第14話「テレビ討論」
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1.政治資金問題
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【テレビ局・特設スタジオ】
総裁選告示から三日後。
夜のテレビ局には、異様な緊張感が漂っていた。
全国生放送。
視聴率は20%を超えると予想されている。
テーマは——「政治資金問題」
最も国民の関心が高く、最も候補者の"本性"が出るテーマ。
「それでは」
司会者が言った。
「自民党総裁選・第一回テレビ討論を始めます」
三人の候補者が並んで座る。
• 藤堂誠司
• 結城宏明
• 諏訪部泰介
カメラがゆっくりと寄っていく。
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【諏訪部泰介】
「まずは諏訪部候補」
司会者が聞いた。
「政治資金の透明化について、どうお考えですか?」
諏訪部は、わずかに眉をひそめた。
「私はね、政治には金がかかると思っとる」
諏訪部が言った。
「それは昔から変わらん」
「後援会も、地元の活動も、全部タダではできんのですわ」
「しかし、国民の不信感は高まっています」
司会者が続けた。
「不信感があるなら、説明すればええ」
諏訪部が答えた。
「わしはこれまでも、必要な説明はしてきたつもりや」
*「つもり」か*
スタジオの空気が微妙に揺れる。
「政治資金規正法を厳しくしすぎると」
諏訪部が続けた。
「地方の政治家は活動できんようになる」
「都会の感覚で地方を縛るのは、間違っとる」
「では、透明化には慎重ということですか?」
司会者が聞いた。
「慎重というより...」
諏訪部が答えた。
「現実的に考えなあかん、ということや」
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【結城宏明】
「続いて結城候補」
司会者が聞いた。
「政治資金の透明化については?」
結城は、穏やかな笑みを浮かべた。
「透明化は必要です」
結城が答えた。
「ただし、やり方には慎重さが求められます」
「政治資金の流れをすべて公開するのは理想ですが」
「現実には、関係者のプライバシーや安全の問題もあります」
「バランスが大事です」
「では、具体策は?」
司会者が聞いた。
「まずは、既存の制度を丁寧に見直すことからですね」
結城が答えた。
「急激な改革は混乱を招きます」
*逃げてる*
視聴者にも、その"無難さ"が伝わっていた。
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【藤堂誠司】
「では藤堂総理」
司会者が聞いた。
「政治資金問題について、どうお考えですか?」
藤堂は、迷いのない目でカメラを見つめた。
「政治資金の透明化は」
藤堂が言った。
「"やるか、やらないか"ではありません」
「"やらなければならない"問題です」
スタジオが静まり返る。
「国民の信頼を失った政治は」
藤堂が続けた。
「どれだけ政策を語っても届きません」
「まずは、政治家自身が襟を正すべきです」
「具体的には?」
司会者が聞いた。
「三つあります」
藤堂が答えた。
「一つめは、選挙のデジタル化です」
「まず、『お金がないと政治できない』構造を是正するために」
「選挙関連のコストを削減します」
「二つめは、企業・団体献金の段階的廃止」
藤堂が続けた。
「政治家が"組織"に縛られないようにします」
「三つめは、政治資金の可視化です」
「すべての献金および支出をオンラインで即時公開する仕組みを整える」
「そして監査機関を強化します」
「かなり踏み込んだ提案ですね」
司会者が言った。
「踏み込まなければ、政治は変わりません」
藤堂が答えた。
諏訪部が、明らかに不快そうに眉をひそめた。
結城は、苦笑いを浮かべている。
「政治家が『説明責任を果たす』のは当然です」
藤堂が続けた。
「しかし、説明だけでは足りない」
「『疑われない仕組み』を作ることが、政治の責任です」
「そして、これは実現には少し時間がかかりますが」
藤堂が力を込めた。
「『政治資金問題』を根本的に解決する方法は」
「ズバリ、デジタル化です」
スタジオの空気が変わった。
藤堂の言葉は、まっすぐに視聴者へ届いていた。
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【反論】
「諏訪部候補、いかがですか?」
司会者が聞いた。
「...藤堂くんは理想を語りすぎや」
諏訪部が言った。
「政治はそんな簡単なもんやない」
「簡単ではありません」
藤堂が答えた。
「しかし、放置するわけにはいきません」
「理想だけで国は動かん」
諏訪部が言い返した。
「理想を語らない政治は」
藤堂が言い切った。
「国を動かす資格がありません」
「まあまあ、お二人とも」
結城が割って入った。
「現実的な落としどころを——」
「結城さん」
藤堂が遮った。
「『落としどころ』ばかり探していては、何も変わりません」
結城は言葉を失った。
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【討論会後・官邸】
