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第24話「中東に野菜畑を」

________________________________________

1.青い瞳の美女

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【官邸・総理執務室】


藤堂は、スマホで話をした後美波に言った。

「美波さん」

「金曜日の10時に、来客の予定を入れておいてくれるか」

「お客さまのお名前は?」

美波が聞いた。

「メアリー...」

藤堂が答えた。

「メアリー・クラークだ」

「かしこまりました」

美波が答えた。


*来客の予定*

*メアリー・クラークって誰だろう?*

*この間の『NGOとの対話』の続きなのかな?*

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【当日・10時】


美波が、応対した。

青い瞳の、きれいな女性だった。

*何で藤堂さんが、この人と知り合いなの?*

*もしかして、ハーバード大学時代の恋人?*

*でも、藤堂さんが翔だってことは秘密のはずだし...*


「お客さま、いらっしゃいました」

美波が言った。

「応接室に通してくれ」

藤堂が答えた。

「それとすまないが、あのコーヒーを淹れてくれるかな」

美波は、なぜ2人きりで話をするんだろう?と思いつつお客さまを応接室に案内した。

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【応接室】


「メアリー」

藤堂が言った。

「南米のホテルで会って以来だね」

「そうね」

メアリーが答えた。

「あれからも世界中飛び回って、忙しかったんだけど」

「当分の間、日本にいる予定なのよ」

「じゃあ」

藤堂が言った。

「おじいちゃんや、おばあちゃんとも会ったんだね」

「喜んでいただろう?」

「ええ」

メアリーが微笑んだ。

「特に、おじいちゃんがね」

「2人とも歳をとったけど、とっても元気なので安心したわ」


美波が、応接室にコーヒーを2杯運んできた。

「美波さん、ありがとう」

藤堂が言った。

「かわいらしい秘書さんね」

メアリーが言った。

「仕事もよくやってくれて、助かってるんだよ」

藤堂が答えた。

「このコーヒーは、例の南米の国で収穫されたものなんだよ」

藤堂が説明した。

「日本のおかげでコーヒー農園も順調だし」

「学校の整備が進んでいるお礼にと、送ってきてくれたんだ」

「美味しいわ」

メアリーが言った。

「学校建設については、トルグの投資先だから状況は把握している」

「順調にいっているから、大丈夫よ」

美波は、二人のお邪魔になってはいけないと思い「失礼します」と言って、そそくさと部屋を出た。

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【トルグの資金運用】


「一度、聞いてみようと思っていたんだが」

藤堂が言った。

「トルグは元々、莫大な資金を持っていたのは知っている」

「しかし世界各国に散らばっているエージェントの希望に応えて」

「出し惜しみなく使っていて、尽きてしまわないのか?」

「心配いらないわ」

メアリーが答えた。

「減るどころか、増えているもの」

「何故なら、ミネルが上手に運用しているからよ」

「さすがAIはすごいわ」

「それと、継続的に資金が必要なところでは」

「スポンサーを探して、援助してもらっているのよ」

「なるほどな」

藤堂が頷いた。

「ところで、私に会いに来たのは?」

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【日東テクノロジー】


「今日は、藤堂さんに相談したいことがあるの」

メアリーが言った。

「今、日本に来て手掛けている会社は、日東テクノロジーなのよ」

「......」

藤堂が黙った。

「あなたのお父さんの会社よ」

メアリーが言った。

「忘れたの?」

「忘れてはいないよ」

藤堂が答えた。

「長いこと父と会ってないから、すぐにピンと来なかっただけだ」

藤堂はそう言ってごまかしたが、内心困ったなと思った。

誠司さんの父親のことは、よく知らない。


「お父さんは」

メアリーが続けた。

「誠司(藤堂総理)には言わなくていいと言ったんだけど」

「そういう訳にもいかないじゃない」

「相談の内容を聞いてみないとわからないが」

