まさかここで新たな管理者と出会うなんて思わないだろう
ロゼ姫とグレールは、俺たち黎明の探検者に入ることになった。
そのため、これからギルドに行って申請をしないといけない。
ついでに、ロゼ姫とグレールの戦闘服も買う予定だ。
金はもちろん――
俺たちのではなく、ロゼ姫の親が出してくれるらしい。
……良かった。本当に良かった。
俺たちは六人でギルドへ向かい、無事に到着した。
受付嬢に「ロゼ姫とグレールを仲間にしたい」と伝えると、なぜか受付嬢の思考が停止した。
いや、それだけじゃない。
俺の隣で浮いているアマリア。
それも気になっているんだろう。
受付嬢は口をあんぐりと開けたまま、こちらを見続けている。
「なぁ、アマリア。本当に姿を消すことって出来ないのか?」
「さすがに無理だね。君の魔法でどうにか出来るなら、やってみてよ」
……このクソが。
ごほん。まぁいい。
「おい、受付嬢。早くロゼ姫とグレールを俺たち黎明の探検者に入れる手続きをしてくれ」
「……あ、は、はい。えっと、黎明の探検者に入るのは、ロゼ姫様とグレール様、お二人でよろしいのでしょうか」
……ん?
やっと動き出したと思ったら、またアマリアを見た。
ま、まさかこいつもグルか?
俺たちに余計なことをしようとか考えてないだろうな……。
……いや、さすがにないか。
今まで受付嬢絡みで色々あったから疑心暗鬼になっちまった。
「なぁ、なんでさっきからアマリアを見てるんだ? 言っておくが、アマリアはもう管理者の立場じゃない。怖いことなんて何もない。ただの少年だ」
「え、え!? 管理者ではない!?」
……あ。
そういえば、アマリアが管理者を追放されたこと、まだ通達されていないのか。
アマリアも今思い出したらしく「あっ」と間抜けな顔をしている。
……待てよ。
まさかこいつ。
ロゼ姫たちが準備している間、自分の後始末を一切やってないのか?
「すっかり忘れてたね。でも、そういうのは僕じゃなくて、残っている管理者がやってくれるはずなんだけど。おかしいな」
「まぁ確かに……残っている管理者がやるのが普通だが、やりそうな奴いるのか?」
「僕がほとんど後始末やっていたこと、今思い出したよ」
「やる奴いないじゃねぇか」
俺がアマリアの肩をぽんと叩いた時だった。
警備員らしき服装の男が、慌てた様子で駆け寄ってきた。
……なんだ?
妙に怯えている顔だ。
何かから逃げてきたような。
「あ、あの……ロゼ姫様」
「どうしました?」
「管理者様がお見えです。ダンジョンを管理している……フィルム様です」
……え?
なんでここに?
警備員の後ろの方が騒がしい。
困惑や恐怖の視線が、一人の人物に集中していた。
黒いローブ。
フードから深緑色の髪が見える。
そいつはまっすぐ俺たちの方へ歩いてきた。
……アマリア狙いか?
それとも俺か。
アマリアを後ろに下げ、魔導書に手を添える。
すると向こうもこちらに気づいたらしい。
黄緑色の瞳と目が合う。
「……知里、見つけた」
「俺を探してたのかい? 残虐非道な管理者さん」
「違う」
「違うんかい」
俺じゃない?
じゃあ、やっぱりアマリアか。
「裏切り者、違う」
「……普通に文章で話してくれないか? なんで単語なんだよ」
「関係ない」
なんだこいつ。
顔を引きつらせていると、フィルムは俺の横を通り過ぎた。
……そして、なぜか受付へ。
何をするつもりだ?
警戒していたが、特に何も起こらない。
ローブから手を出し、丸めた紙を受付嬢に渡しただけだった。
「あ、あの……」
「渡した。用、終わり」
受付嬢は何か言いたげだったが、フィルムは無視して戻ってきた。
近くまで来て分かった。
……こいつ、ちっさ。
身長140ちょっとくらいか?
「裏切り者、始末」
「僕を始末するなら、いいよ」
アマリアが平然と言う。
「でも今、そういう指示出てるの? そもそも僕が生きてること知ってた?」
「知ってる。殺す」
「命令は出てるんだね。でも、今やるの? さすがにやりにくいんじゃない?」
フィルムは周囲を見た。
俺。
アルカ。
リヒト。
グレール。
ロゼ姫。
そして、無表情のまま言った。
「やらない」
「それなら良かったよ」
アマリアは軽く言う。
「今から帰るんでしょ?」
「……」
「睨まないでよ。何もしないから。ここにいても意味ないでしょ? 早く帰りなよ」
少し迷った後、フィルムは頷いた。
そしてそのまま――何事もなく去っていった。
……いや。
逆に不気味だ。
本当に何もしてないのか?
監視とか、仕掛けてないよな。
アマリアにされたみたいなのは勘弁だぞ。
「……ふぅ。今回は本当に、あれを渡しに来ただけみたいだね」
……あれ?
そういえば。
受付嬢は何を渡されたんだ?
受付嬢から紙を受け取り、確認する。
そこには――
アマリアが管理者を追放されたことが書かれていた。
しっかりと手形まで押されている。
「これで説明する手間は省けたね」
「みたいだな」
これでアマリアの追放は正式に通達された。
それはいいんだが……。
「今考えても仕方ないと思うよ」
アマリアが言った。
「今は知里の目的を達成しよう」
「……そうだな」
今難しいことを考えても仕方ない。
俺の目的は一つ。
かねっ――じゃなかった、カケルの封印解除だ。
そのために、俺たちは動く。金のため――じゃない、自由のため……でもなく、カケル封印解除のために。
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