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第19話「神宮寺美波の声」

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1. 美波が尊敬している人物

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【美波の回想・カンボジア】


==神宮寺美波が大学3年生の頃、カンボジア・プノンペン郊外の農村==

「ゆっくりね、こぼさないように...そう、上手!」

美波が言った。

「ありがとう、ミナミ!」

現地の少年ソカーが、水汲みを手伝っていた。

「こちらこそ」

美波が微笑んだ。

「水があるって、こんなに嬉しいことなんだね」

ソカーの妹チャンが、バケツを覗き込み、顔をしかめる。

「でも、まだ濁ってる...」

「うん、これからもっときれいにできるようにするのよ」

美波が優しく言った。

「水がきれいになれば、病気も減るから」

村の女性が近づき、穏やかに頷く。

「あなたたちが来てくれて、本当に助かってる」

「この村では、長い間『水』が一番の問題だったの」

美波が頷きながら、遠くでポンプを調整している青年に目を向ける。


「美波先輩、水圧が安定しました」

翔が言った。

「これで少しは楽になると思います」


「すごい...そんなことまでできるんだ」

美波が驚いた。

「以前、業者の方がやっているのを見たことがあったので」

翔が答えた。

「見よう見まねですけど、こういうの好きなんですよ」

「高校生なのに、頼もしいね」

美波が言った。

「いえ、まだまだです」

翔が微笑んだ。

「でも...こういう場所に来て」

「『自分の手で誰かの生活を変えられる』って、初めて感じました」

美波が静かに頷く。

彼の言葉が、心に響く。

「私も」

美波が言った。

「中村哲先生の言葉を思い出すの」

「『憎しみではなく、水を』」

「それが、こうして形になるんだね」

「じゃあ、僕らも『水を届けるチーム』ですね」

翔が笑った。

美波が笑い返す。

二人の間に、穏やかな友情の空気が流れる。


美波がノートに何かを書いている。

背景には、オレンジ色の空と子どもたちの笑い声。

翔が、少し離れた場所で工具を片付けている。

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【回想終わり・官邸】


首相官邸の5階にある総理執務室のすぐ隣に、「奥の院」と呼ばれる総理秘書官が執務する部屋がある。

美波をはじめ8人の総理秘書官(政務2名、事務6名)が、総理の指示や政策立案を補佐するため、最も近くで仕事をする体制となっている。


「神宮寺さん、どうかしたのか?」

吉村に声をかけられ、美波は我に返った。

「あっ、ごめんなさい」

「考え事をしていました」


*翔くんは、あの時まだ高校生だった*

*でも、誰よりも真剣で、誰よりも優しかった*

*あの笑顔を、私は今でも覚えている*

*何年も会ってないけど、元気にしているかしら?*

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【総理執務室】


仕事の合間に、藤堂が美波に問いかけた。

「ところで美波さん」

「君がずっと途上国支援活動を続けていた理由って、何かあるの?」


「私がボランティア活動を始めた理由は」

「テレビである番組を見たことがきっかけでした」

「その番組に出ていたのが、中村哲先生でした」


「中村哲さんなら、私も知っています」

「アフガニスタンで長年、献身的に活動された偉大な方ですね」

「にも関わらず、最期はあのような非業の死を遂げられて」

「何と悲しいことかと思いました」

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【中村哲医師について】


「中村先生は」

美波が説明した。

「戦乱と干ばつに見舞われたアフガニスタンで」

「35年の長きにわたり医療支援を行われました」

「飢えに苦しむ人々を救うため」

「独学で土木技術を学び」

「用水路建設や砂漠の緑化に尽力されたんです」

「約1,600本の井戸を掘り」

「25km以上の用水路を整備して」

「15,000ヘクタール以上の農地を回復させました」


「素晴らしいですね」

藤堂が感嘆した。


「先生の活動は」

美波が続けた。

「人道医療、農業復興、そして平和の追求でした」