藤堂が言った。

「政治家として、プライベートは持ち込まない方針なんだ」

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【イスラエルの農業技術】


「具体的な話の前に」

メアリーが言った。

「藤堂さんに一つクエスチョンよ」

「イスラエルという国は、知ってるわよね」

「砂漠の多い国よ」

「食料自給率は、どれくらいだと思う?」

「日本は、先進国の中でも低い水準だ」

藤堂が答えた。

「カロリーベースで、確か40%を切っている」

「イスラエルは気温が高く乾燥地帯だから、もっと低いだろう」

「30%くらいじゃないかな」


「イスラエルの食料自給率は、90%以上なのよ」

メアリーが言った。

「国土の大部分が乾燥地帯にあたり」

「半分以上が砂漠という過酷な環境で」

「必要な食料のほとんどを、自給できている」

「過酷な環境だからこそ」

メアリーが続けた。

「それを何とかしようとする力が動いた、ということよ」

「いまや農業灌漑技術では、世界のトップクラスに入るし」

「一部の農作物については、自給どころか輸出も盛んに行っている」

「近年では、クラウド技術に」

「センサーやドローンなどの技術を融合させるような」

「最先端の農業技術も、数多く世に出している」


「イスラエルのすごいところは」

メアリーが説明した。

「国土の60%が荒野で乾燥地帯であるにもかかわらず」

「水に悩んでいないの」

「理由は、イスラエルのWatergenという企業が」

「『大気から水を作る装置』を開発したからなのよ」

「そして、この企業はシリアで活動する人道支援組織と協働し」

「学校・病院・医療施設にWatergenの飲料水製造装置を設置して」

「飲料水を提供しているの」


「それは、知らなかった」

藤堂が驚いた。

「砂漠の大気から飲料水を作るなんて、すごい技術だ」

「そして、その技術を人道支援に活かしているなんて素晴らしいね」

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【ある事業計画】


「前置きが長くなってしまって、ごめんなさい」

メアリーが言った。

「日東テクノロジーの話に移るわ」


「日東テクノロジーは」

メアリーが説明した。

「元々は、半導体製造装置の精密制御技術を持つ中堅メーカーだったけど」

「2011年の東日本大震災後、食料安全保障に関心を持ち」

「植物工場事業に参入した」

「2020年代に入り、AI制御型の小型植物工場ユニットがヒット」

「国内スーパー・外食チェーンに多数導入し、黒字化した」

「そこで次の一手について、社長が悩んでいるの」

メアリーが続けた。

「社内の若手が、海外展開に積極的となっている一方で」

「ベテランは技術者気質が強く、保守的なため慎重派も多い」

「そんな中で、世界中のクライアントを相手に実績を積んできた私の名前が」

「社長の耳に入って、今回のコンサルティング依頼になったという訳なの」


「それで、私に相談とは?」

藤堂が聞いた。


「日東テクノロジーの海外展開として」

メアリーが提案した。

「中東での植物工場を、提案しようと思っているの」

「でも、中東という地域性もあって、企業単独ではなかなか難しい」

「そこで、日本政府のバックアップをもらいたいと考えたの」

「中東で植物工場という取り組みが」

藤堂が聞いた。

「本当にうまくいくのか?」

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【実現可能性】


「Watergenの技術を活用して」

メアリーが答えた。

「中東で植物工場を稼働させることは『十分に可能』で」

「むしろ中東こそ、植物工場の最適市場のひとつと言えるわ」

「イスラエルがそうであるように」

メアリーが説明した。

「中東は砂漠が多く、水が極端に不足」

「気温が高すぎて、露地栽培が困難」

「その一方で、湾岸諸国などは人口が急速に増加して」

「食料輸入依存度が高い」

「だから、植物工場は中東の構造的ニーズに完全に一致している」

「既に三井物産は、サウジアラビアの砂漠に植物工場を建設して」

「事業を展開中」

「つまり、成功例もある」

「あとは、植物工場を展開する際の戦略次第ということ」


「なるほど」

藤堂が頷いた。

「砂漠に植物工場は、夢のような話ではなくて現実的な話なんだな」

「詳しい内容を、教えてくれるか」

メアリーは、計画の内容を説明した。

