ヤンキーは礼儀とか考えず馬鹿晒しとけ
アルカがおずおずと話し始めてから数分、やっと終わった。
俺は簡潔にと言ったはずなのに……。
「本当に簡潔じゃなかったな」
「うるせぇ…………。言葉にすると難しいんだよ」
アルカが呆れている俺から逃げるように目を逸らした。
まぁ、そんな態度を取りたくなる気持ちもわかるけどな、今の話で。
「お前の話を簡単にまとめるぞ」
頭をガリガリと掻く。
はぁ、頭の中で整理しながら話すか。
「まず、村長は村人を人とは思っておらず、パワハラが酷い。それでも、何とか耐え続けてきた。ここまではいいか?」
聞くと、アルカが顔を逸らしながら小さく頷いた。
「だが、偶然村長と話す機会があり、内容に我慢が出来なくなり殴ってしまった。あってるか?」
「アッテイマス」
内容は詳しく話さなかったが、殴るなよ。
殴るのなら、想像だけにしておけよ。
俺も何回、何十回、何百回と上司を殴ったぞ。頭の中で。
「お前らの現状はわかった。それじゃ──……」
ドアの外、何かが近づいて来ている。
俺が途中で言葉を止めたせいか、アルカ達が首を傾げた。
「あの、何が…………」
「しっ、静かにして」
人数は、おそらく二人。他の冒険者でも来たのか?
椅子から立ち上がり警戒していると、アルカとリヒトが近くに寄ってきた。
二人も気配に気づいたらしい。
「カガミヤさん、誰が来ていると思いますか?」
「わからん。警戒だけはしておけ」
────っ、気配がドアの前で止まった。
ガチャガチャと音を鳴らし、ドアノブが回される。
数秒、沈黙が流れる。
瞬間、バンッ!! と大きな音と共にドアが開かれた。
「失礼するぞおらぁぁぁぁああ」
壊れるんじゃないかと思う程の勢いでドアが開かれ、同時にモヒカンヤンキーが喚きながら入ってきた。
予想外過ぎて固まっていると、モヒカンヤンキーと目が合った。
「………………………………あ、どうも」
思わず挨拶を返してしまったが、なんだこいつ。
スーツを着て、一昔前のヤンキーヘアー、モヒカンが揺れている。
口元には棘のついた黒いマスクを着け、目元にはサングラス。
「…………ださ」
「「!?」」
思わず思考が停止して、思ったことが口から出てしまった。
アルカ達に口を塞がれたがもう遅いだろ、我慢できなかったんだよ。
「今、『ださっ』と言った奴、誰だごらぁぁぁぁあああ!!!」
なんか、馬鹿っぽいな。
これならうまくかわせそう。
アルカ達に手を離させていると、うるさいヤンキーとは別の声が廊下から聞こえた。
「まぁ、待て。ここでこいつらを問い詰めるのは容易い。少しでも情報を引き出すことを目的としよう」
見た目は、うるさいヤンキーと同じ。
だが、雰囲気が冷たい。冷静と言うか、視線が鋭いな。
第一のモヒカンの横を通り、俺の前まで来た。
目元しか見えていないが、にこっと笑ったのはわかる。
雰囲気も落ち着いていて、相手が話しやすいように誘導している。
「少し、話をしてもいいかな」
「どのくらいの少しかによる」
「慎重だな」
「どーも」
こいつだと、簡単に躱せなさそうだな。
間違えたことを言わないようにしないと。。
いや、それより、なんでこうもいいタイミングでこの二人が現れたのかが気になる。
「なぁ、もしかしてだがこの部屋、カメラ仕掛けられてる?」
「今は関係ないんじゃないかな?」
絶対に仕掛けられている返答じゃん、最悪。
何処だよ、壊してやる。
「そんなことより、なぜ部外者がこんな所にいるんだい? 見覚えもないし、君は何者?」
「異次元を通り異世界転移を果たしたおじさん。チート魔力をゲットしてお金のためにダンジョン攻略をしようと考えている一般人です」
「…………どこからツッコめばいいんだ」
正直に答えると、冷たい視線を向けられた。
間違えたこと言ってないのに、悲しい。
「いや、今は君については後回しだ。それより先に、我々にはやらなければならないことがある」
俺の後ろをサングラス越しに見てる。
なるほど、狙いは受付嬢か。
