自由のための金を、早くくれ
リヒトの案内で、なんとかギルドへ辿り着いた。
建物前ではアルカが手を振っている。
……のんきな奴め。俺の苦労も知らずに。
「おーい、遅いぞ〜」
「人混みに慣れていない俺を置いて、一人でギルドに着いたアルカ君こんにちは」
「棘あるなぁ……」
事実だろ。
「あの、本当に大丈夫ですか?」
「ここは“大丈夫”と言いたいが無理だ。気持ち悪い。肩貸してくれ」
「ど、どうぞ! 回復魔法、使いますか!?」
「頭痛も治るのか?」
「あ……外傷だけでした……」
「……無理すんな」
「役立たずですみません……」
本気で落ち込むな。
小柄なリヒトの肩を借りる。腰が辛いが、倒れるよりマシだ。
それより――アルカの視線が気になる。
「何か言いたいことあるのか?」
「……距離、近くね?」
「色々あった」
「色々?」
「今は関係ない。二百万だ」
「……おう? おう」
改めて、周りを見回してみる。
ギルドは、周囲より一回り大きな木造建築だった。
両開きの扉の上には、簡潔に『ギルド』とだけ書かれている。
中は思ったより人が少ない。外よりはだいぶマシだ。
温かみのある内装。
受付カウンター。
隣には休憩スペースらしき部屋。
悪くない。
ぼけぇっと周りを見ていると、アルカがカウンターへ向かう。
「黎明の探索者だ。ダンジョン攻略してきたぞ」
受付嬢の目が見開かれる。
……その反応は何だ?
「え……本当ですか? あのダンジョンを?」
「俺たちより上のランクだったがな」
「本当に……攻略を?」
「記録、残ってないのか?」
「い、いえ……でも……」
――――不自然だ。
これは、《《なにかを》》知っている顔だ。
はぁ……。
これも、金があれば気にしなくていいことなんだよな。
金がないから、面倒に巻き込まれる。
早く金を稼ぎたい。
面倒ごとを全部、金で黙らせられるくらい。
そうすれば――自由になれる。
金さえあれば、何にも縛られない。
自由が欲しいなら、結局は金だ。
リヒトから離れ、カウンターへ。
営業スマイル、発動。
「こんにちは」
「こ、こんにちは……」
「あのぉ、ダンジョン攻略の件ですが、僕たちは命懸けで攻略しました。なので、報酬をいただきたいのですが、何か問題でも?」
アルカが横で固まっているが、気にしない。
「い、いえ、問題は……」
「では、お渡しいただけますよね?」
「その……」
あー、笑顔を維持するのが疲れてきた。
普段使わない表情金が震えてきたから、もうやめよう。
さぁて、どうやって積めようか。
こういう時は、核心をつくのが一番か。
「……もしかして、報酬が“ない”のか?」
受付嬢の肩が震えた。
図星か。
つまり――
最初からクリアされるとは思っていなかった。
いや、クリアできないと踏んで送り込んだ?
「お前、こいつらを格上ダンジョンに送ったの、わざとだろ」
顔が真っ青になる。
確定。
「誰の指示だ?」
俯く。無言は許さんぞ。
顎に手をかけ、上を向かせる。
震えている。
歯が鳴っている。
俺を見ようともしない。
「なぁ。こいつらの命を危険に晒した自覚は、あるか?」
別に俺が金が欲しいとか、そんなのは今は関係ない。
顔を近づけ、問いただす。
だが、震えるだけで何も答えない。
「怯えてないで答えてくれよ。なぁ、誰の指示だ?」
空気が一気に冷える。
周囲の冒険者の視線が集まる。
「――早く、答えろ」
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