静まった。

外はすでに冠水し、道路と川の境界が曖昧になっていた。

バスはゆっくりと進むが、突然横から押し寄せる濁流に、車体が揺れた。

「うわっ...!」

誰かの叫びとともに、バスは大きく傾きエンジンが止まった。

________________________________________

◆濁流の中で ― 決断の時

足元に、冷たい水が流れ込んでくる。

「みんな、落ち着いて!」

元看護師の一人、中島が声を張り上げた。

「まずは荷物を置いて、上に逃げる準備を!」

ロープはないかとの声があったが、バスの車内にはなかった。

そこで窓のカーテンを使おうということになり、ハサミで切ってロープ状にした。

彼女の声は、不思議と皆を安心させた。

「窓から出るのは危ない」

「非常口から、屋根に上がりましょう」

「足の悪い人は、私らが支えるから」

9人の元看護師たちは、まるで現役時代に戻ったかのように動き始めた。

濁流が膝まで迫る中、彼女たちの指示は迷いがなかった。

一人、また一人と屋根へ。

最後に上がったのは、足の悪い男性を支えた中島だった。

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◆屋根の上の夜 ― 10時間の試練

屋根の上は、まるで海の上に取り残された小舟のようだった。

雨は容赦なく叩きつけ、風が体温を奪っていく。

「寒い...」

「寝たらあかんで。意識保って」

元看護師の女性たちは、濡れた手で仲間の背中をさすり続けた。

3時から4時は一番眠い時間、眠らないようにしないといけない。

呼吸をするためには、歌を歌いましょうと、いろいろ考えて「上を向いて歩こう」を歌おうという事になった。

だれかが小さい声で歌い出したら、次のフレーズからは震える声に、次々と声が重なった。

歌は、恐怖を押し返すための「灯り」のようだった。

田村は、隣の松永に言った。

「来年も...行けるかな」

松永は、雨に濡れた顔で笑った。

「行くに決まってるやろ。こんなんで終われるかい」

その言葉に、周りの仲間たちも小さく笑った。

笑いは、嵐の中で確かに人を強くした。

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◆夜明け ― 救助の光

空がわずかに白み始めた頃、遠くからサイレンが聞こえた。

「助けが来たで!」

誰かが叫ぶと、屋根の上に歓声が広がった。

救助隊がボートで近づき、一人ずつ慎重に救い上げていく。

冷え切った体を抱えられながら、中島は涙をこぼした。

「みんな...よく頑張ったね」

救助隊員は、驚いたように言った。

「全員無事なんて...奇跡ですよ」

しかし37人は、知っていた。

これは奇跡ではなく――

仲間が仲間を見捨てなかった、その力が生んだ結果だと。

________________________________________

◆生還 ― 絆がつないだ命

病院に運ばれた後、37人は再び顔を合わせた。

誰もが疲れ切っていたが、目には確かな光が宿っていた。

田村が言った。

「来年の旅行...どうする?」

すると松永が笑って答えた。

「そら行くやろ。こんな経験した仲間や。もう怖いもんないわ」

皆が、笑った。

その笑顔は、嵐の夜を生き抜いた者だけが持つ強さと優しさに満ちていた。


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2. 家族での議論

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【藤堂邸での夕食に戻る】


「お年寄りの方ばっかりだったけど」

彩花が続けた。

「お互いを思いやる心があれば、どんな嵐も越えられるという感動のドラマだった」

「でもね、お父さん」

「どうして自衛隊は、もっと早く助けられなかったの?」

「最近も山火事が全然消えなくて」

「アメリカでは今年が最悪の規模だって言ってた」

「人を殺す兵器じゃなくて、災害救助のための装備に」

「もっと税金を使えないの?」


食卓に一瞬、静けさが落ちる。

藤堂は箸を置き、娘の目をまっすぐ見た。

「彩花...お前のいいたいことは、よくわかる......」

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【美咲の割り込み】


「彩花!」

