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第13話「二度目の総裁選」

________________________________________

1. 再選の火蓋

________________________________________

【総理官邸・執務室】


春の午後。

官邸の窓から差し込む光が、藤堂の机の上に積まれた資料を照らしていた。

「総裁選が近くなってきたわね」

アルが言った。


「そうだな」

藤堂が答えた。

「準備をしないといけない」

「総裁の任期は3年」

藤堂が続けた。

「もうあれから3年経ったのか。早いもんだな」

「ということは、俺のこの世での任期は...」

藤堂は首を振った。

「いや、そのことは考えないことにしよう」

「でも、この3年は突っ走ってきたな」


「よくやっているわよ」

アルが言った。

「内閣支持率も70%前後を維持してる」

「前回は、『藤堂プラン』に従っての出馬タイミングと持田派閥の支持が大きかった」

藤堂が振り返った。


「前回は"偶然の勝利"だった」

アルが言った。

「スキャンダルで大物が出馬を見送り」

「あなたは"無難な若手"として選ばれた」


「だが今回は違う」

藤堂が力強く言った。

「俺は総理として結果を出した」

「今回は実力で勝負だ」

「そして...本気で改革を進めたい」


「その覚悟、伝わってるわ」

アルが頷いた。

「国民の支持率に現れている」

「ただし——」


「党内は違う、だろ?」

藤堂が先に言った。

アルは頷いた。

「あなたの改革姿勢は、保守的な議員たちには"危険"に見える」

「彼らは現状維持を望んでいる」


「だからこそ、総裁選で正面からぶつける」

藤堂が言った。


「"日本を変える覚悟"を示す」

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【翌日・官邸】


「アル、今回2度目だけど」

藤堂が言った。

「改めて総裁選準備について『藤堂プラン』を確認しよう」


「そうね」

アルが画面に表示した。


《藤堂プラン・総裁選準備》

1. "票読み班"の設置(極秘)

2. 推薦人20人の確保

3. メディア戦略立案

4. 地方組織の掌握

5. 資金調達

6. 敵陣営の分断工作

7. 決選投票の布石

8. 人事構想の準備(極秘)


