ついてなかったが、人の温もりを感じさせてくれた
第9話 ついてなかったが、人の温もりを感じさせてくれた
ヤマタニは暗黒地帯猫獣人村へと行き、奴隷にされていた猫獣人の子供達を送り届けた。
「ヤマタニ様、ありがとうございます。」
「たまたまだ。たまたま奴隷を見かけて助けようとしたら、ミニー村の子供達だったんだ。」
「なるほど、でも感謝いたします。」
「今あちこちの街や村を回っているから、見つけたら保護してくるよ。」
「はい、よろしくお願いします。」
長老や村の人々から、ヤマタニは感謝されていた。
◆
一方ミリーナはヤマタニの足取りを見失ったまま、途方にくれていた。
「神は一体何方へ行かれてしまわれたのでしょうか。」
「やはり行き違いではありませんか?」
「グスタヴではなくジリンに行かれたのかも、しれませんね。」
「それではジリン村に行ってみましょう。」
ミリーナはジリン村に向かうのだった。
◆
ヤマタニ達は、再びグスタヴの街に帰って来た。
「さてと、また街を歩き回って救済活動をしようか。」
「殿、我らが倒れている者を探し出して来ましょうか?」
「ほんに、我らなら、そんな者達を探し出すのは容易いことです。」
「まぁ、必要ならそれもよいが、この街のあちこちを見て回るのが旅の醍醐味なんだ。」
「救済活動が目的だが、同時に旅を楽しんでいるという理由だ。」
「そうですか。それではゆるりと参りましょう。」
「とはいえ、もう夜になるから宿へ向かおう。」
ヤマタニ達は高い宿屋を避けて、普通の宿屋を探した。 しかし、もう夜になってしまい、なかなか宿屋が見つからなかった。
「こいつは困ったな、宿屋の空室がなかなか見つからないな。」
「仕方ないから、レストランで食事して、装甲車で寝るとしよう。」
運が悪いことにレストランはお客さんが一杯になっていて、席がとれなかった。
他の食堂や酒場もごった返している。
「なんか今日は運が悪いなぁ。」
「屋台でなにか買って食べよう。」
ヤマタニがそう言って、屋台が立ち並んでいる場所へと向かった。
しかし、この屋台が立ち並んでいる場所にも人々が大勢いた。
「これは一体どういうことだ?」
「マスター、どこも混んでますね。」
「ちょいとお客さん、今日は何処も混雑しているから、うちで食べていきなよ。」
気の良さそうなおばちゃんが、店じまいしながらヤマタニに言った。
「だって、もう片付けているじゃないか?」
「ああ、もう完売したからね、これから帰るところさ。」
「でもね、うちへ来れば何か食べさせてやるよ。」
「いやぁ、それは助かるが、迷惑だろう?」
「迷惑だったら誘わないさ。寂しい独り身だからね、賑やかな方が良いのさ。」
「すまないね。」
ヤマタニ達は屋台のおばちゃんの家にお邪魔した。 屋台のおばちゃんの家は、近くの裏路地にある小さな一軒家だった。
「すまないね、屋台の荷車運んでもらって。」
「俺を除いた娘達は皆力持ちだからな。」
暖炉やランプに火が灯ると部屋の中が一気に明るくなった。
「あらいやだ、あんた立派な服を着たタイプの男だね。」
「ははは、ただの中年だよ。」
「それに娘さんたちは美人揃い、しかもメイドさんまでいたんだね。」
「おばちゃんは目が悪いのか?」
「あたしゃ鳥目でね、暗いとよく見えないんだよ。」
「いーから、座っておくれ。」
「時期に作り置きのスープが温まるからさ。」
ヤマタニ達は遠慮なく座った。
おばちゃんが食器やパンを運んできた。
「あの、パンは私が切ります。」
「そうかい、頼んだよメイドさん。」
ヤマタニの前には、野菜スープとパンとサラダが並べられた。
「あと、屋台で出している燻製ハムを食べておくれ。」
「すまないね。」
「いーから、みんな食べておくれ。」
ヤマタニ達は夕食を食べだした。
「おばちゃんの燻製ハムはなかなかだな。」
「うふふ、そうでしょ。」
「それにこの野菜スープもよい味だ。」
「口にあったようだね。ありがとう。」
「ところで、何故食堂も屋台も混雑してたんだ?」
「あんたみたいな金持ちには分からないかもしれないが、今日は給料日だからさ。」
「ああ、なるほど。」
「マスター、給料日だと何故混雑するのですか?」
「それはあれだよ、労働者は懐があったかいと、酒や女とかに全部使ってしまうんだよ。」
「そういうものなんですね。」
「うちのファフニール様も酒を用意すると、みんな飲み干してしまう。それと一緒かもしれませんのぅ。」
「ほんにほんに。」
ヤマタニの足下にいるハチが、ハムや骨付き肉をハグハグいって食べていた。
「このパンもおばちゃんが焼いたのかい?」
「ああ、そうだよ。週末に沢山焼くのさ。」
「パンも美味しいな。」
「そんなに褒められたら、ワインも出さなきゃね。」
「いやいや、お構いなく。」
「まー今日はなんだか楽しいから、飲みたくなったんだよ。」
ヤマタニ達はワインをどんどん勧められて、気がついてみたら、夜が明けていた。
「世話になったね、これ少ないが取っといて。」
ヤマタニが小さな革袋をおばちゃんに渡した。
「そんな礼なんていらないよ。」
しかし、ヤマタニはおばちゃんのエプロンのポケットに無理やり押し込んで去って行った。
「ちょいと!」
おばちゃんは返そうとしたが、夕べ飲み過ぎて辛くて走れなかった。
小袋の紐を解いてみたら、銀貨40枚が入っていたのだった。
「まぁ、とんだお金持ちさんだこと。」
おばちゃんは朝焼けの空を、いつまでも眺めていたのだった……。
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