「現地の技術で持続可能な用水路を建設し」

「住民が自立できる農業基盤を築かれたんです」

「2019年12月に、武装集団に銃撃され73歳で亡くなりましたが」

「その精神と活動は、現地やNGO『ペシャワール会』に受け継がれています」

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【美波の想い】


「私のやっていることは」

美波が謙虚に言った。

「中村先生のなされたことと比べたら、微々たるものです」

「でも、微々たるものでも」

「世界中で苦しんでいる人たちのために、役に立ちたいと思ったのです」

「お一人であそこまでなさる中村先生のような方は、希有な存在です」

「そこまでできなくてもいい」

「一人でも多くの人が活動して」

「飢えや貧困に苦しむ人々のために、役に立とうとする気持ちが必要なのです」


「美波さんは」

藤堂が聞いた。

「その番組で、中村さんのどういうところに心を打たれたのですか?」


「先生は、元々医療支援のために訪れた地で」

美波が答えた。

「『問題は医療以前であって、病気どころではない。まず生きておれ!』という状態だと知り」

「『百の診療所よりも一本の用水路』だと考えられたんです」

「そして、自ら土木技術を勉強して」

「大事業を成し遂げられました」

「先生は医者ですから、土木は全くの素人でした」

「でも、独学で土木工学を学ばれて」

「何度も失敗しながら、立派な用水路を造られたんです」


「そして、先生はこうおっしゃいました」

美波が真剣な顔で言った。

「『人間にとって本当に必要なものは、そう多くはない』」

「『武力さえあれば身が守られる、という妄信から自由である』と」

「つまり『武力による抑止』を否定されました」

「『軍備で暮らしは守れない』を、実践で示されたんです」


藤堂は、黙って聞いていた。

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【国会での出来事】


「藤堂さんは」

「中村先生が国会に招かれたときの話をご存じですか?」

美波が聞いた。


「いえ、詳しくは...」


「2001年、米国同時多発テロの直後です」

「中村先生は、衆議院の委員会に参考人として招かれました」

「先生は、『戦争でテロは根絶できない』と訴えられました」


「でも、国会議員の方たちは」

「自衛隊派遣ありきで議論していて」

「先生の発言に、激しいヤジを飛ばしたんです」

「先生は、こう感じたそうです」

「『余りに現実を踏まえない議論だけが先行している』」

「『本当にアフガニスタンの実情を知って話が進んでいるのか?』と」


「普通なら、現職の総理大臣に面と向かってこんなことを言えませんが」

「藤堂さんなので、敢えて言わせていただきます」

「あのとき、日本の国会の醜い姿が露わになったように感じます」

藤堂は、真摯に聞いていた。

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【欧米のNGOとの違い】


「当時、欧米はアフガニスタンに」

「一方で戦争によって国土を破壊しながら」

「もう一方では、莫大な復興資金をつぎ込んだんです」

「でも、ほとんどのNGOは失敗しました」

「なぜだと思いますか?」


「なぜでしょう?」


「彼らが、上から目線だったからです」

「『進歩』させてやろう、『改革』させてやろうとした」

「それで、現地の人々から反発を受けたんです」


「でも、中村先生は違いました」

「『私たちは決して社会改革に来たのではない』」

「『目の前の人間が食べられるようにすることに集中すればよい』」

「『現地の習慣や文化を批判しない。とにかく人を助ける』」

「この考えで、現地の人々と共生できたんです」

「NGOに携わる私たちが、学ぶことがたくさんありました」


「なるほど」

藤堂が頷いた。

「偉大な方だね」

「現地の過酷な状況で、使命を果たそうと命がけで闘った方だからこそ」

「発言に重みがあるね」

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【翔くんの思い出】


「最近、私」

「カンボジアでボランティア活動していた時のことを、思い出すんです」

「そのとき、一緒に活動していた翔君っていう高校生がいたんです」

「彼も私と同じような考えを持っていて、すごく気が合ったんです」

「今、藤堂さんに話したようなことを、毎日のように語り合ってました」


「そうなんですか、高校生でね」

