表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

7日目 過去に生きる

 路線階段を登り終えると、大きな門が待ち構えていた。

 人間は凄い。あんなに引き篭もっていたせいで身体が重いというのに、こういう時は限界を越えられる。

 門を開けると、そこにはノルマとミライがいた。奥に偉そうに腰を掛けている中年の男はこちらを見て笑っている。


「もう分かっている。お前が元凶なんだよな!」


 俺は中年の男に指を指してそう言った。

 そう、この男こそが俺を無限ループに閉じ込め、世界を滅ぼそうとする張本人。


「ほほう? どうやってだか知りませんが、記憶がある様ですね……」


 いやらしい笑みを浮かべ、終いには拍手なんてし始める。

 俺はその態度に心底腹が立った。


「弘祐!」


 ミライは腕枷を付けられ、ノルマに連行されている様な形になっている。


「ミライ、全部思い出したよ。直ぐに終わらせるから、一緒に帰ろう」


 そう言うと、ミライは嬉しそうにコクリと頷いた。


「はぁ? ここまで来ておいて帰られる訳ねぇだろ。馬鹿か?」


 ノルマは俺に銃を向ける。俺は構わずノルマの方へと歩み寄った。


「お、おい! 打つぞコラ!」


「お前は本当は良い奴なんだよ」


「お前に何が分かる!」


「思い出せ! ノルマ!」


 すると、ノルマは手から銃を落とし、頭を抱えて悶え始めた。


「俺は……兄を……うあぁ!」


 ノルマは涙を流す。全てを思い出した様だ。

 そう、俺やミライ達はこの男によって記憶を消されたのだ。そして、ミライやノルマに禁忌として存在を消された感情を消す手術『ロボトミー手術』を施した。


 そのままノルマは気絶してしまった。ミライが倒れ込んだノルマを支える。


「お前だけは絶対……許さない!」


「俺はなぁ? お前の様な出来損ないの過去の人間を消し去り、今を生きる素晴らしい人間だけの世界を築きたいだけなんだよ!」


「出来損ない……確かにそうだ。お前よりかは劣っているかもしれない。だけどな! お前よりも人間としては上だ!」


「な、何を!? 過去の人間のくせにふざけた口を……!」


 男はノルマの持っていた銃を拾い、こちらに向ける。目の焦点が合っていないと、完全に我を忘れている。


 バンッ!

 その音がした時には俺は倒れていて、目の前にはミライが立っていた。

 ミライの胸からは大量の血が出ている。


「ミライ! しっかりしろ! おい、嘘だろ!!」


「弘祐……。私、貴方が好き……」


「俺も好きだ! だからもう喋るな!」


 嫌だ、ミライが死ぬなんて。

 震えが止まらない。自分が死ぬ事よりも怖い。


「また……駄目だった、ね……」


「諦めるなよ! 俺達は何度だって……」


 こんな時だというのにあの言葉が浮かんで、ある決意が芽生えた。


「何度だって、君に会いに行く」


「うん……!」


 その笑顔はとても綺麗で、今までの死んだ目をしたミライは何処には見当たらない。美しいものだった。


「未来で待ってろ。直ぐに行く」


 俺は立ち上がり、身体を大きく広げた。


「何の真似だ? 良いだろう、殺してやるよ」


 俺は見事に撃ち抜かれた。ミライの横に倒れる。

 痛えよ、夏より身体が熱いし。視界が狭まっていく。


 また最初からだ。

 それでも、何度だってやってやる。


 俺は意識を手放した。


『残りーーー7日』


 ーーーーーーー

 ーーーーー

 ーーー


 太陽は今日も輝きを放っている。

 こんな暑い日にクーラーが潰れているなんて、生き地獄みたいなものだ。

 つまらない日々も相まって、最悪な気分だ。だというのに、今日は何かが起こる気がしている。

 俺は長い夢でも見ていた気がする。とうとう退屈で頭がおかしくなってしまった様だ。


 急に思い出す。物入れには扇風機が入っている事を。

 段ボールに入った扇風機を取り出し、コンセントを付ける。中古品だが、何とか風は吹いてくれた。

 懐かしい気分になり、あの言葉を言ってみたくなった。


「我々は~」


 あれ、前にもこんな事あった様なーーー




「未来人だ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