理不尽な11人の奴隷
第8話 理不尽な11人の奴隷
グスタヴの街でヤマタニは宿屋でゆっくり休み、翌日からまた救済活動を開始した。
「この街はスラブはないかな?」
「マスター、詳しい住人に聞くのが一番早いのではないでしょうか?」
「まぁ、そうなんだがな。スラブばかりに注目していると、違う場所に助けを求めている者がいるかもしれない。」
「そうでございますなぁ。殿の言う通りてますのぅ。」
「ほんにほんに。」
「それ、この裏路地におりますよ。」
「えっ!」
路地裏の暗闇に数人の人影がいた。
よく目を凝らしてみると、それは人間ではなくて獣人だった。
ヤマタニは、近くでよく見てみたら、猫獣人奴隷の子供達が座り込んでいた。
首には呪具の首輪がはめられており、表情は暗かった。
「お前達、ここで何しているんだ?」
ヤマタニをチラッと見たが、すぐに視線を元の方向に戻した。
そして子供達は無言のまま、座り込んだままだった。
「そうか、呪具で制限されているのだろう。」
「そのようですのぅ。」
「どれ、念話なら話せるか、試してみましょうぞ。」
「スケさん、頼む。」
「ふむふむ。」
「ほー、ほー、」
「なるほど、そうだったのか。」
「何と言っているんだ?」
待ちきれなくて、ヤマタニがスケさんに聞いた。
「やはり盗賊団に誘拐されて、売られてきたそうですのぅ。」
「会話も制限されていて、もうあきらめてしまっているみたいです。」
「暗黒地帯の猫獣人村の住人か?」
ヤマタニの言葉に、耳をピクンとさせて反応をみせた。
「やはり、俺の領地の子供達だったのか。」
子供達は目でヤマタニに訴えている。どの子供達も目を潤ませて何かを伝えていた。
「どうやら、殿の言った通りのようですな。」
「全員が猫獣人村の子供達といっておりますのぅ。」
カクさんまでもが、猫獣人の子供達と念話していたようだった。
「そうか、そうか。怖い思いをさせてしまったな。」
「俺が何とかしてみようじゃないか。」
「マスター、しかし他の者の奴隷ですよ?」
「わかっているさ。」
「お前達の持ち主は何処にいるんだ?」
猫獣人の子供達はスケさんカクさんに念話で話しかけているようだった。
「この隣の酒場で酒を飲んでいるようですね。」
「わかった。ちょっと行ってくる。」
ヤマタニ達は子供達を残して、酒場へと入って行った。
まだ昼間だったこともあって、酒場には客はまばらだった。
「どいつが子供達の持ち主なんだ?」
「どうやら子供達の話にあった者は、あの左端の席にいる男みたいですのぅ。」
スケさんの言葉を信じて、ヤマタニは男がいる席へと歩いた。
「酒を楽しんでいるところ悪いが、話がある。」
「なんだ、お前達は?」
帽子を被った髭面の太った中年の男が、ヤマタニを見て言った。
「あんた、外にいる猫獣人の子供達の持ち主か?」
「ほぅ、目敏いお客さんだ。」
「何人欲しいんだ?」
「11人全部ほしい。」
「ほうほう、それなら金貨44枚だな。」
「現金払いなら、即引き渡そうじゃないか。」
「高すぎるな。」
「ああ、前は安かったんだがな、今は事情が変わってよ、相場が跳ね上がったんだよ。」
「なるほどな。」
「しかしな、タダで譲ってもらいたいな。」
「ははは、つまらない冗談はよしてくれ。」
「いいや、冗談ではないさ。」
ヤマタニがそう言うと男の表情が一変した。
「話は終いだ、帰ってくれ。」
「いいや、帰らない。」
ヤマタニはネックレスに付いているエンブレムを見せた。
「なんだそのエンブレムは?」
「暗黒地帯の猫獣人村の領主の印さ。」
「なんだって?」
男はヤマタニを疑った。領主がじきじきに、眼の前にやって来て、住人を返せと言う。
どう見ても貴族の領主には見えるが、そんなはずはないと思った。
「そんなのはまやかしだろ?さっさと去らねーと痛い目にあうぜ!」
男と一緒にいた者達が立ち上がる。
「バキバキ、ボキボキ。」
男達はヤマタニを睨みつけて、指の関節を鳴らした。
「そうか、ではスケさんカクさんがお相手しよう。」
スケさんカクさんがヤマタニの前に立った。
「そんな綺麗なねーちゃんが相手をしてくれるとさ。」
「ひひひひっ。ベッドの中で相手をされてーな。」
「俺は可愛いメイドさんに相手をしてもらいたいな。」
「そうか、コメリア相手をしてやれ。」
「はい、マスター。」
「なめやがって!」
ヤマタニに殴りかかったが、コメリアに腕を掴まれて、そのまま真上に投げ飛ばされた。
男はそのまま落下して床にぶつかって倒れる。
「くそっ!」
スケさんに襲いかかったが、逆に叩かれて床に倒れた。
「こんちくしょう!」
カクさんに襲いかかった男は膝蹴りされて、そのまま腹を抱えて泡を吹いて倒れた。
「ぐぬぬ。」
髭面の男は、テーブルにそれぞれの奴隷権利書と、呪具の首輪解除キーの鍵束を置いた。
「持ってけ。」
髭面の男は汗を流し、悔しそうに言った。
「分かってくれて嬉しいよ。」
ヤマタニは権利書と鍵束を持って、外にいる獣人の子供達の処へ戻った。
そして、全員を奴隷解放してやった。
「お前達は今日から自由になったぞ。」
そう言ってヤマタニは奴隷権利書を、全て破り捨てたのだった。
「やったー!ありがとう領主様。」
「ありがとう領主様!」
「わーい。これで帰れる。」
獣人の子供達はやっと話せるようになって、ヤマタニに感謝の言葉を言った。
「お前達は俺が村まで送ってやるぞ!」
ヤマタニがそう言うと子供達は歓声を上げた。
「わーっ!やったー。」
「とーちゃん、かーちゃんに会える!」
ヤマタニは、獣人の子供達を装甲車に乗せ、暗黒地帯の猫獣人村へ向かうのだった。
一方、そうとは知らないミリーナ達は、グスタヴのスラムで悪党に絡まれたり、貧困にあえぐ者達から縋りつかれ散々な目にあっていたのだった………。
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