表情筋を殺す方法ないかなぁ
管理者が来るというアクシデントはあったが、それによって受付嬢はアマリアがもう管理者ではないことを理解してくれた。
すぐにロゼ姫とグレールを、俺たち黎明の探検者に入れる手続きをしてくれる。
今は、その処理が終わるのを待っているところなんだが……。
一つ、アマリアに聞きたいことがある。
隣で浮いているアマリアを見ていると、視線に気づいたのか「何?」と聞いてきた。
「なぁ。俺の時って、アマリアが直々にギルドに入る手続きをしてくれただろ?」
「そうだね」
「その前に、魔力量計測装置みたいなもので試験してたじゃんか。今回はそれ、やらなくていいのか?」
あの巨大なマウスピースに向かって魔法をぶっ放す試験。
あれをクリアしないとギルドに入れないんじゃなかったか?
「あぁ、それね」
アマリアは軽く頷いた。
「君が壊したから、やりたくても出来ないんだよ」
「え?」
「僕が作った機械で、僕にしか扱えないからね」
「じゃあ、今までどうやって試験してたんだ?」
「僕がギルドにいる時だけ受けられるようにスケジュールを組んでた。基本は一年に一回。あの機械が壊れてからは、簡易版でやってるはずだよ。壊されたから」
「…………悪かったって。本当に」
あの機械、俺の魔力が強すぎて壊しちまったんだよな。
懐かしい……。
「まぁ、ロゼとグレールは問題ないよ。強さは分かってるし、魔力量も大体把握してる。王の言葉もギルドに届いてるだろうし、普通に入れる」
なるほど。
これがコネ入社か。
実力はあるから、少し違う気もするけど。
そんな話をしていると、受付嬢が顔を上げた。
なぜか眉を下げて、言いにくそうな顔をしている。
「……あの。アマリア様は、いかがなさいますか? 管理者ではないのでしたら、ギルドへの入隊も可能だと思うのですが……」
「あ、それもそうだね」
アマリアはあっさり言った。
「僕の入隊手続きもお願いできる?」
「はい。ですが――」
受付嬢は少し困った顔になる。
「アマリア様もチームに入りますと、これ以上メンバーを増やすことが出来なくなります。よろしいでしょうか?」
……アマリアで定員オーバーか。
まぁ、これ以上増えても収拾つかなくなりそうだしな。
今のメンバーが一番気楽そうだ。
一応リーダーのアルカに確認すると、
「カガミヤの判断でいい」
と言われたので、問題ないと伝えた。
受付嬢はすぐに作業を進め、ロゼ姫、グレール、そしてアマリアの入隊が完了した。
「よし。これで一つ目の用事は終わりだな」
「そうですね!」
リヒトが元気よく頷く。
「次はロゼ姫様とグレールさんの戦闘衣装ですよね?」
「あぁ、そうだったな」
武器屋へ向かいながら、後ろの二人に聞く。
「ロゼ姫とグレールは、何かイメージしてる装備とかあるのか?」
二人は少し考え込んだ。
まぁ、すぐに決まるものじゃないよな。
グレールはともかく、ロゼ姫はどうするか……。
「私は今と同じで構いません」
先に答えたのはグレールだった。
「近距離戦を主に行う予定ですので、防御力の高い衣装が望ましいです。武器に関しては、作り出せますので必要ありません」
……しっかりしてるな。
問題はロゼ姫だ。
リヒトとの模擬戦を見る限り、魔法中心だったよな。
俺と似たタイプ。
なら――
魔法を使いやすい装備が必要か。
「私は……お任せしたいです」
ロゼ姫は少し申し訳なさそうに言った。
「戦闘の知識がないので、よく分からなくて」
まぁ、そうなるよな。
……俺も戦闘知識ないけどな?
ただ、今までゴリ押ししてきただけで。
考えながら歩いていると、武器屋と防具屋に到着した。
やっぱり、この二つは隣同士にある。
探し回らなくて済むから助かる。
なんとなく防具屋に入り、中へ。
すると、店員がロゼ姫とグレールを見て、急に笑顔になった。
「あ、ロゼ姫様。グレール様。お待ちしておりました」
……ん?
「少々お待ちください」
そう言うと店員は奥へ。
何も説明してないのに、なんだ?
皆で顔を見合わせていると、すぐ戻ってきた。
大きな風呂敷を抱えて。
「王妃様からお預かりしております。ロゼ姫様とグレール様が来られましたら、お渡しするようにと」
グレールが風呂敷を受け取る。
「…………」
「ぼーっとしてないで開けてみろ。王妃からなら怪しい物じゃないだろ」
「わかりました」
グレールはその場にしゃがみ、風呂敷を開いた。
中に入っていたのは――
服。
しかも二人分。
「……これは、ロゼ姫とグレールの戦闘服か?」
「「え?」」
二人は驚きながら服を手に取った。
ロゼ姫の装備は、
細身のズボンにワイシャツ。
長めの上着……か?
なんか、貴族みたいな感じだ。
あっ、貴族か。
色は、オスクリタ海底をイメージしているのか、青が基調。
グレールの服も似ているが、短めのマント。を肩にかけている。
……ペアルック?
「せっかくだし、着てみたらどうだ?」
「試着室あるのでしょうか」
「はい、あります! 奥の部屋をお使いください!」
二人は、少し照れながら奥へ向かった。
「楽しみだな!」
「絶対似合いますよ!」
アルカとリヒトがワクワクしている。
まぁ……確かに気になるな。
「知里も楽しみなの?」
「まぁな。上質そうな生地だったし、模様も細かく刻まれているように見えた。ラメも入っていたし、いくらなんだろうと考えてた。よくわかったな」
「さすがにそこまでは予想してなかったよ。顔に出ていたから、楽しみなのかと感じただけ」
「え、マジか……」
頬を触る。
……よく分からん。
「表情筋、柔らかくなったよね。天然二人は気づかないレベルだけど」
「……まぁいいわ」
この世界に来てから、色々なことがあった。
アルカやリヒトみたいな純粋な奴らと、こんなに長く一緒にいることも今までなかった。
それが影響しているのかもしれない。
「あ、また笑ってる」
「表情筋、もっと殺してくるわ」
「殺さないで鍛えてあげなよ」
「断る」
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