当たってほしくないと強く思う程、嫌な予感という物は当たりやすい
三人がいなくなった小屋では、三人がお互いを心配し合っていた。
「大丈夫ですか、村長! お怪我はありませんか!?」
「村長!! 怪我がありましたら今すぐに治しましょう! 俺、救急箱持ってきます!」
「いや、問題ない。――二人とも、ありがとう」
二人は、微笑んでいる村長を見て不思議に思い首を傾げるが、何も聞かず共に笑った。
三人は今回の件で、酷く反省した。
知里に脅された恐怖もあるが三人はそれぞれ、大事な人を失うかもしれないという気持ちを自身で味わった。
今までの行いを悔い、これからについて話をしようと小屋の中に戻る。
その時、後ろから気配を感じた。
「………な、なっ」
後ろから感じる気配により、三人の額からブワッと冷や汗が流れ落ちた。
体には鳥肌が立ち、カタカタと震える。
「な、何故…………」
一人のヤンキーがぼそっと呟くと、三人の後ろに突如、小さなブラックホールのような黒い空間が現れた。
三人が動けず震えていると、現れた黒い空間から、色白の右手が伸びる。
ズズズッ――――と、腕、肩、胴体と。ゆっくりと、黒いローブで顔を隠した人が現れた。
身長は、成人男性の平均程度。
黒いローブで顔まで隠しており、口元以外の表情は伺えない。
微かに見えている口元は横に引き延ばされ、袖で隠れている獣の形をしている右手が村長へと伸ばされた。
「こんにちは~」
「な、なぜ、管理者の処刑人であるアクア様がここに……」
現れたには、この世界を管理している管理者。名前は、アクア。
三人は、アクアを見てその場から動けなくなる。
そんな三人の様子などお構いなしに、アクアはフードの隙間から覗き見える口元が横に伸ばされた。
「今回、私がここに来た理由ですねぇ~。それはぁ~、セーラ村の村長の代わりを準備したことを伝えに来たのですよぉ~」
一般男性と比べると、少し高めの声が響く。
マイペースな口調だが相手の心を凍らせるほど冷たい声色と言葉に、唖然とする。
恐怖のあまり何も言えなくなってしまった三人に近付き、アクアは村長の肩に手を置いた。
「では、私達、管理者の元へ来てください~。 小さいですが、違反は違反。罪を償って頂きますよぉ」
村長の耳元で囁くと、今度は足元に黒い空間が現れた。
抗えず、叫び声をあげることすら上げられない。
そのまま、村長は吸い込まれるように黒い空間へと落ちた。
残されたヤンキー二人の肩に、青年は手を置く。
「余計なことはしないでくださいねぇ? 大丈夫です。貴方達の村長は、罪を償い終われば戻ってきますよぉ」
「耐えられれば、ですがね――……」と言い残し、アクアは二人から離れ、瞬きをした一瞬のうちに姿を消した。
二人はやっと恐怖という名前の拘束から解かれ、その場にへたれこむ。
震える体を自身で抱きしめ、村長が消えた地面をただただ見下ろすことしか出来なかった。
※
次の日、俺達はギルドの受付嬢が持ってきてくれた朝食を食べ、朝を過ごしていた。
村長とヤンキー二人は大丈夫だろうか。
後悔しているみたいだったし、余計なことはしないとは思うんだけど。
…………なんだろうか。なんか、嫌な予感がする。
朝食に出された珈琲を啜り、サンドイッチにかぶりつく。
眉間に皺を寄せながら朝食を食べていると、受付嬢が外から呼ばれてしまい席を外した。
出入り口で何か話してるみたいだな。
なんだろう、黒いローブで体全体を隠しているから性別すらわからない。
サンドイッチを食べながら眺めていると、受付嬢がなにか慌てた様子を見せ始めた。
「あ、ちょっと!!」
受付嬢に手紙を押し付けた黒いローブの人がいなくなると、困惑しながら俺達の方へと戻ってきた。
「どうしたんだ?」
「…………あの、私……。村長になれと、言われたのですが…………」
「…………ん?」
え、村長に?
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受付嬢が村長に任命されたらしい。
なぜ、どうして。
あのごく潰し村長が自ら地位を手放すとは思えない。
何か、村長が出来なくなった理由があるのか?
確認するため俺は今、アルカとリヒトと共に村長の家に走っていた。
「何がどうなっているんだカガミヤ! 村長は考え直してくれたんじゃないのか!?」
「わからんから今確認するため、村長の家に向かっているんだろうが」
何もなければそれでいい。
だが、さっきから感じる嫌な予感が、小屋に近づけば近づくほど強くなる。
いや、もう予感ではない。
確実に何かが起きている。
「はぁ、はぁ……」
村長の家にたどり着いた。
周りや小屋を見てみるが、昨日から変わったところは無い。
「な、何も変化はありませんね」
「はぁ……。そうだな」
あと確認していないのは、中か。
警戒しながら小屋に近付き、ドアノブを掴む。
鍵がしまっている可能性があったが、すんなりと開いた。
中を覗き込むと、薄暗い。
もっとドアを開かなければ中を見えないな。
キィィイイっと扉を全開にすると、ヤンキー二人が壁に背中を預け、膝に顔を埋めている姿があった。
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