「1の"票読み班"の設置と2の推薦人20人の確保は、橘さんにお願いしよう」

藤堂が言った。

「4の地方組織の掌握と5の資金調達は吉村さんだな」

「8の人事構想の準備は、橘さんと相談しながら決める」

「あとはアルと私で考えよう」

________________________________________

【同日夕方・官邸】


総裁選準備に関して、橘官房長官、吉村秘書を交えて意見交換していた。

「橘さん」

藤堂が言った。

「次の組閣について相談したい」


「閣僚は留任で?」

橘が聞いた。

「ええ」

藤堂が頷いた。

「ただ、前回支援してくれた持田派閥から指名した二議員は交代させます」


「幹事長は?」

橘が聞いた。

「新しい人を考えています」

藤堂が言った。

八重樫(やえがし)(じん)さん、どう思いますか?」

昨晩、『藤堂プラン』のリストからアルと二人で選んでいた。

「八重樫議員...」

橘が考えた。

「能力は高いわね。経験も豊富で政策通」

「ただ、あなたとは真逆のタイプだから」

「あなたと反りが合うかどうか...」


「だからこそ、いいんです」

藤堂が微笑んだ。

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【八重樫仁の人物像】


八重樫仁、54歳。

能力が高く、リーダーシップもあり、大臣経験もある。

慎重で、分析に基づいて動くタイプ。

派手さはないが、政界での信頼は厚い。

彼も藤堂誠司と同じく、大きな志を抱いて政治家になった。

「日本を変えたい」と。

しかし、藤堂のように思いのまま突き進むタイプではなく、事前に十分検討し、実現可能な場合や失敗の確率が低い場合にのみ実行に移す。

そういうやり方を通してきた。

今まで何度か総裁候補として名前が挙がったが、本人は「今はそのタイミングではない」と名乗りを上げることはなかった。

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【その日の夕方・官邸】


打ち合わせが一通り終わった頃。

情報通の永山議員が訪れた。


「藤堂総理」

永山が小声で言った。

「まだ噂の段階なのですが...総裁選のことです」

「さすが永山さん」

藤堂が微笑んだ。

「情報が早いですね。何かわかりましたか?」


「総理もご存じの通り」

永山が説明を始めた。

「安住派は先般の裏金問題で解体して、所属議員はバラバラになっています」

「藤堂先生の前の伊吹元総理の派閥では、八重樫さんに出馬要請があったのですが」

「辞退された模様です」

「結局、裏金問題では疑惑が残ったものの追求を逃れた諏訪部派の諏訪部泰介さんと」

「裏金問題に関わらなかった若手の結城宏明さんの」

「お二人が出馬の意向を固めているようです」

「今のところの話ですが」


「ありがとうございます」

藤堂が言った。

「いつも情報をいただき助かっています」

「また何か動きがありましたら、是非教えてください」


「かしこまりました」

永山が頷いた。

「引き続いて探りを入れておきます」

永山議員はそう言うと、そそくさと執務室を後にした。

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【永山が去った執務室】


「戦う相手は2人」

アルが言った。

「諏訪部泰介、そして結城宏明」


「諏訪部泰介は大派閥の領袖」

藤堂が言った。

「党内では圧倒的だ」

「でも国民人気は最下位」

アルが続けた。

「"昭和の政治家"そのものだから」


「結城宏明は...どう見る?」

藤堂が聞いた。

「頭脳派。現実主義」

アルが答えた。

「あなたの改革を"理想論"と批判してくるでしょうね」

「だが、彼は本気で勝ちに来ているわけじゃない」

藤堂が言った。

「漁夫の利を狙っている」


「そう」

アルが頷いた。

「諏訪部とあなたが激しくぶつかれば」

「"無難な結城宏明"に票が流れる可能性がある」


藤堂は深く息を吸った。

「だからこそ、最初から全力で行く」

「今回は隠さない」

「俺の野望を——」


「"日本を変える"という野望ね」

アルが言った。

「ああ」

藤堂が頷いた。

「総裁選は、その第一歩だ」

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【幹事長打診・八重樫の事務所】


藤堂は自分のマニフェストを持って、八重樫の事務所を訪れていた。

「八重樫さん」

藤堂が言った。

「単刀直入に申し上げます」

藤堂は資料を閉じ、八重樫をまっすぐ見た。

「総裁選に勝った暁には、幹事長をお願いしたいのです」


八重樫は驚いたように眉を上げた。

「...私が、ですか?」

「はい」

藤堂が答えた。

「私は派閥に属さず、組織力も弱い」

