風のように来て風のように去って行くんじゃねぇよこのやろう
「まだ、痕が残ってる」
「自業自得な気がするがな」
「なんでだよ…………」
昨日は、散々な目に合った。
今日は、気持ちを切り替えるためにアルカとリヒトと共にオスクリタ海底を散歩中。
未だにリヒトは不機嫌です。
どうすれば機嫌が直るんだよ。
甘い物でもあげれば機嫌が直るのか?
アルカも気まずそうだし、気分転換しようと散歩に出たのに意味ねぇじゃねぇかよぉ~。
「はぁ……ん?」
「な、なんだ?」
「?」
呆れながら歩いていると、オスクリタ海底を囲う海が急に波打ち始めた。
渦を、巻き始めた? 地震か? いや、そんなんで渦を巻くわけはない。
絶対に、自然では作り出せない動きだ。
「チサトさん!」
「あ、あれ? ロゼ姫にグレール? どうしたんだ?」
後ろから急に二人が走ってきた。
慌ててるな。海の流れが変わったから当然か。
「い、今すぐ逃げてください!!」
「え?」
ロゼ姫が叫んだ瞬間、《《操られているような動きをする水は、オスクリタ海底の透明の壁を突き破り》》、黒いローブを身に纏った二人組が侵入して来た。
「なっ!! って、はぁ!?」
なんで、なんで、今。ここに来るんだ?
なぜ、壁を壊してまで、無理やり侵入してきた。
「借りを返しに来たわよ、鏡谷知里」
「おいおい、こんなすぐに再開するとは流石に思わなかったぞ。アマリアに、フェアズ!!」
名前を呼ぶのと同時に、二人は顔を隠していたフードを取った。
フェアズは笑みを浮かべ、アマリアはいつもの無表情のまま、俺達を見下ろしてくる。
「乱暴な真似をしたことは謝るわ、ごめんなさいね。オスクリタ海底を壊すつもりはないから安心して?」
フェアズが言うように、穴が空いたところから水が入ってくるかと思いきや、何故か入ってこない。
目視出来ない壁が張られているのか、フェアズが水を操っているのか。
いや、フェアズの魔法は拘束系だと、アマリアが言っていた。
水タイプではないはず。なら、そうやってここまで来たんだ?
どういう訳かわからないが、今はどうでもいい。
早くこの場をどうにかしないと、被害が拡大してしまう。
周りは一般人に囲まれている。
守りながら管理者と戦わないといけないのか!?
周りを確認していると、フェアズが笑みを浮かべ、右手を上に振り上げた。
何か来る!!
そう思ったのもつかの間、地面が急に大きく揺れ始めた。
「地震!?」
グレールはロゼ姫を、アルカはリヒトを守る。
やばい、周りの奴らが次々倒れ込む。
俺も、立っていられねぇ!!
片膝をついて二人を見上げると、楽しそうに笑っているフェアズと目が合った。
「あらあら、阿鼻叫喚とは、まさにこのような光景を指すのかしら。面白いわね」
「フェアズ、無駄に魔力を使うことはないよ。早く、目標を連れて行こう」
「わかっているわよ。まったく…………」
アマリアとフェアズが少しだけ会話を交わすと、目線だけを泳がせる。
何を探しているんだ?
「目的の人物は――あら、見つけたわ」
一体、誰を──……
「最終目標は知里、貴方なのだけれど、今回は違うわ。この二人よ、|herbes fouet」
魔法を唱えると、俺の背後から大きな音が聞こえたため振り返る。
地面から、木の弦が大量に伸びてるだと!?
「な、なんだよこれ!?」
触手のようにうようよ動いていて気持ちが悪い。だが、見たところ普通の木の蔓。flameで簡単に燃やせるだろ!
俺が魔導書を開くと、フェアズはマイペースな口調で俺を止めてきた。
「炎魔法で燃やそうと考えていると思うけれど、やめておいた方がいいわよ?」
「はぁ? なんでっ―――?」
そういえば、俺の後ろにいたアルカとリヒトはどこ行った?
周りを見回してみても、グレールとロゼ姫しかいない。
「目標、確保。簡単に手に入れられて嬉しいわ」
声につられフェアズの方を向くと蔓に捕まり、身動きを封じられているアルカとリヒトがい……る?
「なんで、アルカとリヒトが捕まっているんだ……?」
二人は気を失っているのか、身動き一つしない。
蔓を燃やしてしまうと、アルカとリヒトにも被害が出る。
「おい!! そいつらを返しやがれ!!」
「それは難しい相談ね。私達がわざわざここまで来た意味がなくなってしまうわ」
「おめぇらの狙いは俺なんだろ!? そいつらは関係ねぇ、早く返せ!!」
「だから、無理よ、諦めて。もし返してほしかったら、明日までに地上にある熱帯森林、プルウィアにおいで。待っているわ」
はぁ!? なんだそこ、聞いたことすらねぇよ。
「っ、待ちやがれ!!!」
flameを右手に集め、空中にいる二人に放つ。
だが、簡単に避けられ二人は水に包まれ姿を消してしまった。
アルカとリヒトを連れて。
なんだよ、なんなんだよ。なんで、こんなことに。
俺を狙っているのなら、なんでアルカとリヒトを連れ去るんだ。
ふざけるな、あいつらに罪はないだろう。
いや、落ち着け。
あいつは今、明日までに来いと言っていた。
つまり、今は安全。殺す気はない。
「すぅ~、はぁ」
…………取り乱したが、何とか落ち着けた。
「チサトさん?」
不安そうにロゼ姫が俺を呼ぶ。
振り向き、不安そうな顔を浮かべている二人を見た。
「――――頼む、教えてくれ。熱帯森林、プルウィアって、どこにある?」
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