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『在りし日の空 』~南方無人島の独立飛行隊 零式観測機で 斯く戦えり~  作者: ともぞう


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第22話 連携

 ────カツオ節でいいべ!!


 エースが鬼の形相で識別表を叩きつける。


「お前なぁ!しっかり名前覚えろって言ってるだろ!」


 新米はP-38を指差し…


「こいつはカツオ節。ほら、二本並んでるべ、切り口が鋭そうだべな!」


 「……おい。F4Uは?」


 「こいつはエビ反りだ。羽の形がそれっぽいべ」


 「……もういい、俺に分かるように報告してくれ…」


 補給船からの補給物資の中に

 新しい識別表が入っていた。


 新米に覚えさせようとしたが…

 やはり無理だった。


 感性が独特なのか…

 カツオ節にエビ反りかぁ…

 何となくわかるが…


 まぁ、何とかするしかない。


 だが…

 こんなに新鋭機が出てきてるのか…

 F6Fというのもいるらしい。


 そう考えながらお茶を飲んでいると…


「ボン!出撃や!急いで準備せなアカン!」


「…??なにかあったんですか?」


「移動中のお偉いさんが撃ち落とされたらしい!捜索依頼や!」


 そう言うと…

 チーフは走って駐機場へ行ってしまった。


「お偉いさんの捜索だってよ…行くぞ新米!」


「探してどうするんだべ?オラ…無電…無理だべ」


「だから、勉強しろといってるだろ!…まぁ、とりあえず飛ぶぞ!…悪いが多分死んでる。戻ってからでも大丈夫だろ。」


 二人で駐機場まで歩いていく。

 駐機場から爆音が鳴り響いた。


「チーフ張り切ってるなぁ。もうエンジン回してるわ。」


「旦那がマッタリしすぎだべ」


 そんな会話をしながら機体に乗り込む。


「座標はここら辺らしいわ。気ぃつけていってこいや!」


 エンジンの出力を上げる。


「砂、食うなよ……」


 エンジンが唸りを上げる。

 最初は低く…次第に鋭く

 浜辺の空気を震わせるように

 音が膨らんでいく。


「フラップ、よし。舵、よし。機関、よし」


 俺は短く呟き…

 スロットルを押し込んだ。


 砂煙が、機体の下から細く立ち上がる。

 それが一瞬で風に引き裂かれ、白い尾を引いた。


「行くぞ、新米!」


「んだ!」


 最初は重い。

 まるで海に引き止められているみたいに

 脚がなかなか離れない。


 だが、速度が乗り始めると

 機体が少しずつ軽くなる。


 波音が後ろへ流れ

 砂浜の起伏が滑るように消えていく。


 その瞬間、操縦桿をわずかに引く。

 ふっと、機体が持ち上がった。


 白い砂の筋が、あっという間に細くなっていく。

 海面は朝の光を受けて、薄い銀色に揺れていた。


 俺は機首を少し押さえ

速度を保ったまま海風に乗せた。

 浜辺では、チーフと九州が

 小さく帽子を振っているのが見えた。


 俺の後ろでは、新米が大きく手を振っていた。


「旦那…あんまり乗り気じゃないんだべ?」

 

「だってさ…撃ち落とされんだろ?もう死んでる可能性の方が高いだろ。それに俺は偉い奴はキライなんだよ。」


「チーフが、旦那は昔…上官ぶん殴ったって言ってたべな。」


 新米の笑い声が伝声管から聞こえる。

 そう…俺は上官嫌いだ。

 偉そうにふんぞり返って…ろくに

 戦いもしやしない。


 素晴らしい上官もいるだろう…

 ただ俺はそういう人に出会っていない。


「とりあえず、座標のとこまで飛ぶぞ!撃ち落とされた…って、事は敵がいる可能性が高い!注意しろ!」


「了解だべ!」


 ジャングルの上を飛ぶ。

 こんなとこに不時着しても

 助からないだろ…。


  それにお偉いさんなら…直掩機がいたはずだ…

  それなのに俺達が駆り出される…。

  全く…どうなってるんだよ…


 そんなことを考えていると、

 一筋の黒煙がみえた。


「多分…あれだ!新米!周囲の警戒怠るな!」


「今のところ周りにはいないだべ!」


 スロットルを開け黒煙に近づく。

 だんだん見えてきた。


 一式陸上攻撃機だ…。


 木にぶつかり胴体が折れている。

 しかも激しく燃えたようだ。

 ほとんど全焼している。


「周りに人がいるか?俺からは見えんな…新米どうだ?見えるか?」


 …この一言が…余計だった。


「旦那ぁ…見た感じ誰も居ねぇだよ」


「了解!もう少し旋回する」


 何回か旋回した時だった

 ふと上空を見上げると…


 なにかが突っ込んでくる!