「だからこそ、経験と調整力のある方が必要です」

「あなたの力を貸していただきたい」


八重樫は腕を組み、しばらく黙った。

「少し考えさせてください」

八重樫が言った。

「書類に目を通させていただきます」

________________________________________

【数日後・深夜の官邸】


壁の時計は、すでに午前0時を回っていた。

しかし、事務所の空気は、むしろ昼間より熱い。

机の上には、議員名簿、地方票の分析資料、メディア露出計画、そして極秘の「人事構想案」が広げられている。

橘官房長官が、鋭い目で資料をめくっていた。


「...これで"確実票"は58」

橘が言った。

「"流動票"が72」

「決選投票に持ち込めば、勝機はあります」


吉村秘書が頷く。

「地方票は藤堂先生が強い」

「問題は議員票をどこまで積み上げられるか、ですね」


藤堂は静かに資料を見つめていた。

その横顔には、覚悟と緊張が入り混じっている。


そこへ、ひとりの男が入ってきた。

「遅くなってすまない」

八重樫が言った。

「資料を一通り読んできたよ」


「八重樫先生」

橘が言った。

「お待ちしていました」

藤堂は立ち上がり、深く頭を下げた。

「来ていただき、ありがとうございます」


八重樫は微笑んだ。

「藤堂総理が本気で再選を目指すなら」

「私も腹を括らないといけないと思ってね」

八重樫が資料を取り出した。

「藤堂さんの今回のマニフェストだが」

「少しばかり意見を言わせてもらってもいいかな?」


「もちろんです」

藤堂が答えた。

「是非聞かせてください」


「まず、全体として総花的だ」

八重樫がはっきりと言った。

「あなたの主張の肝は何ですか?」

藤堂は一瞬、言葉を失った。

「藤堂さんのマニフェストなら」

八重樫が続けた。

「もっとびっくりするような内容なのかと期待していたのですが...」

「教育の完全無償化、このアイデア自体はいい」

「しかし財源が不明確だ。実現性に疑問符がつく」

「それから...」


八重樫は藤堂のマニフェストにある政策に対して、堂々と意見を述べた。

厳しい指摘だった。

一つ一つが的確で、容赦がない。


橘と吉村は、固唾を呑んで見守っていた。

藤堂は、黙って聞いていた。

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【八重樫の退室後】


「手厳しいわね」

橘が言った。


「いや」

藤堂が微笑んだ。

「指摘内容は、すべて的を射ていたよ」

「あの人を選んだのは正しかった」


橘は藤堂を見た。

*この人は、本当に成長している*

*Yes Manではなく、対等に議論できる相手を求めている*

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【翌日・官邸】


吉村秘書官が部屋に入ってきた。

「総理」

吉村が言った。

「党本部から連絡です」

「総裁選、正式に告示されました」


藤堂は立ち上がった。

「行こう」

「ここからが本当の戦いだ」


「あなたの改革が試されるわね」

アルが言った。


「試されるのは...」

藤堂が言った。

「この国の未来だ」


藤堂は官邸を出て、党本部へ向かった。

その背中には、確かな覚悟が宿っていた。

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2.告示日:候補者記者会見

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【与党本部・大会議室】


総裁選告示日。

党本部のロビーは、朝から報道陣で埋め尽くされていた。

フラッシュの光。

記者たちのざわめき。

テレビカメラの赤いランプ。

その中心に、3つの演台が並んでいる。

• 藤堂誠司

• 結城宏明

• 諏訪部泰介

三者三様の戦いが、いま幕を開けようとしていた。

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【諏訪部泰介】


最初に姿を現したのは、大派閥の領袖、諏訪部泰介だった。

背後には、ずらりと並ぶ派閥議員たち。

その数、圧巻。


「皆さん」

諏訪部が低く太い声で言った。

「本日はお忙しい中、ありがとうございますなぁ」

昭和の政治家そのもの。

「わしはね、経験こそ政治の全てだと思っとる」

諏訪部が続けた。

「この国は、急激な変化に耐えられるほど柔軟ではない」

「守るべきものを守りながら、少しずつ前へ進めばええんですわ」


記者が質問した。

「デジタル化については?」

「あんなもん」

諏訪部が鼻で笑った。

「若いもんが勝手にやっとるだけや」

「国民全員が使えるわけでもない」

「わしは、地に足のついた政治をやるだけですわ」