討論会を終え、官邸に戻った藤堂を、橘官房長官が待っていた。
「...上々のスタートね」
橘が言った。
「そうか?」
藤堂が聞いた。
「諏訪部さんを正面から論破して、結城さんの逃げ道も塞いだ」
橘が微笑んだ。
「今日の勝者は、どう見ても藤堂さんね」
「ありがとう、橘さん」
藤堂が言った。
「まだ始まったばかりなんだから」
橘が真剣な顔になった。
「気を抜いてはだめですよ」
「わかっています」
藤堂が頷いた。
そこへ、吉村秘書が駆け込んできた。
「総理!」
吉村が興奮した声で言った。
「SNSの反応がすごいです!」
「『政治資金問題で藤堂圧勝』がトレンド入りしています!」
「そうか」
藤堂が言った。
「だが、浮かれるなよ」
「はい!」
吉村が答えた。
「次は『少子高齢化』」
橘が言った。
「ここが本番よ」
「ああ」
藤堂が頷いた。
「ここから一気に攻める」
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【その日の夜・書斎】
「明日は『少子高齢化問題』ね」
アルが言った。
「少子化は『個人の問題』ではない」
「『構造の問題』よ」
が担うという発想から転換しなければならない」
藤堂が言った。
「子育てを社会全体が助けるという姿に変えていく」
「ということだな」
「その通りよ」
アルが頷いた。
「明日も頑張ってね」
「任せてくれ」
藤堂が微笑んだ。
窓の外、東京の夜景が広がっていた。
*政治資金問題*
*第一戦は勝った*
*次は少子高齢化*
*ここが本当の勝負だ*
藤堂は決意を新たにした。
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2.少子高齢化
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【テレビ局・特設スタジオ】
総裁選テレビ討論・第二夜。
テーマは——「少子高齢化」
国民の関心が最も高く、候補者の"本気度"が問われるテーマ。
「それでは討論を始めます」
司会者が言った。
「まずは諏訪部候補から」
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【諏訪部泰介】
諏訪部は、胸を張ってマイクを握った。
「少子化の原因は簡単や」
諏訪部が言った。
「若いもんが『結婚せん』『子どもを産まん』からや」
「昔はな、男は働き、女は家庭を守った」
「それでうまくいっとったんや」
スタジオがざわつく。
「しかし、現代では共働きが主流で——」
司会者が言いかけた。
「だから少子化になるんや」
諏訪部が遮った。
「家庭を大事にせんと、国は続かん」
「私は『家族の価値』を取り戻す政策を進める」
諏訪部が続けた。
「保育所より、家庭や」
「デジタルより、人のつながりや」
「じいじ、ばあばがおるやないか」
「孫の面倒は喜んでみてくれるやろ」
記者席の空気が重くなる。
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【結城宏明】
「では結城候補」
司会者が聞いた。
結城は、落ち着いた声で語り始めた。
「少子高齢化は、複合的な問題です」
結城が言った。
「結婚、出産、教育、住宅、雇用...」
「すべてが絡み合っています」
「私は、財源を再配分し、子育て世帯への支援を強化します」
「保育士の待遇改善、教育費の軽減、住宅支援の拡充...」
「具体的な財源は?」
司会者が聞いた。
「既存の予算を丁寧に見直します」
結城が答えた。
「急激な改革は混乱を招きますから」
「少子化は一朝一夕では解決しません」
「現実的なステップを積み重ねることが大事です」
無難。
安全運転。
だが、未来を感じさせない。
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【藤堂誠司】
「では藤堂総理」
司会者が聞いた。
「少子高齢化について、どうお考えですか?」
「少子化の最も力強い指標である出生率は」
藤堂が言った。
「社会が持続しえないところまで低下しているのに」
「その責任を女性にだけ被せる風潮から抜け出せません」
「少子化は『個人の問題』ではありません」
藤堂が続けた。
「『構造の問題』です」
スタジオが静まり返る。
「結婚したくてもできない」
「子どもを産みたくても産めない」
「育てたくても育てられない」
「その原因は『社会の側』にあります」
藤堂が力を込めた。
「人口減少を止めるには」
「女性を主人公にする社会を創る必要があります」
「では、何を変えるべきだと?」
司会者が聞いた。
「三つあります」
藤堂が答えた。
「一つめは、子育ての『固定費』を下げる」
「教育費、住宅費、保育費」
「これらを大胆に軽減する」
「女性の正社員化を進めながら教育費負担を軽減し」
藤堂が続けた。
「子育て世帯の家賃補助」
「育児休暇や保育サービスの充実など」
「子育てできる環境を整えることが不可欠です」
「二つめは、働き方を変える」
「リモートワーク、フレックス、副業解禁」
「育休の男女平等化」
「『子育てしながら働ける社会』を今よりもっと拡充します」
「三つめは、デジタルで子育てを支え」