 反射的にラダーを蹴った!


 ドムドムドムドムドムドム


 とんでもない量の曳光弾が

 機首を横切る!


「カツオ節だべ!!」


 叫びながら新米が

 座席を反転させ射撃姿勢をとっている。


「新米に周囲を警戒させておけば…。一緒に捜索しちまった…」


 敵は…1機…ではなかった。


 10機以上…上空を旋回している。

 P38…カツオ節か…。


 さっき攻撃してきた敵が

 向きを変え上方から攻撃してきた。


「旦那!8時上方くる!!」


 叫びながら応射している。


 こちらは横滑りさせながら退避する。

 オーバーシュートさせて撃ちたいが…


 相手が速すぎる。

 一瞬で離れて行ってしまう。


 上方では敵が悠々と旋回している。


「あいつら…遊んでやがる…」


「遊ぶ?どうしたべか?」


「上に敵がいるだろ。あいつら上で高みの見物だ。」


「オラ達…見世物だべか…」


 さっきの敵は集団に戻っていく。

 別の機体が…集団から離れた。


「新米…お前の弾丸ぶち込んでやれ!こっちは追いかけられないからな。だが向こうから来てくれるんだ!撃ちまくれ!」


「了解だべ!覚悟しろカツオ節!!」


 新米の後部機銃で

 何とかしてもらうしかない。

 俺は避ける事だけに集中しよう。


 集団から離れた敵が

 凄い勢いで近づいてくる。


「7時上方!」


 ドド!ドドド!ドドドドド!


 新米の機銃が吠える

 俺はラダーを蹴り

その後、機体をロールさせる。


 曳光弾は空を切り

 敵は凄まじい速度で

 横を駆け抜けていく。


「新米どうだ?当たったか?」


「当てたども…ピンピンしてるだ。」


「それでいい!当て続けろ!!」


 攻撃した敵は集団に戻っていく。

 変なとこにでも当たったか?

 さっきの奴は反転して攻撃してきたが…


 もしかすると…


 そんなに撃たれ強い機体じゃ

 ないのかもしれない…


 そういえば…

 機体上面に色々付いていたなぁ…

 あそこを狙えないか…


 また別の敵が集団から離れた。


「新米!敵が突っ込んでくる角度を教えてくれ!浅いとか深いとかでいい!それと、B25の時と同じくエンジン付近の突起部を何でもいいから狙え!」


「わかったども…敵の正面しか見えないべさ…」


「そこは俺がなんとかする!頼んだぞ!」


「了解だべ!!」


 集団から離れた敵が

 凄い勢いで近づいてくる。


「5時上方…角度浅い!」


後ろを見る。

そろそろ射撃してきそうだ…


「もう少し…もう少し…引き付けて…今!!」


 右ラダーを蹴る!


機体が横滑りし…

敵の射線から外れる…


 スロットルを全開にし

 そのまま操縦桿を引きつける!


 機体は一気に急上昇した。


「新米!撃ち下ろしだ!奴の背中にぶち込んでやれ!」


新米の視界に

 機体上面が大きく広がった…



 ドド!ドドド!ドドドドド!


 

 カツオ節のエンジン付近に

 銃弾を叩き込む!


 曳光弾が吸い込まれた瞬間…

 黒煙を吐き出した。


「旦那!オイルなんちゃら…やったべ!!」


グラりと傾きつつ

 そのままカツオ節は


 下方を駆け抜けていった───




お読みいただきありがとうございます。


次回更新は8月4日(火)

13:30頃を予定しております。

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― 新着の感想 ―
ブーゲンビルの海軍甲事件に繋がりましたね。 話の展開がとても面白いです。 暑い日が続きますが、お身体にはご自愛下さい。
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