普段こういった話題の時は聞き役に回っていた美咲が、珍しく割って入った。

「今の言い方は、お父さんに失礼よ」

「お父さんが無関心なわけないでしょう」

「国際関係は、あなたが思っているよりずっと複雑で緊迫しているのよ」

「災害対応だって、力を入れているわ」

「日本の総理大臣として抱えている問題は、すごくたくさんあって」

「しかも後回しにできない、重要なことばかりなの」

「そのために構想を練って、計画に基づいて動いていらっしゃるのよ」


「うわあ、お母さんがめずらしく怒ってる」

健太が言った。

「別に怒ってるわけじゃないわ」

美咲が答えた。

「彩花がお父さんの気持ちも知らないで、一方的に言うもんだから...」

「ごめんなさい」

彩花が言った。

「別にそういうつもりで、言ったわけじゃないの」

「お父さんが今までの総理大臣ができなかったことを」

「何とかしようと苦労しているのは、知っているわ」

「ドキュメンタリーを観て思ったことを言っただけで」

「お父さんに意見するつもりじゃないのよ」

________________________________________

【藤堂の説明】


藤堂は、美咲がめずらしく意見を言ったので少しばかり驚いた。

しかし、落ち着いて話を始めた。


「彩花...さっきの話だが、いい質問だ」

「父親としても、総理としても、胸に刺さるよ」

少し息を吸い、ゆっくりと言葉を続ける。

「まず、あの時の自衛隊が遅れた理由は」

「『災害現場に安全に近づく手段がなかった』ということなんだ」

「濁流で道路は寸断され、ヘリも強風で近づけない」

「『助けたいのに近づけない』という状況は」

「今も災害現場で、起きている」

「これは自衛隊の能力不足じゃなくて」

「装備とインフラが『災害の激しさ』に追いついていなかった」

「ということだ」

「『災害救助にもっと税金を使えないの?』という質問だが」

藤堂は少し笑って、彩花の頭を軽く撫でる。

「彩花の言う通りだよ」

「兵器よりも『人を守る力』に、もっと投資すべきだと」

「父さんも、思っている」

そして、総理としての顔になる。

「でも現実には、災害救助の装備は『軍事技術』と深くつながっているんだ」

________________________________________

【軍事技術と災害救助】


「たとえば――」

藤堂が説明した。

「・強風でも飛べるヘリの技術」

「・濁流でも沈まない車両」

「・高熱に耐える防護服」

「・長時間飛べるドローン」

「これらは、軍事研究の副産物として発展してきた」

「だから『軍事か災害か』という単純な二択ではなくて」

「軍事技術を『人命救助の方向へ転用する』という発想が必要なんだ」

藤堂は、少し声を落とす。

「彩花、お前が『人を救うために税金を使ってほしい』と言ってくれたことが」

「父さんは、本当に嬉しい」

「政治は、こういう声に動かされるんだよ」

「だから父さんは、災害対応のための装備開発を」

「国家戦略の中心に置くつもりだ」

「山火事にも、洪水にも、地震にも」

「もっと強い国にする」

彩花は、驚いたように目を見開く。

「...じゃあ、お父さんが変えられるの?」

「変えるよ」

藤堂が答えた。

「君たちの未来のために」

その言葉は、政治家の演説ではなく一人の父親の誓いとして響いた。

________________________________________

【夕食後】


子供たちが部屋に戻ったところで、藤堂が美咲に言った。

「さっきは、ありがとう」

「どう返事するか、一瞬迷ってしまった」

「久しぶりに思い出したよ」

「大学時代に、美咲に論破されたときのこと」


「そんなんじゃないわ」

美咲が答えた。

「彩花はあんなことを言ったけど」

「あなたのことを、応援しているのよ」

「家族はいつも、あなたの味方よ」

「忘れないでね」


「わかっているよ」

藤堂が言った。

「今日は、家族のみんなにエールを贈ってもらえたよ」

「ならいいんだけど」

美咲が続けた。

「総理大臣として、世の中を変えたいという思いが強ければ強いほど」

「プレッシャーも大きくなるでしょ」

「本当は家での夕食の時くらいは、そんな話題を出すべきじゃないと思ってたんだけど」

「今日は、ごめんなさい」

「だって、あなたは......」

美咲は、言いかけた言葉を飲み込んだ。


「いつも気遣ってくれていることは、わかっているよ」

藤堂が言った。

「ありがとう」