*完全に"昭和"だ*

記者たちの間に、そんな空気が流れた。

だが、党内の議員たちは満足げに頷いている。

序盤は諏訪部が圧倒的優勢。

それが誰の目にも明らかだった。

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【結城宏明】


次に登場したのは、スーツの襟を整えながら歩み出た男——

結城宏明。

元官僚で、数字に強い。

だが、迫力はない。


「私は、現実的な改革を進めたいと考えています」

結城が言った。

「大きな変化は混乱を生む」

「しかし、現状維持では国は沈む」

「その中間を、私は目指します」


記者が質問した。

「藤堂総理の"大胆な改革案"については?」

「気持ちはわかりますよ」

結城が答えた。

「ただ...簡単なことではないですよね」

*結城の常套句だ*

「改革には順番があります」

結城が続けた。

「焦ってはいけない」

「私は、着実に、確実に、できることから進めます」


無難。

安全運転。

敵を作らない。

だが、心を揺さぶる何かはない。

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【藤堂誠司】


そして——

会場の空気が変わった。

ざわっ、と記者たちが振り返る。

藤堂誠司が、静かに歩み出てきた。

背後には誰もいない。

派閥の議員も、取り巻きもいない。

ただ一人。

堂々と、まっすぐに。

その姿に、会場の空気が一瞬で引き締まった。

藤堂の主張内容は、八重樫議員の意見を参考に見直し済みである。


「本日はお集まりいただき、ありがとうございます」

藤堂の声は落ち着いている。

だが、その奥に熱がある。

「私は、今回の総裁選で"本気の改革"を掲げます」

藤堂が続けた。

「政治資金の透明化」

「行政のデジタル化」

「少子高齢化への抜本的対策」

「誰もが尻込みしてきた問題に、正面から取り組みます」

藤堂が力を込めた。

「今回のメインテーマは、デジタル化です」


*これが肝ですよ、八重樫さん*


記者が質問した。

「党内には反発もありますが?」

「知っています」

藤堂が答えた。

「しかし、変わらなければならないのは"政治の側"です」

ざわめきが広がる。

「国民は、もう待てない」

藤堂が言い切った。

「私は、総裁選を"改革の入口"にします」

その瞬間、会場の空気が一変した。

諏訪部の"組織力"でもなく、結城の"安全運転"でもない。

藤堂誠司という"個の力"が、会場を支配した。

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【記者会見後・控室】


記者会見を終え、控室に戻った藤堂の前に、官房長官の橘麗子が腕を組んで立っていた。

「...ずいぶん強気に出ましたね、総理」

橘が言った。

「あれくらい言わないと、伝わらないだろ」

藤堂が答えた。

橘はため息をつき、しかし口元はわずかに緩んでいた。

「自信満々ね」

「でも...あなたならやれると思っているわ」

「ありがとう、橘さん」

藤堂が微笑んだ。

「ただし、党内は荒れるわよ」

橘が真剣な顔になった。

「諏訪部さんは本気で潰しに来る」

「結城さんは静かに票を集める」

「あなたは...孤立無援よ」

「孤立は慣れてる」

藤堂が言った。

「無援は...橘さんがいるから大丈夫」

橘は一瞬だけ目をそらし、小さく咳払いした。

「私は官房長官として、心配して言ってるだけよ」

藤堂は心の中で笑った。

「吉村秘書も準備に忙しそうですね」

橘が続けた。

「次はテレビ討論会」

「あなたの"本気"を見せる時ね」

「ああ」

藤堂が頷いた。

「ここからが本当の戦いだ」

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【その夜・書斎】


「記者会見は落ち着いていたわね」

アルが言った。

「今日は顔見せだけだ」

藤堂が答えた。

「相手が動き出すのはこれからだ」

「自分を信じて、自分らしくやっていくだけだ」

「まだ1日目がスタートしたばかり」

アルが言った。

「今日は早めに休んだら」

「そうしよう」

藤堂が微笑んだ。


窓の外、東京の夜景が広がっていた。

*総裁選*

*ここから本当の戦いが始まる*

藤堂は決意を新たにした。

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3.派閥の動きと裏交渉

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【自民党本部・諏訪部派閥控室】


告示から一夜明けた朝。

党本部の一角にある大派閥の控室では、すでに"戦争"が始まっていた。