「裏切り者を始末しないとな」
にこっと笑いながら冷静ヤンキーが言い放つ。
口止めを強制的にさせるつもりか。
「あ、ご、ごめんなさい。あの、私…………」
めっちゃ震えてるじゃん、これが怖かったのか。
まぁ、普通は怖いだろう。
俺も力を手にする前だったら怖がって何も出来なかっただろう。
受付嬢を守るように立っていると、俺を無視し冷静ヤンキーが受付嬢に言葉を投げかけた。
「謝ってもねぇ、漏れた情報は取り消せないのよ。わかるだろ?」
「それよ」
「お前が同意するな」
「え」
冷静ヤンキーがまともなことを言ったから、俺も思わず賛同してしまった。
普通に否定されたけど。
「ひとまず、早くこっちに来い。罰を与えてやるよ」
人差し指でクイクイっと、女を呼ぶ冷静ヤンキー。
絶対に行きたくない指クイだな、鏡を見てこい。
傍観していると、我慢の限界に達したアルカとリヒトが顔を赤くしている。
やばい、めんどうなことを言いだしそう。
二人にこっそり近付き、黙っているように伝えた。
納得出来ていないような顔だが、今は黙っていてくれ、頼む。
いや、アルカが限界だ。
めっちゃ冷静ヤンキーを睨んでいる。
その視線が煩わしかったのか、冷静ヤンキーがこっちを見た。
「なにか言いたげだね。いいよ、君だけは発言を許してあげばしょう」
アルカだけは発言を許された。
前に出るアルカにテロのバスリヒトを止めた。
「今は任せよう」
「は、はい……」
さぁ、アルカはどこまで喰いつけるかな。
「お前らはこの人を使って、なんで俺達にダンジョン攻略させないようにしたんだよ」
「簡単な話、村長に逆らったからだが?」
「逆らうのも当然だろう!! 村人はお前らの道具じゃない、好き勝手に命令していいわけじゃないんだ!」
まぁ、そうだな。
「だが、村長のおかげで村人達が生きているのを忘れてはいないかい? 食料や物資は、村長の力があってこそ手に入る。どんなに生きやすい空気を作りあげたところで、食料がなければ死ぬのみ。感謝されど、反逆行為はおかしくないかい?」
「確かにそうだが、そうだとしてもだ。村人達が苦しんでいるのは事実だ」
「何も苦しまずに欲しい物を手に入れたいと言っているのかな? それこそ、村長を苦しませることとなると思うが、いかがかな?」
意外とアルカは食らいついているが、冷静ヤンキーも引かない。
これは、理想と現実のぶつかり合いだな。
どっちも一理ある言い分だ。
さて、アルカはどう出るかな。
「苦労もしないで欲しい物を手に入れたいとは考えていない。ただ、強制させるのはおかしいと言っている。村人の笑顔は無理やり引き出させるものではなく、心から楽しいと思った時に自然と出るものだ。労働も同。やりたいと思っている人や出来る人がやればいい。無理に病気の人や子供、女性にやらせる必要はない!」
…………ほぅ、アルカはそう出るのか。
「そうなれば、村のバランスが崩れ今の生活が出来なくなる、そんなことを許す訳にはいかないよ」
……………んー、これって多分平行線じゃないか? 話が終わる気配がない。
立っているのも疲れたし、もうそろそろ話を終わらせたい。
と、言うわけで、割り込もうか。
「なー、もう疲れたからこれだけ言わせてくれ」
手を上げ言うと、二人の視線が突き刺さる。
「今回はしっかりとダンジョン攻略をしてきた。本来の報酬の倍を準備しろと村長に伝えろ、以上」
「断る」
「それを俺は断る、早く行け」
「またしても俺はそれを断るよ。どのような手を使ったのか知らないけれど、君達がダンジョンをクリアするなどありえない。不正でクリアした人達に渡す報酬はないよ」
ダンジョンって、不正できるのか?
「不正はしていない。俺がワイバーンを倒した、以上」
これ以上の説明もクソもねぇんだよ。
俺に無条件で魔法が与えられて、使った。
結果、ワイバーンが倒れた。
もう、それで納得してくれ。
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