藤堂の表情が、変わる。

「国家戦略としての価値」を瞬時に理解した目だ。

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【外交カードとしての価値】


「......これは、外交カードになるな」

藤堂が言った。

「はい」

メアリーが答えた。

「中東諸国は、食料安全保障を最重要課題にしています」

「日本が『水と食料の技術』を提供すれば」

「外交関係は、一段と強固になります」

藤堂は、静かに頷く。

「エネルギーを輸入する日本が、食料技術で中東を支える......」

「悪くない構図だ」


メアリーは、少しだけ声を落とす。

「日東テクノロジーは、海外展開に慎重です」

「ですが、総理の後押しがあれば」

「彼らは一歩を踏み出せます」


「だが」

藤堂が聞いた。

「父が副社長であることが、逆に社内で問題視されることはないのだろうか?」

「大丈夫よ」

メアリーが答えた。

「そのことは、私も気になってたんだけど」

「社長がきっぱり言われたわ」

「『副社長の存在は、プラスになることはあってもマイナスになることはない』」

「『私が責任もって、社内をまとめる』と」

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【藤堂の決断】


藤堂は、メアリーを見つめる。

「......君は本当に、世界を動かすつもりだな」

メアリーは、冗談めかして肩をすくめる。

「私はただ、『できることをやるだけ』です」

「総理も、そうでしょう?」

藤堂は笑い、深く頷く。


「早速、外務省、経産省、農水省と連絡を取って」

藤堂が言った。

「『中東食料支援の新プロジェクト』について」

「明日、官邸で打ち合わせをする」

メアリーは、静かに息を呑む。

「......動かれるのですね」

「君が持ってきた話だ」

藤堂が答えた。

「動かない理由がない」

「砂漠に緑を」

「それが日本の技術でできるなら、やってみる価値はある」

メアリーは、深く一礼する。

「ありがとうございます、総理」

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【美波の安堵】


その頃、官邸に美女が訪れて総理と親しげに話している様子を見て、何故か落ち着かない美波であった。

話を終えた藤堂が、応接室から出てきて2人の秘書を呼んだ。

「吉村さんと神宮寺さんのお二人に、紹介します」

藤堂が言った。

「この方は、メアリー・クラークさんといって」

「トルグ総帥・田中さんのお孫さんなんです」

「日本人離れした外見なので、びっくりしたかもしれないが」

「メアリーのお母さんは、田中さんの娘で」

「お父さんは、オーストラリアの方なんだ」

「つまり、日豪ハーフという訳です」


「みなさん、初めまして」

メアリーが言った。

「メアリー・クラークと言います」

「企業コンサルタントのお仕事で、今日本に来ています」

「これからお二人にも、お世話になると思いますので」

「どうぞ、よろしくお願いします」

「そうだったのですか」

吉村が答えた。

「吉村です」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

「神宮寺美波と申します」

美波が言った。

「よろしくお願いいたします」


「話の内容は、後で説明しますが」

藤堂が言った。

「美波さんが、きっと興味津々になる内容ですよ」

*美波は、内心ほっとしている自分に気づいた*


窓の外、東京の空が広がっていた。

*中東に、野菜畑を*

*日本の技術で*

*世界を変える*

藤堂は、決意を新たにした。


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2.メアリーのプレゼンテーション

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【数日後・横浜】


日東テクノロジー本社・役員会議室。

ガラス張りの窓から、横浜港が見える。

緊張感のある空気の中、メアリー・クラークがプレゼンを始める。

スライドに映し出されるのは、砂漠に立つ小型植物工場ユニットと、Watergenの大気水生成装置。

メアリーは、落ち着いた声で話し始める。


「皆さん」

「日東テクノロジーの植物工場技術は」

「すでに日本国内で、成功しています」

「しかし、世界には『水がないために農業ができない地域』が」

「まだ多く存在します」

