今はとりあえず役立たずって事な
俺たちは情報をもらうため、グランド国のギルドへ向かった。
「あ、こんにちは!! また来てくださったのですね!」
「あぁ。今回は、前に話した依頼を遂行するために来た」
「ですが、皆さんは現在護衛任務を遂行中のはずです。規定により、他の依頼は受けられませんよ?」
それは仕方ない。
情報だけもらえれば構わない。
そう伝えようとした瞬間、ヒュース皇子が一歩前に出た。
「その件については話が変わった。護衛任務は取り消し、新たに依頼を発注する」
「ヒ、ヒュース皇子がそう仰るのでしたら……」
受付嬢は目を伏せ、パソコンを操作し始める。
俺たちの護衛任務が取り消され、新たにモンスター討伐依頼が登録された――らしい。
九百万+五十万から、一千五百万になったってことか?
………………微妙。どっちも欲しい。どうしてもどっちもはもらえないのだろうか。
「すごく微妙な顔をしているが、どうしたんだ?」
「九百万+五十万から一千五百万に切り替わって微妙って顔していた。」
「一千五百万の方が金額は大きいだろう?」
「どっちも欲しいんだよ!!!」
くっそぉぉぉおお!
どうすることもできないのか、無理なのか!?
俺の、九百万は!?
「まぁ、いい。いや、よくないけど。一千五百万がもらえるなら、とりあえず……」
「……同じ言葉を、今までも何度か聞きましたが。皆さん逃げ帰っていますよ?」
受付嬢さん?
その不吉ワードやめてくれ。
俺、今フラグ建てた?
「ま、まぁその時はその時だ。俺たちはそのモンスターを倒すだけ。他に方法はない。一番手っ取り早い。だから早く情報をくれ」
「かしこまりました。少々お待ちください」
慣れた手つきでタイピングし、すぐに印刷。
「こちらになります」
渡された資料を見てみると、小さな文字がびっしり。
目が痛い。
「えぇっと……?」
性質、技、属性、弱点。
ここまで詳細に分かっているなら、むしろなぜ倒せていない?
逆に不安になる。
「他に必要なものはございますか?」
「必ず勝てる何か」
「……何か、とは」
「武器でも技でも奇跡でも」
「ありません……」
そんな哀れむ目で見るな。殴るぞ。
※
部屋へ戻り、ベッドに横になりながら資料を読み返す。
今回のモンスター名は、ショス。
これが一千五百万の正体か。
アメーバのような姿。
歪な口から毒を吐き出す。その毒が感染症の原因と推測されている。
伸縮自在。姿形を変えられる。
刃や鋭い爪も生成可能。
物理攻撃はほぼ無効。柔らかい体が衝撃を吸収する。
弱点属性は炎。
完全に溶かし切れれば勝機あり。
まとめるとそんな感じだ。
見た目が変化するため記述はバラバラだが、遭遇時はアメーバ状が多いらしい。
物理が効かないならアルカは囮。
リヒトは拘束重視。
炎が弱点なのは幸運だ。
俺とスピリトが主軸になる。
……そういえば、リンク。
「出てこい、リンク」
『こんな時に私を呼ぶなんて。ご用件は何かしら?』
髪を弄りながら現れるのが腹立つ。
「お前の出来ることを詳しく教えろ」
『私はなんでもできますわよ? だって無属性なのだから!!!』
無属性?
意味が分からん。
『ちょっと、反応は!?』
「理解できなかった」
『どこが?』
全部だ。
そこへヒュース皇子が隣に座る。
距離近くない?
「無属性と言ったな。つまり、自ら属性を選択できるということか?」
『そうよ!! 炎、水、雷、地、草は当然! 他も使えるわ!! 私は凄いのよ!! もっと称えなさい!!』
高笑いがうるさい。
だが、ヒュース皇子は真剣だ。
「だが、そんな精霊は聞いたことがない」
「お前でも?」
「あぁ。無属性は希少だが、“選べる”だけだ。一度決めれば固定。他に特典はない」
その瞬間。
リンクの肩が震えた。
冷や汗。
あ、これ。
「リンク。お前、まだ属性決めてないな?」
『……そ、そうよ! 生まれたばかりなんだから当然でしょ!? 決まってないなら何にでもなれるってことじゃない!!』
なるほど。
今はまだ特別仕様期間。
「一度決めたら変更不可?」
「私はそう理解している。ただ、確定情報ではない」
「今は変えられない前提でいいな?」
「あぁ」
つまり――
今のリンクは“何者でもない”。
「今、魔法は出せるのか?」
『出せるわ。でもその属性で固定よ』
試し撃ち不可。
博打。
「……俺が指示するまで待機」
『は!? 戦えるわよ!?』
「主命だ」
睨むな。
属性選択は慎重にしたいんだよ。
アルカ、リヒト、俺のバランス。
今後の戦い。
ここでミスはできない。
「今回はスピリト中心だ。炎主軸。俺がメインで攻める。だから、お前らは援護頼む」
二人は頷いた。
リンクはまだ騒いでいるが、ひとまず黙らせて――作戦会議開始だ。
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