諏訪部泰介は、分厚い革張りのソファに腰を下ろし、葉巻をくゆらせながら言った。

「...藤堂を勝たせるわけにはいかん」

周囲に並ぶ派閥議員たちは、一斉に頷いた。

「総理の改革姿勢は、我々の地盤を揺るがします」


議員の一人が言った。

「デジタル化なんて、地方の後援会がついていけません」

別の議員が続けた。

「党内の秩序が崩れます」

さらに別の議員が言った。


諏訪部は鼻で笑った。

「あいつは"理想"ばかり語りおる」

「政治はな、理想で動くんやない」

「金と組織で動くんや」

葉巻の煙が、ゆっくりと天井へ昇っていく。

「まずは...票固めや」

諏訪部が続けた。

「うちの派閥は全員、わしに入れる」

「異論はないな?」

議員たちは一斉に頭を下げた。


「次に、結城や」

諏訪部が言った。

「あいつは無難で扱いやすい」

「藤堂と票を食い合うよう、うまく誘導せえ」


「...結城陣営に接触します」

議員の一人が答えた。

「頼んだで」

諏訪部が頷いた。


「この総裁選、勝つのは"経験"や」

「若造の理想論に負けるわけにはいかん」

その言葉には、昭和の政治家の"重さ"があった。

________________________________________

【結城宏明陣営・ホテルのラウンジ】


同じ頃。

結城宏明は、ホテルのラウンジで数名の中堅議員と静かに話していた。


「...藤堂さんは、確かに人気があります」

結城が言った。

「しかし、人気と政治は別です」

「あなたはどう戦うつもりですか?」

議員の一人が聞いた。

結城は微笑んだ。

「私は、敵を作りません」

「派閥にも、若手にも、ベテランにも」

「"誰も傷つけない改革"を掲げます」

「...つまり」

別の議員が言った。

「藤堂さんと諏訪部さんがぶつかるのを待つ?」

「私はただ」

結城が答えた。

「"現実的な選択肢"としてそこにいるだけです」

その言葉は、まるで霧のように曖昧で、しかし確実に議員たちの心に入り込んでいった。

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【総理官邸・執務室】


藤堂は、机の上に広げられた資料を見つめていた。

そこへ、吉村秘書が駆け込んできた。

「総理...!」

吉村が息を切らせた。

「諏訪部派が、結城陣営に接触しています」

「"藤堂包囲網"を作るつもりです」

「...来たか」

藤堂が静かに言った。

「このままでは、議員票が厳しいです」

吉村が続けた。

「党員票では勝てても、決選投票で議員票に押し切られる可能性が...」


藤堂は静かに目を閉じた。

「わかってる」

「だが、私は派閥に頼るつもりはない」

「しかし...!」

吉村が言いかけた。


そのとき、ドアが開いた。

橘官房長官が入ってきた。

「吉村さん、少し落ち着いて」

橘が言った。

「官房長官...」

吉村が振り返った。

橘は藤堂の前に立ち、腕を組んだ。


「藤堂総理」

橘が言った。

「"孤立無援で戦う"なんて格好つけてる場合じゃないですよ」

「橘さん...」

藤堂が言った。

「諏訪部さんは本気で潰しに来る」

橘が続けた。

「結城さんは静かに票を集める」

「あなたは...正面から殴り合う気?」

「殴り合うつもりはない」

藤堂が答えた。

「ただ、逃げる気もない」

橘はため息をついた。

「あなたはそう、いつも自信満々...」

藤堂は微笑んだ。


「ただし、戦略は必要よ」

橘が真剣な顔になった。

「"改革派の若手"をまとめる」

「"無派閥の中堅"を説得する」

「"地方の党員"に直接訴える」

「これを全部やらなきゃ勝てない」

「わかってる」

藤堂が頷いた。


「吉村さん、準備を頼む」

「はい、総理!」

吉村が答えた。


橘は藤堂の横に立ち、小さく呟いた。

「...あなたの戦いは、ここからよ」

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【その夜・官邸の屋上】


藤堂は一人、夜風に吹かれていた。

東京の街の灯りが、遠くまで広がっている。


「明日は政治資金問題ね」

アルが言った。

「これは時間をかけて議論してきた問題だから、大丈夫よね」

「大丈夫だ」

藤堂が答えた。

「...諏訪部、結城、相手にとって不足はない」

胸の奥に、確かな熱が灯っていた。

「ここで勝つ」

藤堂が拳を握った。

「この国を変えるために」

夜空に向かって、藤堂は静かに拳を握った。


*総裁選*

*ここからが本当の戦いだ*

藤堂は決意を新たにした。

________________________________________

第13話 完

次回:第14話「テレビ討論」 

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