スライドが切り替わり、中東の砂漠地帯、難民キャンプ、湾岸諸国の都市が映る。

「そこで、提案です」

メアリーが続けた。

「イスラエルのWatergenが開発した」

「大気水生成(AWG)技術と、日東さんの植物工場を組み合わせ」

「中東の食料支援・雇用支援プロジェクトに」

「参入しませんか」

役員たちが、ざわつく。

「もし御社が、前向きに検討されるなら......」

メアリーが言った。

一拍置き、視線を役員たちに向ける。

「私は、藤堂総理とは個人的な知古があります」

「日本政府の支援を取り付けることも、可能です」

会議室の空気が、一変する。

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【質疑応答】


最初に口を開いたのは、保守派の専務・黒田。

「中東は、政治リスクが高い」

黒田専務が言った。

「我々のような中堅企業が参入して」

「本当に勝算が、あるのかね」

メアリーは、微笑む。

「勝算は、あります」

「中東は今、食料安全保障を国家戦略にしています」

「特にUAEとサウジは」

「植物工場を『国家インフラ』として扱っています」


若手役員の一人が、手を挙げる。

「Watergenの水生成量は」

「植物工場に、十分なのですか?」

「小型〜中型の工場なら、十分です」

メアリーが答えた。

「御社の『AI制御型小型ユニット』と、相性が良い」

「むしろ、飲料水レベルの高品質な水は」

「植物工場に、最適です」


技術担当の役員が、口を挟む。

「湿度が低い砂漠で」

「本当に水が取れるのか?」

「湾岸諸国の沿岸部は、湿度が高く」

メアリーが説明した。

「AWGの効率は、むしろ良い」

「また、太陽光発電との組み合わせで」

「コストも抑えられます」


黒田専務が、腕を組む。

「......しかし」

「政府の支援とは、具体的に何を指すのかね」

メアリーは、スライドを切り替える。

「藤堂総理は」

「『食料安全保障の国際協力』を重視しています」

「政府系ファンド、JETRO、JICA、外務省のODA」

「これらを組み合わせれば」

「初期投資のリスクを、大幅に軽減できます」

役員たちの表情が、変わる。

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【縁故関係の疑念】


黒田専務は、一部の役員が考えていることを代弁するように質問をした。

「ところで、メアリー先生は」

「先ほど藤堂総理を知っている、とおっしゃった」

「ここにおられる藤堂副社長が、その藤堂総理の父親であることは」

「もちろん知っていらっしゃいますよね」

「今回の話は、日本国政府の政治的な思惑から」

「副社長のおられる我が社に、要請があったということでしょうか?」

「最初から当社が、この話を断れないだろうという」

「目算があるのではないですか?」


メアリーが、きっぱりと否定した。

「それは、全くの誤解です」

「確かに、藤堂総理は私の友人です」

「でも、今回コンサルティングのお話をいただいたのは」

「そのこととは、全く無関係です」

「渡辺社長は、ただ単に当社のこれまでのコンサルティング実績を」

「評価して、私に要請してくださいました」

「また、御社に藤堂総理のお父様がいらっしゃることは」

「私がこちらへ来て、初めて知ったことなのです」

「それと誤解のないように、はっきり申し上げますが」

メアリーが続けた。

「この『中東で植物工場』の企画は」

「私自身の考えで、提案させていただいたものであり」

「政府からあるいは総理から、要請があったものではありません」


「今の話は、本当でしょうか?」

黒田専務が聞いた。

「渡辺社長」


「全部、本当だ」

渡辺社長が答えた。

「藤堂副社長からは、総理に話をしなくてもいいと言われたが」

「そうもいかんだろうと、私の一存でメアリーさんから内々に話をしてはいる」

「だが、本件はそういう縁故関係は一切考えず」

「ご提案の内容を吟味して」

「純粋に事業としてやるべきかどうかを、判断してほしい」

黒田専務は、完全に納得したわけではなかったが反論はしなかった。

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【藤堂の父】


藤堂の父・健介は、かつて自分の父親・龍一が政治家として激務をこなしていく中で、家族と接する時間がほとんどなかったことから、政治家になることは拒み民間会社に就職し、役員まで上り詰めた。