藤堂が答えた。

*美波、その話をしないでくれ...*

藤堂は、美波にその話をしてほしくなかった。

正体がばれてはいけない。


「その子が、政治家にでもなったら」

美波が言った。

「きっとすごいことをできたんじゃないかなって...」

「どうしてるんだろうな」

「連絡とってみようかなって思うんです」


藤堂は、思わず言った。

「やめておいた方がいいと思うよ」

「どうしてですか?」

美波が驚いた。

「期待通りの人間になっているとは限らないからだよ」

藤堂が答えた。

「藤堂さん、めずらしくネガティブなことを言うんですね」

美波が不思議そうに言った。

「いや、なんとなくそう思っただけだよ」

藤堂が誤魔化した。


美波は、意外に感じた。

*何でそんなことを言うんだろう*

*いつもの藤堂さんなら*

*『私も会ってみたいな』みたいなことを言うのに*


窓の外、東京の空が広がっていた。

*翔くん*

*あなたは今、どこで何をしているの?*

美波は、遠い空を見つめた。

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2. 外務省での勉強会

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【後日・官邸】


藤堂は、執務室のデスクで考えていた。

*美波さんは、秘書の実務については*

*既にほとんどマスターできているようだ*

*これからは、日本政府の政策面を学んでもらう必要があるな*

*まずは、一つ重要な課題を与えよう*


「美波さん」

「日本の石油輸入が、中東に95%以上集中していることは知っているよね」

「だから、中東依存度を下げる必要があるんだが」

「輸入先を拡大することは、一朝一夕では実現しない」

「中東諸国とは、引き続き良好な関係を維持しておく必要があるんだ」

「しかし、中東は歴史的に複雑な問題を抱えている」


「私も近いうちに、中東諸国を訪問しようと考えているので」

「美波さんも、中東問題について勉強しておいてほしい」

「一度、外務省に行ってレクチャーを受けてもらおうと思うが、どうかな?」


「はい、是非行かせていただきます」


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【外務省本庁舎・中東課会議室】


壁には、中東地域の大きな地図。

国境線は、まるでパズルのように入り組み、その複雑さが歴史の重さを物語っている。

美波は、緊張した面持ちで資料を抱え、席に座っていた。


ドアが開き、露崎健一中東課長が入ってきた。

落ち着いた雰囲気だが、どこか親しみやすい笑顔を浮かべている。

「神宮寺さんですね。露崎です。お待たせしました」

「今日は、総理のご指示で『中東問題の基礎』をお話しします」

「難しく聞こえるかもしれませんが、一つずつ整理すれば大丈夫です」


「よろしくお願いします」

美波が答えた。

「実は...中東の歴史はほとんど知らなくて...」


「それでいいんです」

露崎が微笑んだ。

「むしろ、先入観がない方が理解しやすいこともありますよ」

露崎は、地図の前に立ち、レーザーポインターを手に取る。

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【中東問題の始まり】


「中東って色々な国がありますが」

美波が聞いた。

「宗教や民族など、様々な問題があるんですよね」

「そもそも、どうして中東はこんなに複雑なんですか?」


「第一次世界大戦の頃」

露崎が説明した。

「イギリスが『矛盾した三つの約束』をしたことが始まりです」

「これを『三枚舌外交』と呼びます」

露崎は、三つの資料を並べる。

「一つめは、アラブ人への約束」

「『オスマン帝国に反乱を起こしてくれたら、戦後はアラブ人の独立国家を作る』」

「二つめは、ユダヤ人への約束」

「『パレスチナにユダヤ人の民族的郷土を作ることを支持する』」

「三つめは、列強同士の約束」

「『戦後の中東は、英仏露で分割統治しよう』」


「えっ...全部、内容が違いますよね?」

美波が驚いた。

「そうなんです」

露崎が頷いた。

「アラブ人にも、ユダヤ人にも、そして列強同士でも、違う約束をした」

「これが後の『土地をめぐる争い』の根本原因になりました」

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【イスラエル建国とパレスチナ難民】


「第二次世界大戦後」

