子羊は美しいニセモノ神を連れ帰る
第14話 子羊は美しいニセモノ神を連れ帰る
ハングスの街にヤマタニのニセモノが現れ、救済活動をしていた。
その様子を忍のゲンバが目撃していた。
「ヤマタニ様、噂のニセモノを見て参りましたぞ。」
「ほうほう、それは興味深いな。」
「どんな感じだった?」
「はい、ニセモノは、若い青年で老婆にヒーリングをかけたのですが、回復はできなかった様子でした。」
「それで老婆が文句を言ったら、護衛の女に凄まれて老婆は退散して行きましたね。」
「リュウマチは回復できないのですか?」
「うーん。たぶん老化そのものだから、回復してもよくはならないのだろうね。」
「つまり、若返らなければ治らないのですか?」
「そうだね〜。神の奇跡のヒーリングも万能ではないのだよ。」
「ヤマタニ様役が青年、護衛が女二人、メイドや犬までいましたよ。」
「へー。何だか実際に見てみたくなってきたな。」
「ははは、ニセモノを本物が見に行くのですか?」
「そうだとも。」
「それで、ニセモノを懲らしめるのですか?」
「いや、悪さはしてないし、救済活動を代わりにやってくれてるしな。」
「それでは、このゲンバがニセモノの所まで、ご案内つかまつります。」
「はは、それは楽しみだ。」
ヤマタニ達はゲンバの案内で、ニセモノが救済活動していた場所まで向かった。
◆
ミリーナは美しい青年の神に声をかけた。
「貴方様が、あの神と言われている、ヤマタニ卿ですか?」
青年は振り返った。若い青年で美しい顔立ちをしていた。
その隣には、そこそこの微妙な美人の護衛の女二人と、微妙な美少女メイドと野良犬みたいな犬がいた。
「ん?私に何か御用ですかな?」
ミリーナ達は跪いた。
「はい、神ヤマタニ様にお願いがあってやって参りました。」
「どうか我が領地の危機をお救いください。」
「それはどんな危機なのですか?」
「はい、ヤマタニ卿は街を再生させるのは得意中の得意と聞きました。」
「我が領地は貧困に喘いでおりまして、ヤマタニ様のご助力で立て直していただきたいのです。」
「なるほど。」
「して、謝礼はいかほどいただけますのかな?」
「それはヤマタニ様の働いた実績に基づいて、謝礼金をお支払いいたします。」
「そうか、そうか。」
「それならば、やってやってもよいぞ。」
「ははっ。ありがとうございます。」
こうしてミリーナの神を追う旅は終わり、ニセモノのヤマタニを連れて戻ることになった。
◆
ヤマタニがニセモノがいた貧民街にやって来たが、すでにミリーナ達と移動したあとだった。
「どうやら、すれ違いだったみたいですね。」
「ふむ。残念だな。」
「しかし救済活動が半端だな。」
「まだ路地裏に倒れている者がいるし、壁にもたれかかった者達もいるぞ。」
ヤマタニ達は一人一人、丁寧に回復してやった。
手持ちのスポーツドリンク、スープ、パンなどを与え、倒れていた者は立ち上がっていった。
「殿、逆転再生能力のレベルが上がってませんか?」
「ほんにほんに、回復速度がますますですのぅ。」
「そんなラーメンにんにく増し増しみたいにレベルアップしたら良いがな。」
「らーめん?」
「いや、聞き流してくれ。」
「マスター、リュウマチの老婆が回復してほしいと言ってきております。」
「そうか、しかし老化したものは回復ができないかもしれないぞ?」
「体が辛くて辛くて、痛みで涙が出ますのじゃ。」
「わかりましたよ。一応やってみますが、効果は期待しないでくれ。」
「はいはい、お願いします。」
ヤマタニは老化にヒーリングをかけた。
すると老婆の顔がみるみる明るくなっていく。
「こりゃ凄い!痛みが消えた。」
「貴方様こそ、本物の神様だ!」
「ははは、俺は神ではないが、治ってよかったな。」
ヤマタニは次々と奇跡的な回復をしていった。
「マスター、パン・スープ・スポーツドリンクも無くなりましたよ。」
「そうか、もう暗くなってきたしな、黄昏の都亭へ帰るか。」
「はい、マスター。」
「スケさん、カクさん。帰るよー。」
スケさんカクさんは街のごろつき共を懲らしめて回っていた。
数珠つなぎで縄に縛られた数十人の男達を、スケさんは引っ張ってきた。
カクさんも負けず劣らず、数十人の悪者を引っ張ってきた。
「今日も大量に捕まえてきたな。」
「賞金稼ぎで旅費が浮いて助かるな。」
スケさんカクさんは捕まえた人数で張り合っていた。
「私が多く捕まえた。」
「私の方が多く捕まえた。」
「マスター、スケさんカクさんの捕まえた人数は同じですから、また賞金額で決めましょう。」
「わん。」
「ははは、ハチもそうしようと言っているのか。」
「それじゃ、衛兵の詰所に寄ってから帰ろう。」
ヤマタニ達は、ニセモノ達にはかまわず、呑気に今日も一日の救済活動を済ませて帰った。
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キリスト教などに出てくる『迷える子羊』は、目が良くない羊が迷うことなどの比喩です。
羊飼いの声を頼りにして、新しい放牧地へ連れて行ってもらうのですね。
作中のミリーナがまさに羊で、迷ってニセモノを本物に思い連れて行きます。
ちゃんと神様が導いてやらないと困りますね。




