やるしか道はないのなら、もう流れと勢いに任せるしかない
「カガミヤさん、あの……」
「ひとまず、アマリアに言われた作戦は実行するぞ。リヒトはフェアズを鎖魔法で捕まえる事に集中してくれ」
「は、はい」
とはいえ、俺の魔力も少なくなってきた。
そんな、数多くの魔法が放てない。
くそ、厄介なことになった。
「知里。さっき言っていた作戦、まだ続けられるの?」
「やるが、リンクの魔法は最後に取っておきたいから、ガトリング砲攻撃はもう使えない。他の方法でフェアズを追い込め、リヒトの鎖魔法で捕まえる」
「わかった。それなら、二人にも伝えようか。――――|imagination」
なんだ、その魔法。
不思議に思っていると、アルカは驚きで目を開き、グレールは冷静に「頑張ってください」と、俺達を応援した。
な、なに?
「二人に詳しく作戦を伝えた。頭に直接」
「へぇ……」
音魔法って、そんな事も出来るんだ、すげっ。
『何を企んでいるのかわからないけれど、今更無駄よ。私の魔力はここに居る誰よりも強い』
「それはどうだか。言っておくが、魔力が多ければ多いほど良いという訳ではないぞ。魔力は適度が一番調整しやすいし、扱いやすい」
多すぎても慣れなければ使いにくいしな。
最初は俺も、自身のチート魔力に悩まされ――今もだわ。
『負け犬の遠吠えかしら?』
「それでもいいよ。負け犬だろうとなかろうと、結果がすべてだ」
『それに関しては、同感ね』
空気が、変わる。
フェアズも、動き出すようだな。
それぞれが構える。
最初に動き出したのは、機動力のあるアルカ。次にグレールが走る。
二人が木を使い、空中にいるフェアズに向けて跳びあがった。
『無防備に私へ近づいて来るなど…………』
「無防備なわけないだろ!!!」
アルカの手にはいつもの剣が握られている。
反対側から跳んでいるグレールも、同じく剣が握られていた。
どこ見て無防備と言ったのだろうか。
『無防備じゃない。武器なんて、どうせ無くなってしまうのだから』
言うと、フェアズが鞭を持っていない側の手を上げた。
すると、二人の背後から一本の蔓が伸びる。
「アルカ、グレール!! 背後!!」
――――ちっ、叫ぶが遅かった。
二人は手に握っていた剣が弾かれ地面に落ちる。
『これで、本当に無防備ね』
にんまりと口の端を上げ、鞭を持っている手を勢いよく振り上げた。
しなる鞭は、フェアズの動きに合わせ動き始める。
振り上げられる時、アルカが身軽な体を活かしふらりと躱せたが、上から叩き落される鞭までは避けられない。
フェアズがアルカをあざ笑うように見ると、弄ぶように振り下ろされた。
「grounddoll!!」
アルカが言うと、地面から大きな拳が現れ鞭をはじき返した。
『なるほど、まだ魔力が残っていたのね。でも、もう限界かしら?』
下から見ていてもわかる。アルカはもう限界が近い。
昨日から気を張っていただろうし、仕方がない。
「俺はまだいける!! 馬鹿にするな!!」
地面に着地し、木に捕まり待機していたグレールを見た。
もう、氷で新しい剣を作り出している。
また立ち向かうが、死角から襲う蔓によって二人はうまく動けない。
でも、隙は必ずできるはず、絶対に見逃さないからな。
『主……』
「準備は、いいな? 行けるな?」
『はい』
なんか、自信がなさそうだけど、頼むぞ。
「知里、準備は大丈夫?」
「な、なんとか、多分」
「……わかった。リヒトも、もう一度できる?」
アマリアからの質問に、リヒトは力強く頷いた。
リンクより心強い。
俺の隣に立ち、フェアズを見上げるリヒト。
フェアズは、先ほどの拘束魔法が頭の中に残っているのか、リヒトが動き出したことで、警戒を強めた。
捕まると何も出来なくなるし、もがいても無駄だからな。
『何をする気かわからないけれど、今の私には拘束魔法は無駄よ』
「それもそうだな。ただの拘束魔法なら、意味はないだろう」
『なら、何をする気なのかしら』
「なんだろうな、受けてみればわかるんじゃないか?」
俺の言葉で笑みを消し、煩わしいと目を細め見下ろしてきた。
『やっぱり、貴方を野放しにするわけにはいかないわね』
「その前に、お前。俺が大好きなのはいいが、いいのか? 他から目を離して」
『なっ――』
あいつの背後には、アルカが作った土人形が両手を上げ襲い掛かろうとしていた。
すぐにフェアズは気づいたみたいで、鞭で薙ぎ払い土人形を真っ二つにした。
だが、そこで安堵するのはまだ早い。
次に待っているのは、グレールの氷魔法。
アルカが土人形を出したのは、手の中にグレールを隠すため。
土人形が崩れ落ちる中、グレールが姿を現し地面に落ちていく土の塊を足場に、氷の剣を作りながらフェアズへと向かって行った。
グレールが自身の剣の届く距離まで行くと、横一線に振り払う。
だが、空中を自由に移動できるフェアズからしたら、簡単に避けられる。
『簡単なトラップね』
地面に落ちるグレールをあざ笑い、フェアズはとどめを刺そうと蔓を操作し始めた。
だが、今後の展開を知っているグレールからしたら、今のフェアズの行動は滑稽。笑みを返した。
なぜ笑っているのか分からず、蔓を操るために上げた左手を止める。
瞬間、隙を逃さぬように、フェアズの手に鎖が巻かれた。
『っ、なっ!?』
動揺の声を漏らし、すぐ俺の横にいるリヒトを見てきた。
「準備は、整った」
ここからは俺の出番、これで終わらせてやるよ。
「フェアズ、お前の自慢の魔力、俺も欲しいからくれよな」
リヒトが出している鎖を俺も握ると、リンクが覚悟を決めたように目を閉じ、力を増幅させた。
リンクの身体が神々しく輝き出すと、連動するように鎖も同じ輝きを放つ。
『な、なによこれ!!』
逃れようと藻掻くも、結果は先程と一緒。
簡単に振り払えず、腕に鎖が食い込む。
「リンク、頼むぞ」
『はい。管理者フェアズと主の魔力を繋ぎます』
――――っ、来た。
体に、大量の魔力が流れてくる。
『ま、魔力を繋げるですって!? そんなこと、出来る訳がっ――――』
「出来るんだよ。おめぇの魔力は、もう俺のもんだ。自由に使わせてもらうぞ」
スピリトが涎を垂らして俺に近付いて来る。
あはは、良かったな、オイシソウナマリョクダヨ。
「スピリト、お前の大好物の魔力、今日だけはたんまり食っていいぞ」
『ありがとうございます、ご主人様ぁぁぁああ!!!』
スピリトは大喜び、当たり前か。
こんだけ美味そうな魔力が大量に送られるのだから。
「んじゃ、すべてを吸収しろよ、スピリトちゃん」
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