仲間を売ったわけではなく効率の良い選択をしただけだ
リヒトとロゼ姫が話していたことを、リヒトが掻い摘んで説明してくれた。
「私にロゼ姫様は言ってくださったのです。私たちのことを、“お互いに高め合い、支え合えるチーム”だと。その時ロゼ姫様は、“自分自身で感じて、冒険者の大変さを知り、命の大事さを感じたいのです”とおっしゃっていました」
「なるほど。俺たちと一緒に冒険者として動き、色々経験したいってことか。今の姫という立場では難しいが、俺たちと行動すれば問題ない……ってことか?」
俺の確認に、ロゼ姫は小さく頷いた。
「そうです」
「だが、それは難しいんじゃないか? まず、冒険者になることを親が認めてくれるのか?」
「チサト様が言ってくだされば、おそらく可能です」
「俺を利用するな」
こいつ、俺をまたあの地獄 のところへ行かせるつもりだ。
絶対に嫌だ。
もう二度と行きたくない。
………………九百万もらえるなら考える。
SSランクくらいの依頼内容だし、妥当だろ。
「ですが、私の魔法は多少役に立つと思いますよ?」
「確かに酸の魔法は強い。回復魔法もある。だがな……」
「私が行けば、グレールも同行できます」
「本人に確認せずに言っていいのか……?」
グレールを見ると、表情一つ変えずに頷いていた。
……まあ、分かってた。
「でもよぉ……」
問題はそこじゃない。
説得だ。
あの親を説得するのが、とにかく面倒くさい。
姫という立場なら融通が利くことも多いだろう。
グレールみたいな強い護衛もついてくる。
メリットは分かっている。
だが――説得がなぁ……。
「カガミヤ、そんなに大変な人なのか? 王妃様」
「そうだ。本当にたいへっ――……」
そこで、ふと気付く。
アルカとリヒト。
……こいつら、顔いいよな。
アルカはイケメンというより可愛い系。
リヒトも同じ。
王妃はイケメン好きらしいが、王はどちらかというと小柄で可愛い系の顔だった。
つまり――
可愛い系も好きな可能性がある。
……よし。
「アルカ、リヒト。お前らの出番だ」
「「…………え?」」
※
「む、無理無理無理!!!」
「何を考えているんですかカガミヤさん!! 私たちに王妃様の説得なんて絶対に無理ですよ!!」
「いける。お前らならいける。大丈夫だ、ただお願いするだけでいい」
「「絶対にむりぃぃぃいいいいい!!!」」
王妃と王の部屋の前まで来たものの、二人は頑なに扉を開けようとしない。
何度「大丈夫だ」と言っても怯えきっている。
……もう、力技で行くしかないか。
アルカとリヒト、そして俺の三人で取っ組み合いになっていると――
扉が開いた。
「何をしているのですか」
「「あっ…………」」
王妃だった。
取っ組み合いしている俺たちを、上から静かに見下ろしている。
これは……逃げた方がいいか?
「あ、あの……」
「す、すみません……」
アルカとリヒトは涙目。
そりゃそうだ。
王妃に無言で見下ろされているんだから。
俺はもうこの人の恐ろしさを知っているので、完全に虚無。
ただ意識が向かないことを祈るのみ。
そして――
王妃の口が開いた。
「…………貴方たち、なんて可愛いのぉぉぉお!!!」
――――――ぎゅっ!!!
「「え、ぇぇぇええ!?」」
王妃の意識がアルカとリヒトに向いた瞬間。
俺はその隙を縫って、その場から離脱。
よしよし。
おしくらまんじゅう状態の三人から脱出成功。
「はぁ……助かった」
「いえ、こちらも安全地帯ではありませんよ」
「え?」
……あれ?
グレールの顔が、少し青い?
表情は真顔だが、ゆっくりロゼ姫から距離を取っている気がする。
嫌な予感がしてロゼ姫を見ると――
あっ。
「お~か~あ~さ~ま~。アルカ様で我慢してください。リヒト様は私のですよ」
「あら、ロゼ。駄目よ。この子たちは私のよ。いくら娘でも譲れないわ」
「駄目です。私の方が先にリヒト様に出会ったのです。返してください」
「嫌よ。親孝行だと思いなさい、ロゼ」
「お断りします。早くリヒト様から手を離してください。今すぐに」
「嫌よ。絶対に嫌」
ロゼ姫はリヒトの手を掴み、王妃も離さない。
だがアルカも抱きしめられているため、身動きが取れない。
二人は涙目で俺に助けを求めてきた。
俺も助けを求めるように
アマリア、グレール、ヒュース皇子を見る。
――全員、一斉に顔を逸らした。
……うん。
これはもう。
アルカとリヒトに任せよう。
俺は二人に向かって、静かに親指を立てた。
「さて、あとは二人に任せて俺たちは寝るぞ」
「「「はーい」」」
「「待ってくださぁぁぁぁああああい!!!!」」
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