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在りし日の空【架空戦記】~南方無人島の独立戦隊 零式観測機で 斯く戦えり~  作者: ともぞう


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第8話 帰投

ゆっくりと艇を、駐機している浜へ進める。

入江の奥まったその浜は、

木や枝で上部を覆われていて、

さながら洞窟基地のように見える。

砂浜に艇が乗り上げる。

ザザッ――と鈍い音がして、ようやく止まる。

降りようとしても、足に力が入らない。

風防に手を掛け、なんとか立ち上がった。

自分の足ではないみたいだった。

駐機場のほうでは、

大阪のチーフと九州が心配そうにこちらを見ている。

艇を見た瞬間、チーフが顔をしかめた。


「……うわぁ、なんやこれ。飛び方が変やなとは思うとったけど、えらいボコボコにされたなぁ」


「すまない……整備長。俺の操縦のせいで、機体を痛めてしまった」


後部座席を見る。

新米は、まだそこにいた。

大丈夫だろうか……。


九州が水筒を差し出してくる。

一気に飲み干すと、彼はにこりと笑って、

すぐ機体へ手を伸ばした。

目を細め、外板を撫でるように確かめていく。


「外板の穴はなんとでもなりますばってん……桁が逝ってないとよかですが……」


そのとき、新米がよろよろと降りてきた。

かなりふらついている。


「おい、新米! お前は大丈夫なんか!?」


チーフが心配そうに近寄る。


「……弾……当たっただ……」


「何やて!? どこや!! はよ見せ!服脱げ!」


大阪チーフが慌てて新米の装備を外そうとする。


「…ちがうだ。敵に…弾が……当たっただ……」


「はあ? 何やそれ!めっさ心配させやがって……! ほんま、肝冷やしたわアホンダラ。…まぁ、とりあえず休め。大変やったなぁ、お前ら」


チーフは肩を落とし、

それから真剣な目で機体に視線を戻した。


「チーフ、とりあえず外板ば外して、中ば見ますか」


「そうやな。……すまんがボン、こりゃあ修理は長丁場になりそうやで!」


そんな声を背中に聞きつつ、

エースは待機所へ向かった。

椅子に座った瞬間、もう動けなくなる。


「何度も戦ってきたが……こんなのは初めてだ」


よろよろと新米もやってくる。

部屋の隅にどさりと倒れ込んだ。


「新米……だ、大丈夫か?」


「……生きてますだ……。動けないだ……」


「俺もだ……参ったよ」


新米が無事だと分かって、少しだけ気が抜ける。

タバコに火を付けようとして、マッチを探した…


…が、その後の記憶がない。


気がつくと――


ロウソクの火が、ゆらゆらと揺れている。

ふと見ると、

目の前にくしゃくしゃになったタバコが

一本落ちていた。

どうやら火を探したまま、眠ってしまったらしい。


「火を探して寝たのか…疲れてたんだな…俺」


見回すと、新米も壁にもたれたまま、

よだれを垂らして寝ている。

エースがゆっくり身体を起こすと、

ロウソクの明かりの向こうで、

チーフが工具をいじりながらこちらを振り返った。


「おう!起きたんか。ちょっとはスッキリしたんか?」


「……どれくらい寝てましたか?」


「どれくらいかは分からんが……もう深夜の23時や」


「だいぶ寝ましたね。……機体のほうは?」


「まぁ、なんとかなるやろ。九州が心配しとった主桁も無事やったわ。でも、さすがに明日は無理やな。もう少し時間をくれ」


「すんません……」


「謝るなや! お前らが命がけで持って帰ってきた機体や。俺らが死ぬ気で直すのが当たり前やろ。まぁ、いま九州が裏で雑炊作っとるから、まずは腹ごしらえや!」


バーン!と背中を叩かれたが、どこか暖かく感じた。


「整備長……少しお聞きしたいことが……」

エースが真剣な目に変わる。


「なんや?」

お読みいただきありがとうございます!

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次回更新は7月3日13時30頃を予定しております。

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