藤堂が続けた。
「少子化による労働者人口の減少に対応する」
「子育てに関しては、行政手続きの完全オンライン化」
「AIによる育児相談、子育て支援の自動給付などにより」
「『手続きの負担』をゼロにする」
「また、AIテクノロジーを最大限活用して」
「単純作業や繰り返し作業は人手から解放するという」
「業務改革を徹底的に行う必要があります」
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【反論と議論】
諏訪部が鼻で笑った。
「デジタル、デジタルって...」
諏訪部が言った。
「子育ては機械でできるもんやないぞ」
「もちろんです」
藤堂が答えた。
「しかし『手続きの負担』は機械で減らせます」
「親が子どもと向き合う時間を増やすために」
「デジタルは必要なんです」
結城は、苦笑いを浮かべている。
「少子化は『未来の問題』ではありません」
藤堂が続けた。
「『今の問題』です」
「だから、今すぐ動くべきです」
スタジオの空気が変わった。
藤堂の言葉は、まっすぐに視聴者へ届いていた。
「諏訪部候補、いかがですか?」
司会者が聞いた。
「藤堂くんは、夢みたいな話ばっかりや」
諏訪部が言った。
「そんなに簡単に社会は変わらん」
「少子高齢化は、我が国で今最も深刻な問題です」
藤堂が答えた。
「『子供をみんなでサポートする』という政策に転換して」
「『育児は母親の仕事』という風潮は完全に消し去る必要があります」
「男性の育児参加は言うまでもなく」
藤堂が続けた。
「親世帯を含めて周りのみんなが応援するという空気が」
「自然に生まれるような社会に変えていく必要があります」
「若いのう...」
諏訪部が呟いた。
「若いからこそ、未来を語れるんです」
藤堂が答えた。
「まあまあ、お二人とも」
結城が割って入った。
「現実的な落としどころを——」
「結城さん」
藤堂が遮った。
「『落としどころ』では、少子化は止まりません」
結城は言葉を失った。
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【討論会後・官邸】
「...今日も良かったですね」
橘が言った。
「そうか?」
藤堂が聞いた。
「諏訪部さんの昭和論を完全に封じて」
橘が微笑んだ。
「結城さんの制度論も上書きした」
「あなたの『未来像』が一番鮮明だったわ」
「ありがとう、橘さん」
藤堂が言った。
「明日もその調子で頑張ってくださいね」
橘が言った。
そこへ吉村が駆け込んできた。
「総理!」
吉村が興奮した声で言った。
「SNSで『藤堂総理の少子化対策が現実的すぎる』って」
「トレンド入りしています!」
「そうか」
藤堂が言った。
「だが、まだ序盤だ」
「次は『デジタル化』」
橘が言った。
「これで一気に差をつけましょう」
「ああ」
藤堂が頷いた。
「一気に攻める」
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【その日の夜・書斎】
「明日は『デジタル化・技術革新の遅れ』ね」
アルが言った。
「諸外国に後れをとっているデジタル化を本気で進めないと」
「日本の未来はないわ」
「そうだな」
藤堂が頷いた。
「この『デジタル化』は、3日間の議題すべてに関わりがあるキーワードなんだ」
「もし、こんな質問があったら...」
アルが言った。
今日も遅くまで、想定問答の確認を行った。
窓の外、東京の夜景が広がっていた。
*少子高齢化*
*第二戦も勝った*
*次はデジタル化*
*ここで決める*
藤堂は決意を新たにした。
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3.デジタル化・技術革新の遅れ
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【テレビ局・特設スタジオ】
総裁選テレビ討論・第三夜。
テーマは——「デジタル化・技術革新の遅れ」
このテーマは、三者の"時代感覚"が最も鮮明に出る。
「それでは討論を始めます」
司会者が言った。
「まずは諏訪部候補から」
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【諏訪部泰介】
「私は、デジタル化がそんなに大事とは思わんのや」
諏訪部が言った。
「役所の手続きは窓口でやるもんや」
「顔を合わせて話すからこそ、信頼が生まれる」
「機械に任せてええことと、あかんことがある」
「しかし、行政のデジタル化は国際的にも遅れています」
司会者が言った。
「遅れとるんやなくて、丁寧なんや」
諏訪部が答えた。
「日本は慎重な国や」
「それでええんですわ」
視聴者の反応が、画面下のSNS欄に流れ始める。
《昭和すぎる》
《窓口で待たされるの嫌なんだが》
《デジタル化反対の総裁とか終わってる》
諏訪部は気づかない。
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【結城宏明】
「では結城候補」
司会者が聞いた。
結城は、落ち着いた声で語り始めた。
「デジタル化は必要です」
結城が言った。
「しかし、急激な改革は混乱を招きます」