露崎が続けた。

「ホロコーストを経験したユダヤ人は、安全な国家を求めて」

「パレスチナに移住を進めました」

「そして1948年、イスラエルが建国されます」


「その時、パレスチナの人たちは...?」

美波が聞いた。

「多くが、故郷を追われました」

露崎が答えた。

「戦争や混乱の中で、70万人以上が難民になったと言われています」

「これが『パレスチナ難民問題』の始まりです」

美波は、息を呑む。


「イスラエル建国後」

露崎が続けた。

「周辺のアラブ諸国は反発し、4回の大きな戦争が起きました」

「そして戦争のたびに、領土問題が複雑化していきました」

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【現在の対立構造】


露崎は、地図に複数の矢印を描く。

「現在の中東には、多層的な対立があります」

「一つめは、イスラエルとパレスチナ」

「土地・民族・歴史が絡む、最も根深い対立です」

「二つめは、スンニ派とシーア派」

「イスラム教内部の宗派対立です」

「スンニ派の中心はサウジアラビア、シーア派の中心はイランです」

「三つめは、サウジアラビアとイラン」

「宗派・政治体制・地域覇権をめぐる争いです」


「宗教が違うだけで、なぜ争うんですか?」

美波が聞いた。

「宗教は『アイデンティティ』です」

露崎が答えた。

「それが脅かされると、人は強く反発します」

「さらに、宗教だけでなく——」

「石油、水資源、領土、そして大国の介入」

「これらが絡み合うことで、対立はより複雑になります」

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【解決の困難さ】


「中東問題は、お金で解決できないんですか?」

美波が聞いた。

「資金は必要ですが、それだけでは足りません」

露崎が答えた。

「宗教的対立、武装勢力、領土問題、資源争奪、そして大国の介入...」

「これらが絡むと、単純な『支援』では動かないんです」

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【中村哲の活動】


ふと、美波の表情が変わる。

遠い記憶を思い出すように。

「私、学生時代にボランティアをしていた頃」

「中村哲先生のことを知りました」

「先生は医師としてアフガニスタンに行かれたけど...」

「病気の原因が『水不足』だと気づかれて」

「井戸を掘り、用水路を作られたんです」

「『憎しみではなく、水を』」

「この言葉が、私の心に深く刺さりました」

静かな沈黙が落ちる。

「中村先生の活動は、素晴らしかった」


露崎が言った。

「日本の誇りです」

「しかし...残念ながら、先生は現地で命を落とされた」

「...はい」

美波が頷いた。

「だからこそ、私たちが先生の遺志を継がないといけないと思うんです」

「その通りです」

露崎が微笑んだ。

「神宮寺さん、あなたのような人が総理の秘書になったのは」

「日本にとって幸運です」

美波は驚き、そして少しだけ微笑む。

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【日本がとるべき行動】


「日本には、何ができるんですか?」

美波が聞いた。

「日本は、軍事力ではなく『人を支える力』で貢献できます」

露崎が答えた。

「経済支援、教育支援、医療支援」

「そして、民間の力の活用」

「中村先生のように、現地の人と共に歩む姿勢」

「それが、日本の強みです」


「今日は、ありがとうございました」

美波が言った。

「...私、もっと学びます」

「総理のためじゃなくて、現地の人たちのために」

露崎は、満足そうに頷いた。

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3. 藤堂への報告

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【官邸・執務室】


「外務省はどうだった?」

藤堂が聞いた。

「露崎課長は、少し話が長いところがあるが...」

「いえ、とても丁寧に教えていただきました」

美波が答えた。

「むしろ、私が知らないことばかりで...」

「今日は、その報告をさせていただきます」


「お願いします」

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【美波の報告】