窓の外、東京の夜景が広がっていた。

*家族の支え

それが

私の力だ*

藤堂は、決意を新たにした。


________________________________________

3. 憲法第9条

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【その夜・書斎】


藤堂は、夕食時のやり取りをアルに話した。

「久しぶりに今日は」

「美咲が聞き役から、話し役に変わったんだよ」

「最近大きな仕事が続いたから」

アルが言った。

「応援したいという気持ちが、現れたんじゃない?」

「そうかもしれないな」

藤堂が答えた。

「家族にエールを贈ってもらえたばかりだが」

「大きな仕事が終わったので、普段のペースに戻そうと思う」

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【アサインメントの再確認】


指揮者の小澤征爾は、演奏会で指揮する曲が彼にとって何度目であろうとも、スコアを見返して読み込み、時によりその解釈を改めたという。

「そうだ、アサインメントの再確認だ」

藤堂が言った。

「私のライフワークである『戦争のない世の中にする』に向かって動く前に」

「改めて、当然熟知しておく必要がある『日本国憲法第9条』を確認しておこう」

「アル、藤堂プランを開いてみてくれ」

「いいわ」

アルが答えた。

「『憲法第9条』で検索したら、出てきたわよ」

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《藤堂プラン》

○世界を変える......その前に日本の立ち位置を確認する

1. 日本国憲法第9条

2. 集団的自衛権

3. 日米同盟

________________________________________

「じゃあ、項目1. 日本国憲法第9条からだ」

藤堂が言った。

「画面に出すわね」

アルが答えた。

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【日本国憲法 第9条】

第九条

日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

② 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

________________________________________

わかりやすく条文を言い換えると

● 1項

「国際ルールに則って国際紛争を解決するための戦争はしない。だけど、自衛のための武力行使は国際法上認められているよね」

● 2項

「いや、自衛のための武力行使に必要な軍隊すら持っちゃダメだよ」

(「軍隊を持たない」「交戦権を否認する」という、世界でも極めて珍しい「国内向けの縛り」になっている。)

つまり、

1項は「自衛権は否定していない」と解釈可能

2項は「自衛権を実行する手段を否定している」ように読める

________________________________________

【憲法第9条の改正議論】

1. 9条1項は「国際法と同じことを言っている」から改正の必要がない。

2. 9条2項だけが「世界でも極めて珍しい縛り」だから議論の中心になる。

国連憲章は自衛権を認めている

世界の国は軍隊を持っている

交戦権は国家の基本的権能

なのに、日本だけは「軍隊を持たない」「交戦権を否認」という特別ルール。

つまり、現実の安全保障政策と最も矛盾するのが2項である。

3. 自衛隊の存在・日米同盟・集団的自衛権など、すべての「ねじれ」は2項が原因

戦後日本の安全保障政策は、次のような「ねじれ」の上に成り立っている。

自衛隊は軍隊のように見えるが、憲法上は「戦力ではない」

日米同盟は軍事同盟だが、日本は「交戦権がない」

集団的自衛権は国際法上当然だが、日本では「限定的にしか行使できない」

これらの矛盾はすべて、9条2項が「軍隊の存在」を否定しているように読めるから生じている。

________________________________________


【なぜ9条の1項と2項はこのような内容になったのか?】

日本国憲法は、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の占領下、草案作成においてGHQが深く関わった。

