ジリン村の奇跡
第6話 ジリン村の奇跡
ヤマタニは、セタンの街の南東にある、ジリン村へとやって来た。
ジリン村は普通の農村だった。
ヤマタニはとりあえず、村を一周歩いてみる。 とくに変わった様子はなかった。
「これは俺の出番はないなぁ。」
仕方ないから、装甲車に乗り込もうと思っていたら、村人から声をかけられた。
「あなた様は、ヤマタニ神様でしょうか?」
「神ではないが、ヤマタニだ。」
「おお! するとこれが噂の銀の馬車ですな。」
ヒゲを生やした男は物珍しそうに装甲車を眺めた。
「それで、何か用があるのか?」
「そうだった。ありますとも。」
「この村には医者はおりませんので、是非お力を貸していただきたいのです。」
「俺は医者ではないが、回復はできるぞ。」
「それはありがたい。」
ヤマタニ達はヒゲの男の家に連れて行かれた。
「病気の娘と、足を怪我した息子がおります。」
「なるほど、回復できるかわからないが、やってみよう。」
「流行り病のようでして、寝ていてもよくはならなかったのです。」
伝染病かなにかか?
「全員マスクを使え。部屋には俺だけ入って回復させる。」
そう言って部屋に入ったヤマタニは、ヒーリングをかけてみた。
すると、娘の顔にあった発疹がみるみるうちに消えて無くなった。
熱もひいて穏やかな表情になり、呼吸も安定した。
「よし、たぶんこれなら大丈夫だろう。」
部屋に入ってきたヒゲの男が驚いていた。
「これはすごい、一瞬で回復した。」
「衰弱しているから、このスポーツドリンクとスープを飲ませてあげなさい。」
ヤマタニは二つの瓶を渡した。
「ありがとうございます。」
「あとは怪我した息子はどこだ?」
「はい、こちらです。」
隣の部屋にいた少年の所へやって来た。
「どれどれ、足を診せてくれ。」
ヒゲの男が怪我した足の包帯をといた。
だいぶほっといたのか、傷口が膿んでいた。
「これは酷いな、膿んでいるじゃないか。」
少年は痛みに耐えていた。
「早速回復させよう。」
ヤマタニがヒーリングしていくと、たちまち元の綺麗な状態に戻っていった。
「うわー、凄い。もう治ってる。」
少年はものすごい回復力に驚いていた。 そして足を動かして、しまいには立ち上がって歩いてみせた。
「これは噂以上だ。」
「他の病人や怪我人も診てもらわんとな。」
「えっ、まだいるのか?」
村の家を一件ずつ回って、ヤマタニは次々と回復させていった。
「おいおい、この村は患者が異常に多くないか?」
「まぁ、それは重税であまり食べていないから、体が弱っているせいでしょうな。」
「あのヤナークが重税?」
ヤマタニは疑問に思ったが、村を管理している奴が、横領でもしているのやもしれない。
「あとでヤナークに手紙を書いて、重税を何とかしてもらおう。」
「おお、そんな事までしていただけるのですか。」
「まぁ、隣同士の付き合いだからな。」
「それにヤナークは悪い領主ではないから、頼みを聞いてくれるはずだ。」
「ありがとうございます。」
「あの、まことに恐縮なのですが、牛の病気も治せますか?」
「やったことはないが、試してみよう。」
ヤマタニは寝ていた牛を回復させた。
牛は回復するとすぐに立ち上がってみせた。
「この牛は殿に礼をいっておりますなぁ。」
「え、カクさんは牛とも会話できるの?」
「会話というか念話みたいなものですが、人間みたいに会話はできませんからのぅ。」
「まぁ、治ってよかった。」
ヤマタニは人間にも牛にも感謝されて嬉しかった。
ヤマタニは病人や怪我人の次に、家畜の回復をしてまわるはめになってしまう。
人や牛や馬など100回近く回復して、ヤマタニはかなり疲れる一日になってしまった。
「ヤマタニ様、今日はありがとうございました。」
村長の家に招かれたヤマタニ達は、地酒や料理でもてなされた。
「ヤマタニ様、まさに奇跡の神様でしたな。」
「神様ではないが、俺もこれだけ回復できるとは思ってもみなかった。」
「さぁさぁ、この村のワインですが飲んでみて下さい。」
ヤマタニはワインを一気に飲み干した。
「おー。これは悪くない味だ。」
「10年ほど寝かせたワインですから。」
「いいのか、そんなものを飲ませて?」
「何もお礼ができないので、これくらいはさせて下さい。」
スケさんカクさんも遠慮なしに、鶏の丸焼きを食べていた。
コメリアはやはりメイドとしてヤマタニの側に立って給仕している。
ヤマタニは満足そうに笑いながら酒を飲んだ。
後日だが、ヤマタニがヤナークに手紙を出した結果、村を管理している者の不正が発覚した。
村の税収は元に戻され、村に平穏が訪れた。
またヤマタニの今回の働きにより、村は救われたのだった。
このことは代々に語り継がれていくことになり、『ジリン村の奇跡』として歴史に残ったのだった。
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