美波は、露崎課長からレクチャーを受けた内容を説明した。

三枚舌外交のこと。

イスラエル建国とパレスチナ難民のこと。

多層的な対立構造のこと。

そして、解決の困難さのこと。


「結局」

「今の中東問題を作り出したのは、米英露だと思うんです」

「自分たちの都合だけで国の境界を決めたり」

「意に沿わない相手には武力行使したり」

「それと、武装組織を、あるときは支援し」

「あるときは見捨てて放置し、あるときは武力で潰そうとし...」


「中東問題を解決できるのは」

「日本を中心としたアジアの協力だと思います」

「米英露は、事態をこじらせることはあっても、平和に近づくことはない」

「彼らは武力行使が大好きで、やめられないのだから」

藤堂は、黙って聞いていた。

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【藤堂の助言】


「美波さん」

藤堂が言った。

「珍しく感情的になっているね」

「君の意見は、もっともだと思うよ」

「でも、物事を冷静に考えることも必要だ」


「私たちは、日本国民の負託に応えなければならない」

「日本の立ち位置を冷静に考え」

「どうすることが一番いいのか、じっくり考えないといけない」

「『日本を中心としたアジアの協力』というのは、いい考えだと思う」

藤堂が微笑んだ。

「まずは、とても困難な仕事ではあるが、国連改革」

「そして同時並行で、アジアの国々の連携を強めていく」

「それをどのように進めていくのか」

「一緒に考えようじゃないか」

美波の目が、輝いた。

「はい!」


窓の外、東京の空が広がっていた。

*中東問題*

*国連改革*

*アジアの連携*

*大きな挑戦が始まる*

藤堂は決意を新たにした。

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4. トルグの秘密

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【ある日・官邸】


今日は、磯村が藤堂総理にトルグのエージェントから得た情報を報告しに訪れていた。

一通り説明した後、雑談に移った。

「総理は先日、SUNNY DAYのレモンに会ったそうですね」

磯村が言った。

「私も彼女を知っていますが、いい子でしょう」


「そうだね」

「ロックミュージシャンっていう職業に対する印象が、大きく変わりましたよ」

「彼女は、まだ20代前半なのに、しっかりした考えを持っている」

「見習わないといけないな」


「我々の活動には」

磯村が言った。

「もっと若い力が必要かもしれませんね」


「そうですね」

藤堂が答えた。

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【磯村が帰った後】


美波が、かねてから思っていた疑問を藤堂にストレートに話した。

「藤堂さん」

「差し出がましいことを申し上げますが」

「前から気になっていることを、お聞きしてもいいですか?」


「何でもどうぞ」


「今日来られた磯村さんとか、高橋さんって」

「フリーのジャーナリストなんですよね」

「いつも長時間お話しになっていますが」

「何か特別なお話をしているのですか?」


「いや、特別な話ということではなくて」

「彼らが取材中に耳にした情報を、教えてもらっているのですよ」


「それならいいです」

美波が安堵した。

「余計な心配でした」


藤堂は思った。

*そろそろ、信頼の置けるメンバーには*

*トルグのことを知ってもらっておいた方がいいな*

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【その夜・書斎】


「アル」

「先日、八重樫幹事長から厳しい指摘を頂戴した」

「経済的なつながりだけでは、戦争を防ぐことはできない」

「国連の限界を理解しつつ」

「地域機構、分野別ルール、危機管理...」

「それらを組み合わせる、『新しい秩序』をつくる」

「壮大な仕事だ」


「当然、私一人の力では成し遂げられない」

「トルグという味方もいるが、回りの誰も知らない」

「いつまでも秘密にしておくわけにはいかないだろう」

「だから、橘さんや八重樫さん」

「そして2人の秘書には、打ち明けるべきではないかと思うんだが?」


「そうね」

アルが頷いた。

「私もそう思うわ」

「田中さんに相談してみたら」

「そうするよ」

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【翌日・田中邸】


