第46話 相棒
────機体から離れるぞ!
砂浜を走り、近くのヤシの木に身を寄せた。
「旦那!肩!!」
「肩……?」
左の肩を見ると……
何かが刺さっている。
「なんだ……これ。」
触ろうとすると、鋭い痛みが走った。
「新米!抜いてくれ!」
「ダメだべ!!」
「なんでだよ!」
「九州兄貴が言ってたべ!
刺さったもんを無理に抜くと、
逆に血が止まらなくなることがあるって!
そのままがいいべ!」
「…………。」
こいつ……。
そんなことまで教えてもらっていたのか……。
「旦那、触っちゃダメだべ。」
「分かったよ……。」
しかし……
痛ぇ。
ヤシの木に背中を預ける。
─────ブォォォォォ……。
「……新米。」
「分かってるべ。」
二人同時に空を見上げた。
まだ……
終わっていない。
砂浜には……
浜に乗り上げ…傾いた零観。
その上空では、
一機の二式水戦が旋回している。
そして……
そのさらに上。
三つの黒い影。
「ありゃ…野田さんだな……きっと。」
俺たちを逃がすために……
まだ戦ってやがる。
それにしても…上手い!
旋回する時の半径を徐々に
狭くしたり…広くしたり…。
緩急をつけ…意表を突く機動…。
「ありゃ…凄いわ。」
旋回する度に…キラリと輝く翼。
「あれがエースだよな…。俺は熱くなりすぎる。」
「旦那。これ飲んでクールダウンだべ。」
見ると、新米がヤシの実を差し出していた。
「お前いつの間に…それにチーフ直伝の英語かよ!
…まったく…。ありがたく頂くよ。」
「野田大尉殿すげぇ…べな!…あっ!!」
敵が一機、煙を吐いた!!
「よっしゃ!!…痛ってーーー!」
ガッツポーズをしようとして、
左手を持ち上げてしまった。
曳光弾の瞬きも…翼の輝きも…
どんどん小さくなって行く…。
そして、音も聞こえなくなった…。
残ったのは…波の音だけだった。
一旦ヤシの実で喉を潤し…機体に戻る。
「こりゃ…ダメだな。
必要なものだけ持っていこう。」
改めて見ると…色々なところに被弾している。
「よく飛んでたなぁ…相棒…。お疲れ様。」
横では新米が、何かを取り出している。
「なんだそれ?」
「九州兄貴が、いつも持たせてくれんだべ!」
包みと水筒…?あぁ…いつものオヤツか。
「それは大事だな!あと工具も持っていくか!
チーフに怒られそうだしな!」
手早く準備を整えると…歩き出した。
だが…数分後─────
「なぁ……新米。」
「なんだべ?」
「基地って……どっちだ?」
「…………。」
「…………。」
「旦那が操縦してたべ?」
「前が見えなかったんだよ!!」
「そったら事言われても…太陽がここだべ…?
たしか…砂浜が…こうなって…いて…。
こっちでねえべか?」
「流石だなぁ!こっちに行くか!」
「ただ、旦那。暗くなる前に…葉っぱ集めねぇと
ダメだべ。」
「葉っぱ?なんで?」
「蚊が来るべ。」
「蚊?」
「葉っぱ燻して煙出すべ。
少しは寄って来なくなるべな。
この前、村で教わったべ!」
そうだった…ここはその心配があるんだった。
「とりあえず…基地に近づこう!」
─────時計を見ると
12時を回っていた。
「だ、旦那あ。少し休んだほうが…。」
「ん?まだ行けるぞ!」
「これ…旦那の血だべ。今日は休んだ方が…。」
見ると…
俺の足跡に沿って…黒い染みが続いている。
「そうだな…今日は休む…か。」
「なら……あそこにするべ!」
新米が元気よく、走っていく。
「全く…元気だなぁ…アイツは。」
新米の後を追おうとしたが…足に力が入らない。
「クソ!気合いだ!歩け俺!へこたれるな!」
目の前が…歪んできた…。
本間…すまん…俺は…
次の瞬間…
目の前が真っ暗になった─────
お読み下さりありがとうございます。
次回公開日は
10月13日(火)の予定です。