「まずは、既存のシステムを丁寧に見直し」
「段階的に移行することが重要です」
「地方自治体の負担も考慮しなければなりません」
「具体的には?」
司会者が聞いた。
「専門家会議を設置し、ロードマップを作成します」
結城が答えた。
「拙速な改革は避けるべきです」
視聴者の反応:
《また専門家会議》
《結城さんは「丁寧に見直す」しか言ってない》
《悪くないけど未来を感じない》
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【藤堂誠司】
「では藤堂総理」
司会者が聞いた。
「日本のデジタル化の遅れについて、どうお考えですか?」
「日本のデジタル化は」
藤堂が言った。
「『遅れている』のではありません」
「『止まっている』んです」
スタジオが静まり返る。
「先日も申しましたが」
藤堂が続けた。
「今回私のメインテーマはデジタル化です」
「このテレビ討論での3つの重要なテーマ」
「そのすべてにおけるキーワードなのです」
「行政手続きは紙」
藤堂が続けた。
「医療データはバラバラ」
「企業の生産性は伸び悩み」
「国際競争力は低下し続けている」
「では、何を変えるべきだと?」
司会者が聞いた。
「三つあります」
藤堂が答えた。
「一つめは、行政の完全デジタル化」
「紙とハンコの文化を廃止しなければなりません」
「役所に行かなくても、すべてオンラインで完結させる」
「二つめは、医療・教育・防災のデータ連携」
藤堂が続けた。
「命と未来を守る分野こそ」
「デジタルの力を最大限に使うべきです」
「三つめは、AIとロボットの社会実装」
「少子高齢化の日本こそ」
「世界で最もAIを活用すべき国です」
諏訪部が鼻で笑った。
「AI、AIって...」
諏訪部が言った。
「そんなもんに頼ってええんか?」
「頼るんじゃありません」
藤堂が答えた。
「『使う』んです」
「人間がやるべきことに集中するために」
結城は、苦笑いを浮かべている。
「デジタル化は、『未来のための投資』です」
藤堂が続けた。
「これをやらなければ」
「日本は世界から取り残されます」
スタジオの空気が変わった。
藤堂の言葉は、まっすぐに視聴者へ届いていた。
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【最終議論】
「諏訪部候補、いかがですか?」
司会者が聞いた。
「デジタル化というが、一気にやると大混乱になる」
諏訪部が言った。
「年寄りが戸惑うだけや」
「お年寄りには十分配慮しながら進めていきます」
藤堂が答えた。
「お年寄りこそデジタル化の恩恵を受けるべきなんです」
「お年寄りが暮らしやすい社会に変えていくことと」
藤堂が続けた。
「省力化、自動化による生産性の向上」
「これを同時に解決するキーワードがデジタル化なんです」
「まあまあ、お二人とも」
結城が割って入った。
「現実的な落としどころを——」
「結城さん」
藤堂が遮った。
「『落としどころ』では、世界に勝てません」
結城は言葉を失った。
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【討論会後・官邸】
今日も橘官房長官が出迎えた。
「総理、お疲れ様でした」
橘が言った。
「...ちょっとカッコよすぎじゃない?」
「そうか?」
藤堂が聞いた。
「諏訪部さんを完全に置き去りにして」
橘が微笑んだ。
「結城さんの制度論も上書きした」
「『未来を語れる総理』って、こういうことなのね」
「ありがとう、橘さん」
藤堂が言った。
「テレビ討論会は、自信たっぷりに受け答えする総理の姿を」
橘が続けた。
「印象付けることができて大成功だった」
「これで最初の山場は乗り越えられた」
「藤堂さんなら問題ないと思っていたわ」
橘の表情が真剣になった。
「でも、総裁選挙は全国民が投票する衆議院選挙とは違う」
「藤堂総理もわかってるでしょ」
「国民の支持率がいくら高くてもだめってことを」
「派閥の力は強大よ」
橘が続けた。
「これまでも、若手候補がことごとく派閥の力学の前に敗れ去っている」
「だから、諏訪部さんは憎らしいほど余裕があるわ」
「わかっていますよ、橘さん」
藤堂が答えた。
「国民の支持率がそのまま得票につながるかどうかわからない」
「でも、党内の皆さんも私のやっていることを見ているはずです」
「私は信じています」
橘は複雑な面持ちで藤堂を見ていた。
「藤堂総理はいつも私をドキドキさせる」
橘が小さく呟いた。
「不安で眠れないのは私だけなのかしら?...」
「大丈夫ですよ」
藤堂が微笑んだ。
「私は勝ちます」
*絶対勝たなければいけない*
藤堂は心の中で誓った。
*誠司さんと約束したのだから*
*ここで総理大臣を退陣するわけにはいかない*
窓の外、東京の夜景が広がっていた。
*テレビ討論は勝った*
*でも、本当の戦いはこれからだ*
*派閥の力*
*それを覆す*
藤堂は決意を新たにした。
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第14話 完
次回:第15話 「最終決着」
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