第28話 魔法師は高火力!
久しぶりの人登場(噂にはなってたけど。
「おう、久しぶり?そのレベルでスライム獲物にしてるのか?」
ぷちぷち一つずつスライムを潰していたら、後方から声がかかった。
「あ、こんちはディギーさん!ここで狩りです?」
「道に詰まってるから掃除してるだけで、今日は本当は移動だけなんだよ?」
それぞれに挨拶をする。
「ああ、レベリング、物理勢が多めでここは放置されてるだろうから掃除に来たんだ、レベルも誤差程度とはいえ、君らより適正に近いしな」
「お邪魔します!」
「こんにちはー、はじめまして」
そんなディギーさんには連れが居る。
前に町で取り囲まれたときに呪符魔法がリストにないって言ってたボクっ娘エルフさんと、初めて見るヒューマン男性の、推定盾職の人。
エルフさんが確か魔法師だったかな?
「それだったら少し見学させてもらおうかな。ここまで符術師と生産職だけで組んでたから、他ジョブが知りたい」
玉兎さんが好奇心を全開にしてそんなことを言い出した。
「そうだな、俺らも符術師式をちょっと眺めさせてもらったし、いいぜ」
「札のモーションかっこよかったー」
そんな回答で見学は許可されたので、我々も眺めることにするよ。
「んじゃやるかー。岩だけこっちに回せ、あとはシングに任せる」
「じゃあ集めてくる……までもないねえ、この密度は……〈ガードスタンス〉、〈サークルエッジ〉」
盾職の人が軽い調子で自分に、そして周囲のスライムにスキルを発動する。
お、ちょびっとダメージが入る範囲技かあ。
「では――〈ウィンドスラッシュ〉。序盤だからしょうがないけど範囲魔法少なくない?」
スライムの敵対心を殴ったりスキルを使ったりして盾職さんが集めたところで、魔法師さんがまずおもむろに魔法を詠唱する。
二発めでスライムがごっそり減った。残りは更に盾の人が引き付ける。
お札一発の火力よりは低いけど、範囲魔法は多分中級だなこれ。
残ったスライムは風耐性だったようで、これは単発魔法が属性別に飛んで吹き飛ばしていた。
ひまり:魔法師、もう中級使えるんだ
玉兎:Lv15からのはずだが……
アン:スキルで魔法レベルの底上げができるんだそうですよ。
3人組のレベルは14だったので、ちょっとびっくりしていたら、アンからネタバレが来た。
符術師もそういうのあるのかな?
……取ってたわ。【一念】がそれだわ。
スキルレベルの半分(最低値1)を指定された技能やスキル、魔法レベルに加算だわこのスキル。
魔法レベルかこのスキルのレベルを上げないとだね。
「ウィンド……っ」
スライムの数が四分の一くらいになったところで、シングさんの魔法詠唱が途中で止まる。
「ガス欠?」
「いや、アラートが出た、今日はここまで」
ミケさんが首を傾げ、シングさんが謎の報告をする。
「あー。熱でも出たかな?町まで戻る余裕はある?なかったら櫓まで行こう」
盾職の人がそう言うとシングさんにささっと寄り添う。
数匹残っていた体力の減ったスライムは、無理やりディギーさんが短剣で倒していた。
北斗:何事だ?
ひまり:熱でも、ってことは体調管理モニターのアラートなんじゃないかな。体が弱い人なのかも。
玉兎:ああ、リアルで眠くなったりすると警告してくるあれか。
ミュー:そういえば病気で動けない人のためのモニタリングも兼ねてるって話だっけこのゲーム?
「まあスライムの数は減ったしこんなもんだろう。ここからだと櫓の方が近い。進むぜ」
ディギーさんがさくっと方針を決めて歩き出す。
我々もここに用事があるわけではなかったので、一緒に歩き出す。
「魔法師さんの魔法強いですねえ。範囲があるのが羨ましい」
「符術師、範囲魔法ないからね……」
まずは見学の感想を述べたら、既に中級のお札を作れるというミューちゃんから残念なネタバレが来た。
うん、魔法レベル不足でね、まだ中級、誰も出てないんだ。
「その代わりデフォで無詠唱だし、リキャストタイムの設定がないらしいから、単発連打が初期想定だと思う」
使えないから聞いただけだけど、と、シングさんがだるそうな声で答えてくれる。
「設定上のリキャはないけど、モーションタイムがあるから完全0秒連射は無理だね」
そして玉兎さんもさらりと符術師の弱点を上げる。
「でもあれレベルアップで改善されるよね、0秒は無理そうだけど」
ひまりちゃんに関していえば、チュートリアルの時の半分くらいにまで、モーションタイムは短縮されている。動きも洗練されて来てる、と思う。
玉兎さんも早いけど、北斗さんがそこまで早くないままだから、恐らく敏捷が載ってる?