そのため、占領者の軍事戦略が反映された。

戦略① 日本を「二度と脅威にしない」ための「徹底的な武装解除」

戦略② 日本を「米軍の安全保障拠点」にするための「非武装化」

戦略③ 日本を「自由主義陣営の模範国家」にするための「平和国家モデル」

しかし1947〜1950年で戦略が急転換した。

冷戦が始まると、アメリカの戦略は180度変わる。

・ソ連の脅威が急増

・中国共産党が勝利

・朝鮮戦争が勃発

この結果、アメリカは「日本を非武装化する戦略」→「日本を再軍備させる戦略」に転換

________________________________________

【9条2項を削除した場合、日本の安全保障構造はどう変わるか】

2項は「戦力不保持」「交戦権否認」である。

これが消えると、「軍隊を持てる/交戦権を持てる」ようになる。

つまり、国際法が認める「合法的な武力行使」はできるようになる。

1. 自衛隊は「軍隊」として憲法上の根拠を持つ

2. 専守防衛は「憲法の制約」から「政策の選択」に変わる。

(専守防衛とは、相手から攻撃を受けたときに限って、必要最小限の範囲で防衛するという日本の基本的な防衛方針)

3. 集団的自衛権は「限定」から「全面行使可能」へ

(2項を削除すると、国連憲章51条に基づく「普通の集団的自衛権」が行使可能になる。)

4. 日米同盟の役割分担が変わる(「盾と矛」の再編)

5. 海外での武力行使の選択肢が広がる

(2項を削除すると、国際法の範囲内で、普通の国ができることは日本もできるようになる。)

6. 防衛産業・技術・財政構造にも波及する

(国家の制度設計そのものが変わる。)

________________________________________

【藤堂の理解】

「日本国憲法第9条は、戦争放棄の条文だと言われるが」

藤堂が言った。

「武力行使には、いろいろある」

「国際法で認められている範囲まで、放棄しているのではないということだ」

「完全に戦争放棄、戦力放棄するというのは」

「私が以前フェイク動画で発言した『一国平和主義』になってしまう」

「ということだな」

________________________________________

【質疑応答】

「アル、もう少し詳しいことを知りたいんだが」

藤堂が言った。

「いくつか質問してもいいか?」

「もちろんよ」

アルが答えた。

「何でも聞いて」

________________________________________

Q1: 憲法改正って、何が争点なんだ?

「誠司さんの資料の通り」

アルが答えた。

「一番の焦点は『9条の2項』」

「1項:戦争しない、武力で争わない」

「→ 国際法と同じ内容で、ほとんど議論にならない」

「2項:戦力を持たない、交戦権を認めない」

「→ ここが『自衛隊とどう整合するのか』で議論になる」

「つまり」

「『自衛隊を憲法にどう位置づけるか』」

「『2項を残すか、変えるか』」

「これが、改正議論の中心よ」

藤堂は、うなずきながらメモを取る。

________________________________________

Q2: 集団的自衛権って何だ?

「簡単に言うと」

アルが答えた。

「『仲間の国が攻撃されたら、一緒に守る権利』のこと」

「例えるなら、『友達が殴られたら、自分も殴り返していい』という権利で」

「国連憲章51条で、認められている」

「個別的自衛権のほうは」

「自国が攻撃されたとき、自国を守るために武力を使う権利のことよ」

「なるほど......」

藤堂が言った。

「『自分が殴られたときだけ』じゃないんだな」

________________________________________

Q3: 2014年の「限定的容認」ってよく聞くけど、あれ何?

「日本は長い間」

アルが説明した。

「『集団的自衛権は憲法上できない』という立場だった」

「しかし2014年に政府が解釈を変えて」

「『日本の存立が危なくなる場合に限り、集団的自衛権を使える』と決めた」

「これが『限定的容認』よ」

「ポイントは」

「『どこでも助けに行けるわけではない』ということよ」

「つまり」

藤堂が言った。

「『日本が危なくなるときだけ』ってことか」

「その通り」

アルが頷いた。

________________________________________

Q4: 日米同盟って、結局どういう仕組みなんだ?

