バルカスの街での互いの救済活動
第15話 バルカスの街での互いの救済活動
リミーナ達は、美しい青年の神の銀の馬車に乗って東へと移動していた。
「本日は、このバルカスの街に宿泊しましょう。」
美しい青年の神が皆に言った。
「しかし、もっと行けば、さらに隣の街まで行けますよ。」
ミリーナとしては、早く神を連れ帰りたがったので、先を急ぎたかった。
「しかし、救済を待っている方や、馬も休ませてあげたいのです。」
「まぁ、ステキです。救済を求める者や馬までも心配されているのですね。」
「はい、人々を救済して回るのが、我が人生の目的なのです。」
「とても素晴らしいですわ。」
ミリーナが思い描いていた神が、こんなに美しい青年だったなんて……。
我が領地を救ったあかつきには、恋愛関係になってしまったら、どうしましょう。
ミリーナの妄想は膨らんでいった。
しかし、ミリーナの予想に反して、バルカスの街へ着くと、美しい青年は高級な宿を探し求めた。
部屋が気に入らないと、別の宿屋へと向かって行く。
やっと気に入った宿屋に宿泊すると決めたが、今度は長々と値引き交渉が続いた。
それに、食事は質素な料理を食べるのかと思ったら、高級な料理と酒を好んだ。
翌日は救済活動をするとか言ったのでついていくと、街中で物売りを始めたのだった。
「我らが神が皆様を救済するためにやってまいりました。」
「こちらに並んでいる品々をご覧下さいませ。」
「神ヤマタニ様の霊力のこもった御札は、家内安全や幸運をもたらします。」
「こちらのペンダントは、持っているだけで幸福になれますよ。」
「こちらの品々を買っていただいた方には、もれなく神に祝福を与えられます。」
などとやっているのを、ミリーナ達は目撃した。
「これは我らが探し求めた神なのでしょうか?」
ガイルとゲイルが不審がってミリーナに言った。
「しかし、これも旅をするために必要な路銀を稼いだり、御札とかにも人々を救済するための物なんでしょう。」
「いや、しかし……。」
ミリーナ達の間にわずかだがズレが生じた。
◆
ヤマタニ達も、このバルカスの街へとやって来ていた。
いつものように安宿に泊まり、弱者救済と悪人退治を開始していた。
ヤマタニとコメリアとハチは、貧民街を中心に弱っている者を見つけては回復していった。
スケさんカクさんは、悪人を競って退治している。
「マスターのヒーリングも凄いのですが、やはり回数が桁違いですね。」
「そうなのか?」
「はい、普通は数回からせいぜい20回が限界でしょう。」
「しかし、マスターは数百回は使ってますよ?」
「まあ、それだけ体が弱っていたり、怪我や病気の人が多いんだ。」
なんだかヤマタニとコメリアの会話は噛み合わない。
それだけヤマタニは救済活動を夢中でやっていたからだと、コメリアは思った。
「しかし、この街の下水管理は酷いな。」
「マスター、汚水を道に捨てたり、川も汚れてますね。」
「そうだな、匂いも酷いが、長く居ると病気になりそうだな。」
ヤマタニは中世のイギリスやフランスの歴史を思い出した。
酷い衛生状態でペストが蔓延していた時代だった。
「よし、直接領主に提案してみよう。」
ヤマタニが領主に意見しに行ったが、会ってもくれなかった。
仕方なく手紙を書いて渡したが、果たしてヤマタニの提案が聞き入れられるかはわからなかった。
「せめて石灰を買ってきて撒くとしようか。」
「あとは清掃活動もしないと、だめだな。」
江戸時代の江戸みたいに、徹底的なリサイクルがあれば衛生状態がよくなるだろう。
やはり仕事のない者にゴミ処理をさせて、金を稼がせながら街の衛生状態を改善させるのが良いかもしれない。
ヤマタニがずっとこの街にいて、衛生活動できれば別だが、そんなことはできはしない。
「よし、仕事のない者を集めて清掃活動をさせよう。」
怪我や病気などで回復した者や、仕事のない子供達などを集めた。
食べ物を与える代わりに清掃活動をさせたら、なかなか効果的だった。
食べ物目当てに集まる貧民達が大勢集まり、街は徐々に綺麗になっていった。
続いて大量に買ってきた石灰を撒いた。
「ふぅー。清掃と石灰でやっと呼吸が楽になった。」
「この貧民街の住人は、悪臭で鼻が麻痺していたに違いないな。」
「しかし、マスター、これを継続してもらわなければ、また元に戻りますよ?」
「そうだなー、明日にでも街の有力者や金持ちなどに協力を呼びかけよう。」
「あとは領主が動いてくれたら良いが、もし駄目だったら、奥の手を使うしかないな。」
「マスター、奥の手とは何ですか?」
「それは最後の手段だよ。」
夕方になり、スケさんカクさんが帰って来た。
「殿、街の悪人退治をしてましたら、大物の悪党も一緒に捕まえましたよ。」
「それはお疲れ様。」
「それで手配賞金が金貨200枚ほどになりましたよ。」
「カクはスケより多い金貨201枚ですぞ!」
「たった1枚差ではないか。」
「1枚でも勝ちは勝ちじゃ。」
今日もまたスケさんカクさんは張り合っていた。
「まぁまぁ、その金でまた人助けの旅ができる。ありがとうな。」
ヤマタニがそういうと、スケさんカクさん、コメリアは笑った。
「わん。」
何故かハチも笑っていると、ヤマタニは思うのだった。
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