実業家として、外から政治を見てきた。

志半ばで政界を追われた龍一の、悔しい思いをよく知っている。

息子(誠司)が国会議員になって、祖父のやりたかったことをしたいと言ったとき、健介は止めなかった。

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【メアリーの締めくくり】


メアリーは、ゆっくりと会議室を見渡して言った。

「日東テクノロジーは、国内では成功しました」

「次は『世界で必要とされる企業』になる番です」

モニター画面には、砂漠に立つ日東の植物工場ユニットと、そこで働く現地の若者たちのイメージが映る。

「砂漠に水を」

メアリーが言った。

「未来に食料を」

「御社の技術なら、それができます」

会議室は、静まり返る。

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【社長の判断】


その沈黙を破ったのは、社長の言葉だった。

「我が社にとって、大きな転換点となり得るお話だ」

渡辺社長が言った。

「大きなリスクも伴う」

「この場ですぐに結論を出すような、ことではない」

「役員の方々は、メアリーさんの資料をよく検討していただき」

「来週改めて、役員会を開きたいと考えるがどうか?」

「また、本件は検討しているという情報だけでも」

「当社の株価に影響を及ぼす」

「インサイダー取引等が発生することがないよう」

「社外秘で取り扱ってくれ」

社長の発言に、一同がうなずいた。


藤堂副社長は、この日一切発言をしなかった。

会議は終了し、メアリーは静かに微笑んだ。

窓の外、横浜港が広がっていた。

*砂漠に、緑を*

*日本の技術で*

*世界を変える*

メアリーは、決意を新たにした。


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3.社内での賛否対立

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【本社・役員会議室】


前回の役員会議から、1週間後。

藤堂総理の意向が「非公式に」伝わり、社内はざわついている。


社長が、重い口を開く。

「......官邸が、動いた」

「藤堂総理は『中東食料支援プロジェクト』に」

「我々の技術を、使いたいそうだ」

会議室が一瞬静まり返り、すぐにざわめきが広がる。

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【保守派の反対】


最初に声を上げたのは、保守派の黒田専務。

「総理が何と言おうと、我々は中堅企業だ」

黒田専務が言った。

「中東などという、政治リスクの塊に飛び込む必要はない」

「国内で、堅実にやればいい」


技術役員も、続く。

「Watergenとの連携も、未知数だ」

「湿度が低い地域では、効率が落ちる」

「失敗すれば、会社の信用に傷がつく」

彼らの言葉には、「変化への恐怖」が滲んでいる。

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【若手の反論】


若手役員の一人、30代の企画部長・白石が立ち上がる。

「専務」

白石が言った。

「それは『挑戦しない理由』を並べているだけです」

「中東は、植物工場の最重要市場です」

「水不足、食料輸入依存、気温50度」

「我々の技術が、最も必要とされる場所です」


黒田専務が、睨む。

「若造が、夢物語を語るな」

「会社は、遊び場ではない」

白石は、一歩も引かない。

「遊びではありません」

「『日本の技術で世界を救える』現実的なチャンスです」

「藤堂総理が動いたのは」

「その価値を、理解しているからです」

会議室の空気が、変わる。

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【メアリーの介入】


そこへ、オンライン会議の画面にメアリーが映る。

「皆さん、議論は拝見していました」

メアリーが言った。

「一つだけ、申し上げます」

黒田専務が、眉をひそめる。

「中東の政府系ファンドは」

メアリーが続けた。

「『日本の植物工場技術』を、国家プロジェクトとして扱っています」

「もし日東さんが動かないなら......」

「他の日本企業に、声がかかるだけです」

会議室が、凍りつく。

白石が、小さく笑う。

「つまり、チャンスは『今だけ』ということですね」

「はい」

メアリーが答えた。

「藤堂総理が後押しするプロジェクトは」

「滅多にありません」

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【激論】


黒田専務が、机を叩く。

「総理の名前を出せば、何でも通ると思うな!」

「我々は、政治に振り回されるべきではない!」

白石が、静かに言い返す。

「政治に振り回されるのではなく」

「『政治を利用する』のです」

「それが、企業の生き残りです」

「若手は、理想論ばかりだ......」

技術役員が呟いた。

「理想がなければ、技術は死にます」

白石が答えた。

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【社長の決断】


今回も、藤堂副社長はあえて発言しなかった。

しかし、渡辺社長とは毎日のように議論を交わしており、2人の意見は合致している。

ついに渡辺社長が、長い沈黙の後口を開いた。

「......まずは、現地調査チームを作る」

「白石」

「君が、リーダーだ」

「社長、それは軽率では——」

黒田専務が言いかけた。

「専務」

社長が言った。

「『動かないリスク』の方が、大きい」

黒田専務は、言葉を失う。

メアリーが、微笑む。

「素晴らしい決断です」

「砂漠に未来を植える旅が、始まります」


一方、国会においても官邸 vs 省庁の戦いが始まろうとしていた。

________________________________________

第24話 完

次回:第25話「国家プロジェクト始動」

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