藤堂は早速、田中を訪ねてその話をした。

「田中さん」

「いよいよ、トルグと私の共通の活動目的」

「『世界から戦争をなくす』のために」

「日本の総理大臣として、本格的にアクションを起こしていこうと考えています」

「そこで相談なのですが」

「これまで『トルグ』という組織の存在について」

「周りの者には秘密にしておりましたが」

「今後は、お互いに連携して活動していけるよう」

「一部の信頼できるメンバーには、打ち明けたいと考えていますが、どうでしょうか?」


「一部の信頼できるメンバーとは」

田中が聞いた。

「どういう人を言ってるのかな」


「橘官房長官、八重樫幹事長」

藤堂が答えた。

「そして秘書の吉村さんと神宮寺さんの4人です」


「そうか」

田中は、少し考えて言った。

「よかろう」

「藤堂総理が信頼を置いている人なら、かまわんよ」


「ありがとうございます」

藤堂が頭を下げた。

「当然、彼らにはしっかり口止めしておきますから」

「ご安心ください」

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【その夜・官邸】


藤堂が、4人を集める。

橘麗子官房長官。

八重樫仁幹事長。

吉村隆政務秘書官。

神宮寺美波政務秘書官。


「皆さんに、大切な話があります」

藤堂が言った。

「これから話すことは、絶対に口外しないでください」

4人、緊張した面持ち。


「実は...」

「私には、協力者がいます」

「トルグという組織です」

4人、驚く。

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【トルグの説明】


藤堂が説明した。

トルグとは何か。

田中丈太郎との出会い。

世界中のエージェント。

これまでの活動。

そして、世界平和への取り組み。


「総理...」

橘が呟いた。

「そんな組織が...」

「信じられない...」

八重樫が言った。

「でも、納得できる」

「総理の情報源は、そこだったのか」

「総理は、お一人で戦っていたんですね」

吉村が言った。

「藤堂さん...」

美波が呟いた。


「美波さんには」

藤堂が言った。

「先日、質問を受けたときに、ごまかしてしまって悪かったが」

「高橋さんと磯村さんは、トルグの中心メンバーで」

「世界中のエージェントからの情報を、届けに来てくれていたんだ」


「ここにいる皆さんには」

「これまで隠していて、申し訳なかったと思っています」

「今日、田中氏に打ち明ける許可をもらいました」

「信頼の置けるメンバーなので」

「ともに手を携えて活動していきたいと話しました」

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【チームの結束】


「これから」

藤堂が言った。

「世界平和に、本格的に取り組みます」

「そのために、皆さんの協力が必要です」

「トルグのことを、知っていただきたかった」


「わかりました」

橘が答えた。

「私たちも、一緒に戦います」

「総理」

八重樫が言った。

「あなたは本気だ」

「私も覚悟を決めます」

「全力でお支えします」

吉村が言った。

「私も...」

美波が言った。

「微力ですが」


「ありがとうございます」

藤堂が言った。

「一緒に、世界を変えましょう」

4人、頷く。

その瞬間、チームが一つになった。

________________________________________

【藤堂の決意】


窓の外、東京の夜景が広がっていた。

*橘さん*

*八重樫さん*

*吉村さん*

*美波さん*

*そして、トルグ*


*私には、こんなに頼もしい仲間がいる*

*一緒に、世界を変えよう*

*戦争のない世界を*

*子供たちが笑顔で暮らせる世界を*

藤堂は決意を新たにした。

その目には、強い光が宿っていた。

*世界平和への挑戦が*

*今、始まる*

________________________________________

第19話 完

次回:第20話「アジアへの旅路」

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※参考文献 「中村哲という希望 日本国憲法を実行した男」佐高信、高世仁  旬報社

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