「ざっくり言うと」

アルが答えた。

「『アメリカは日本を守る、日本は基地を提供する』という相互協力」

「・アメリカ:日本が攻撃されたら防衛に参加」

「・日本:在日米軍基地を提供し、共同訓練や情報共有を行う」

「ただし」

「『アメリカが攻撃されたとき、日本が必ず助ける義務はない』」

「という点が特徴」

「......あれ?」

藤堂が言った。

「対等じゃないんだな」

「はい」

アルが答えた。

「だからこそ『日本の自律性』が、課題になるのよ」

________________________________________

Q5: じゃあ、自衛隊って今どこまでできるんだ?

「現行憲法と政府解釈では」

アルが説明した。

「次の3つが可能」

① 個別的自衛権

「日本が攻撃されたら、反撃できる」

例:

・日本の領海に侵入した武装船への対応

・ミサイル攻撃への反撃

・離島防衛

② 限定的な集団的自衛権

「日本の存立が危なくなる場合に限り、仲間を助けられる」

例:

・米軍艦船が攻撃され、日本の防衛に重大な影響が出る場合

・日本周辺での米軍への後方支援

③ 国際平和協力(非戦闘地域)

「戦闘が行われていない地域での支援」

例:

・PKO(国連平和維持活動)

・後方支援(補給・輸送など)

「『戦闘地域には行けない』ってことか」

藤堂が言った。

「そうよ」

アルが答えた。

「これが、日本の大きな制約になっている」

________________________________________

Q6: じゃあ......台湾有事が起きたら、自衛隊はどう動く?

「現行法の範囲で」

アルが言った。

「起こりうるケースを、整理するわね」

________________________________________

●ケース1:日本の領土・領空・領海が直接攻撃される

→ 個別的自衛権で自衛隊が反撃可能

例:

・中国軍機が与那国島周辺で武力行使

・日本の艦船・航空機が攻撃される

・ミサイルが日本に着弾

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●ケース2:米軍が攻撃され、日本の存立が危うくなる

→ 限定的集団的自衛権の発動が可能

例:

・台湾周辺で米軍艦船が攻撃される

・その結果、日本の防衛ラインが崩れる可能性が高い場合

________________________________________

●ケース3:米軍への後方支援

→ 武器弾薬の提供・補給・輸送などが可能

例:

・在日米軍基地からの出撃支援

・情報共有

・補給活動

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●ケース4:避難民の保護・輸送

→ 自衛隊が非戦闘地域で活動可能

例:

・台湾からの邦人避難

・周辺海域での救助活動

________________________________________

●ケース5:戦闘地域への直接参加は不可

→ 現行憲法では、「台湾の防衛そのもの」に自衛隊が参戦することはできない。

________________________________________

「......なるほど」

藤堂が言った。

「『日本が危なくなるかどうか』が基準なんだな」

「その通り」

アルが答えた。

「台湾有事は『台湾の問題』であると同時に」

「『日本の安全保障問題』でもあるということよ」

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【まとめ】

藤堂は、椅子にもたれ深く息を吐く。

「現在の東アジアの情勢を見ると」

「実際にこのような判断を求められる事態が」

「発生する可能性が、ないとはいえない」

「国際法や自国の憲法などを、十分知らないまま判断すると」

「大変なことになる」

「翔が『学ぼうとする総理』である限り」

アルが言った。

「日本は、大きく間違いません」

「よし」

藤堂が言った。

「続きは、また明日だ」

窓の外、東京の夜景が広がっていた。

*学び続ける

それが

総理の責務*

藤堂は、決意を新たにした。

________________________________________

第26話 完

次回:第27話「アメリカという国」

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