「うう、石人が羨ましい……なんですその耐久……」
盾職の人はミケさんとフレンド登録したそうで、耐久の数字でぐぬぬっている。
「聞いて驚け、これでも生産職特化種族だ。器用が劣勢なのに!」
は?不器用種族の生産職特化?誰得?
「器用は現状だとリアルスキルの影響受けるから、そこまで酷くなさそう」
「ディッギ、それまだ部外秘」
そして、割と重要な情報をディギーさんがポロリして、盾の人から秒で注意されている。
(あーあーあー。済まぬが聞かなかったことに)
「ああ、推測はしていましたね。聞かなかったことにしておきます」
「もしかして:君らアルファ組?」
「アルファはなかったことにしたいレベルで別物だった。気にしないでいいぞ」
ミュー:アルファテスターって全員まりコポの身内らしいよ。
玉兎:まあそうだろうな、こんなカッ飛び技術、第三者にそんな段階で見せられる訳ないだろう。
ひまり:なんかアルファテスト、黒歴史っぽさを感じ始めた……
「まあその辺はご内密に、だ」
「フレンド登録していただけますかー?」
「ボクは寝たきりって程じゃないけど、病弱組のテスターでもあるんだ。
現状の一般ベータ勢は健康さも審査対象で、緊急アラートの試験ができないからね」
そう口々に述べる3人と、皆で手を繋ぎ合ってフレンド登録だ。
盾職の人はユークリッドさん、現状は盾士Lv14。上位ジョブに聖騎士がアルファ段階で存在したので、それを目指すんだって!
魔法師のシングさんは、フルネームだとスペルライクシンギングさん。長いな?いや15文字まで使っていいんだっけ。
「エルフの名前長くする人多いね?」
「ああ、キャラクリでエルフ選ぶと、長い名前の人が多いって解説が出るのよ」
思わず直球で質問を投げたら、ミューちゃんから返事があった。なるほど?
「ドワーフもそうですね。男性と女性で命名法則が違うという話も聞けますよ」
「ノの字は基本その辺ほったらかしだからなあ」
「種族特性の話とか一切なかったうえに、最初ジョブも表示されてなかった!」
「あーあれ、選択肢のない種族だとジョブセレクトがないからジョブ自体も表示されないらしい。今は仕様だが、掲示板見ないと判らんのは良くないなあ?」
そんな風に、テスターらしい会話をしつつ歩いて行ったら、例の見張櫓だ。
「こんにちはー、ちょっと休憩でお邪魔しまーす!」
「おう、狐の嬢ちゃんか。今日は随分人数が多いが、アライアンスでも組んでるのかい?」
「ううん、パーティふたつ!だから戻ってくる時間も多分違うと思う」
「そうかそうか、ここは安全だからゆっくり休んでいくといい」
例によって代表で挨拶したら、なんかNPCさんも語彙が増えてるな?
そして、アライアンスという単語が聞こえたところで、ぴこん!と音を立ててどこかが更新された、そんな感じ。
「……アライアンスの情報、こんなとこに落ちてるんだ……」
ディギーさんがちょっと驚いた顔。
「でも例の暴発ワークエの流れを考えると、順当な位置では?」
「確かにそれもそう。じゃあまた機会があったら」
「またねー!」
挨拶をしたら、3人はログアウトしていった。
ミュー:ほー。外の安地でログアウトするとキャラが半透明で残置されるのか。
玉兎:この状態だとモンスターからの当たり判定もなくなるんだと。
ひまり:つまり起きたら噴水前、ってことはないのね、ベータだと。
ベータだと、と注釈をつけたのは、製品版だと空腹度が実装されているから、腹ペコで動けなくなった状態からの体力減少で死に戻り、みたいなパターンを想定してのことだ。
(そこをどうするか、まだ揉めていてなあ)
成程、腹ペコは実装予定だけど、体力減少を導入するかどうかで迷ってる感じね?
玉兎:アライアンスの情報が更新されました、か。
北斗:パーティを二つ以上連合するとアライアンス?
ミケ:その上もありそうだな。レイドとかレギオンとか
ひまり:あるだろうねえ。アライアンス程度では無理でしょ、あのワークエのスタンピード部分。
ミュー:スタンピード部分って事故とか言ってなかった?
ひまり:前回のは事故扱いだけど、強すぎるモンスが出たらああなるってのはワールド自体の仕様のような気がするのよ。ほら、マップはともかくリアルタイムで切り替わりのないフィールドじゃん?
北斗:イノによれば、フィールド境界自体は設定されているそうだぞ。
玉兎:草原と街道とそれに連なる森までが黄金桜エリアで、そこから外に行こうとすると半透明の境界に阻まれるんだと。
ミケ:レベルいくつなんだあいつ
北斗:20。カンストしたとよ。
アン:ソロでですか……?!
猪突猛進やべー。という一同の共通見解が発生したところでログアウトタイムだ。
考察はまた後で。やってる暇あったらね。
よし3人組全員出てきた!(ユー君だけ出す機会がなくてなあ、掲示板回には実はいるんだけど




