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『在りし日の空 』~南方無人島の独立飛行隊 零式観測機で 斯く戦えり~  作者: ともぞう


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第35話 【続】死闘

 ────全員戦闘配置!!



「旦那!11時の方角!敵、急速接近中!」


 新米の声が響く。


「見えてる!」


 奴は素早い…

 俺よりも運動性能が高い。


 速さはあまりない…

 …が、小回りがきく。



 右へ……

 左へ……



 こちらの動きを嘲笑うように

 不規則な機動を繰り返している。



「旦那ぁ!来るべ!」



「分かってる!」



 間合いを測る。



 一撃だ!この一撃にかける!



 まだだ……


 まだ……



「今だ!!」



 ────パチン!



「…………。」


「…………。」


「外してるやないかい!!」


「クソッ!!」


「ボン!後ろや!!」


「なに!?」



 ────プ~~~ン



「うわぁぁぁ!!」



 俺は頭を抱えて伏せた。



「旦那ァ!敵前逃亡は銃殺だべ!!」



「九州!蚊帳を閉めてるよな!?」



「もう閉まっとるたい!」



「なんでいるんだよ!!!」




 ────奴の名は



  「ハマダラカ」



 何人もの仲間が苦しんでいる。


 下手すると…死ぬ。


 キニーネという薬も尽きかけている。


 刺されないように努力はしているが…




「旦那!12時の方角!反転して戻ってくる!!」




 この部屋には4人いる…


 それなのに…なのに…


 右へ逃げる…

 奴も右へ来る。


 左へ逃げる…

 奴も左へ来る。



「なんで俺ばっかりにくるんだよ!!」



 正直…叩きたくもない。


 潰したくもない…気持ち悪い…。


 だが…やらねば!!



「旦那…美味いんだべなぁ…きっと。」


「せやなぁ…血の気多いでなぁ…。」



 少し離れたところで…余裕こいてやがる…。



「おい!新米!加勢しろ!」


「これも旦那の為だべ。倒してけろ。」


「ボン!照準器もってきたろか??」



 皆、好き勝手言ってやがる。


 先を読め…先を読むんだ…。



「旦那ぁ!カウルフラップ!!


 カウルフラップ狙った時さ思い出すんだべ!」



「うるせぇ!黙ってろ!!」



 奴は…直進してくる…俺を狙って…


 もう少し…もう少し引き付けて…


 ────パン!


 ん?いない?? どこいった??


 ふと、皆を見る。


 ニヤニヤしている。



「どうした?なにがおかしい?」



「旦那…手開いてみたら分かるべ…ヒヒヒ。」



 手を開くと…見てはいけないものが…。



「こ、これ…どうすんだよ!これ!」



「外に手ぇ洗いに行かんほうがよかですね。

 蚊のおるけん。」



 九州…お前…鬼か…。



「困ったやつやのぉ。ほれ!

 これに擦り付けたらえぇわ。」



 チーフがスパナを渡してくる。



「……お前、それ後で使うんだろ?」



 というか…



「……零観に使うやつじゃないだろうな?」



「使うで。」


「やめろ!!!」



 ────プ~~~ン



「…………。」


「…………。」


「…おい…九州…。」


「なんです?」


「蚊帳……本当に閉まってるんだよな?」


「閉まっとるたい。」



「じゃあ、なんで増えてるんだよ!!!」



 また出やがった…。


 どこか穴が空いているのでは…。


「旦那…オラがやるべ…。」



 ────バシ!



  1発…1発…かよ。


 しかも服で拭いてるし。



「お前絶対近づくなよ!絶対に!!」



「そんな…寂しいこと言ったらダメだべ。」



 新米が擦り寄ってくる。



「バカ!来るなって言ってるだろ!」



「まぁ、バカ騒ぎは…それくらいにせんと。」



 チーフが外を見る。


 外からは呻き声が聞こえてくる。



「マラリアは怖かですよ…。

 高熱が出て…ガタガタ震えて……。

 頭も関節も痛とうなる。

 吐いたり、腹ば下した者もおりますけん。

 酷かときは…

 死ぬこともありますけん…。」



 確かに…基地のあちらこちらで…

 苦しんでいる隊員をよくみる。



「薬はないのか??」



「キニーネは効きますばってん、

 在庫はほとんど無かごたります。

 アダブリンも有効ですばってん……もう……。」



 そうか…

 最近は輸送船もこないと言っていた。



 ここまで不足しているとは…。



「なぁ…現地の人は、

 どうやってしのいでいるんだ?」



「現地の人…だべか??」



「そうだ。なんか知恵があるはずだ。

 聞いてみてもいいんじゃないか?」


 ここに長く住んでいるんだ。

 生き残る知恵は…あるはず。



「最近は出撃も少ないで…聞いてみるわ。」


 外から、また誰かの呻き声が聞こえた。


 敵機なら見える。


 撃ってくるなら、避ければいい。


 こちらから撃ち返すことだってできる。


 だが……


 あんな小さな奴が相手では、  


 そうもいかないらしい。


 空では何度も生き残ってきた。


 それなのに……


 こんな小さな虫一匹が、


 人の命を奪っていく。



「……厄介な敵だな。」



 俺が呟くと…


 新米が蚊帳の向こうを睨んだ。


「んだな……。」


 ニューギニアには……


 空とは違う戦場がある。


 そして俺たちは、


 まだ知らなかった。



 この地で待っている本当の死闘を────





 

 いつも『在りし日の空』を読んでいただき、

 ありがとうございます。


 9月より、公開日を

毎週 火曜日・土曜日の週2回に変更いたします。


 これから物語も少しずつ大きく動いていきます。


 一話一話、大切に書いていきたいと

 思っておりますので、

 今後ともお付き合いいただければ幸いです。


 次回もよろしくお願いいたします!


 次回公開日は

9月5日(土)13:30となります。

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