素敵な朝食だ
「…………どっちにしろ、君の戯言に付き合っている暇はない」
おい、結局俺の言葉は信じてくれないってことじゃん。
酷い。俺、嘘なんて言ってないのに……。
「最後に一つだけ伝えましょう。受付嬢さん、貴方には約束通り、ギルドの案内人を降りてもらうよ」
「そ、そんな……」
「それだけで済んだと思った方がいい。この男が居なければ、今頃貴方はここに居ない」
サングラスを少し下げ、女を睨みながら言い放ち、部屋を後にする。
わぁお、今以上に怒らせたらまずかったかもしれないと思わせるような瞳だったな。
正直、ここで引いてくれてよかった。
まだ魔力をコントロール出来ていない俺が、ここで戦闘を行うのは避けたい。
「…………」
ドアから出る際、何故か冷静ヤンキーに睨まれた。
絶対に、目を付けられたじゃん。
ドアが閉まり、静かな空間が広がる。
「さて、この後はどうするっ――」
振り返ると、女が声もあげずに涙を流していた。
リヒトが慰めているし、任せよ。
俺は、報酬がもらいたい――そうだ。
「報酬がギルドからもらえないのなら、村長から直接貰えばいいか」
「今はそんなこと言っている場合ではないでしょう!?」
いや、そんなこと言われても、俺にはどうする事も出来ないし……。
「…………受付嬢、ひとまず待ってろ。どうにかならないかもしれないし、何とかなるかもしれない」
「え、それって、どういうことですか?」
「俺はこれから村長に直談判しに行く。そして、この村の決まりや法律を改善させる。そうしなければ報酬がもらえないみたいだしな」
見るけど、まだわかっていないらしい。
「だから、お前の失態をもみ消せるかもしれない。まぁ、お前が今回の件を後悔しているのならの話だがな」
言い切ると、受付嬢は目を輝かせ顔を乗り出してきた。
顔、近いって。
「お、お願いします!! 私、本当に後悔しかしていなくて…………」
「わかったわかった。わかったから、顔を離してくれ」
必ずどうにかするとは言ってないが、リヒトも「良かったね」とか言っているし、もう逃げられない、か。
はぁ、報酬、遠すぎる。
※
俺達四人は、ひとまず今日は何もせず休むことにした。
だが、休むと言ってもどこで? という話になり困っていると、受付嬢がギルドにある奥の部屋まで案内してくれた。
ギルドの奥に空いている部屋が一つだけあるらしい。
受付嬢は自分の部屋があるみたいで、俺達三人が一つの部屋に寝ることとなった。
「それじゃ、何かあればお呼びください。明日の朝、迎えに上がります」
それだけを言うとドア付近で腰を折り、廊下へと消える。
改めて部屋の中を見回してみるが、三人で過ごすには少し狭いな。
宿泊無料だから文句も言えないけど。
周りに置いてある物は必要最低限。
テーブルに椅子、壁側に一つだけのベット。
ベッド、一つだけか。
「ここは俺のものだな」
「もう、当たり前のようにベットに横たわってんじゃねぇか」
「当たり前だろ。今回一番疲れたのは俺だぞ、休ませろ」
「別にいいが……」
アルカは呆れてリヒトの方を見た。
リヒトが何を言っても俺はベットを譲らないからな。
眠らせろ、しっかりと休ませろ。
「あの、カガミヤさん」
「なに」
「さっきの言葉は、本当ですか」
まぁ、聞いて来るか。
ベッドの横に膝をついて、俺の顔を覗き込んでくる。
この世界の女性の距離感、バグってんな。
「本当だ。俺は、思ったことしか口にしねぇし、やることしかお前らには言ってない」
「では、本当に報酬をもらうのと同時進行で村長を説得し、この村を変えてくれるんですね。間違いはありませんよね」
こ、声に圧がある。
すごく疑われてるじゃん。
「努力はする、だが期待はするな。成功する確率は低い」
「わかりました」
顔を離したリヒトは、まだ納得できていない部分があるのか肩が落ちている。
「……今日はもう寝ろ。明日に備えてな」
「はい」
アルカもリヒトも、本当に優しすぎるな。
見捨ててもいいだろうに。間接的に殺されそうになったんだから。
まぁ、いい。
出来るだけのことをやる。ただ、それだけだ。
※
瞼を閉じていても光がさしているのがわかる程、外が明るくなってきた。
でも、まだ眠い。あと五時間くらい寝かせてくれ、これは多分寝れるかっ――……
「起きろカガミヤァァァァァァァ!!!!!」
――――ゴスッ
「だまれ」
「ぐふっ!!!」
「アルカぁぁぁああ!?」
「あ」
耳元で叫ばれたから、反射的にアルカの腹部を蹴ってしまった。
俺の反射ってすごいな。真後ろに居たアルカの腹部をピンポイントで蹴ったぞ。
「ふあぁぁぁあああ。えぇっと、何時?」
体を起こし、体を伸ばしながら時間を聞いた。
「謝罪はないのか……」
「俺の後ろに立ち、鼓膜を破るほどの勢いで大声を出してきたお前にも非はあると思うが? 俺だけが謝らんといけないのか?」
「…………悪かった」
「しょうがねぇから許してやるよ」
蹲っていたアルカは謝罪した後、立ち上がり俺を見て来る。
睨んでいるわけではないみたいだが、なんだよ、俺に何か用か?
「なぁ、カガミヤ。今日は話し合いをした後、カガミヤの服を身に行かないか? さすがにその服じゃ心もとないだろう」
確かに、それもそうだな。
俺も新しい服が欲しい。
「そういえば、お前らの剣士や魔法使いのような服は、なにかしらの加工がされているのか?」
「俺のは近戦が主だから、物理攻撃に耐性のある素材を利用した服を買った。逆にリヒトは中距離戦闘や回復が主だから、属性攻撃に耐性ある素材を利用している」
「なるほど。そこはしっかりとその人にあった素材を考えているのか」
なら、俺の場合はなんだろうか。
魔力を使い魔法を放つことが多くなりそうだから、リヒトと同じく属性攻撃の耐性がある素材の方がいいか?
…………なんでもいいか、俺の体を守ってくれれば。
それより、一番の問題がある。
「すごいありがたい提案なんだが、金はあるのか?」
「少しならあるぞ。だが、そこまで良い物は買えない。今の服よりは少しマシになる程度だな」
やっぱりそうなるか。
金はな、大事だからな、うん。
「なら、今回の報酬次第だな」
言うと二人は納得したように頷いた。
なんか、部下に仕事を教えているような感覚になる。
俺の言葉にアルカがやる気を出したらしく、目を輝かせドアへと向かった。
「それなら、早く行こうぜ!!」
「おい、待てって――………」
――――ガチャ
アルカがドアノブを回そうとした時、外からドアが開かれた。
そこには、朝食が乗っているワゴンを押す、昨日の受付嬢が立っていた。
ワゴンの上には、湯気が立ち上っている珈琲とサンドイッチ。
美味そうな香りが部屋に広がって、食欲が出て来た。
「おはようございます、朝食をお持ちしました。簡単な物しか準備が出来ず申し訳ありません」
「いや、これがいい。あんがと」
テーブルを囲い、朝食タイム。
現代にいた時は、適当にゼリーとかで過ごしていたから、こんな立派な朝食は久しぶりだ。
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