37話 初めての送迎
「……ふー。終わった。」
小型マイクを外し、パソコンのカメラをオフにする。
時刻は朝7時15分
早朝のリモート会議が今終わった所だった。
元々夜型だった俺は夜中の2~3時に海外と定例会議をしていた。
だけど安達さん長電話したかったから、朝6~7時に調整した。
オフィスのミーティングや企画会議も全て12~13時を避けた。
安達さんの昼休憩に合わせて休憩取りたいから。
残業も今日からは極力リモートにしよう。
だって安達さんを迎えに行かなきゃいけないという。使命が俺を待っている!!!
友達になってから夜は早めに就寝するようになった。
安達さんが早寝だから。
離れててもなるべく同じ時間軸で生きていたい。
そのおかげか最近すこぶる体調がいい!
「さて!出社前にちょっとだけ仕事片付けとくか。」
1度ぐいーんと両腕を伸ばし肩を鳴らした。
グリグリと腕を回したあと仕事用の男の顔となる。
なるべく仕事を片付けて今日もお昼に安達さんとLINUしたい!
仕事中もスマホ使えるけど……ながらは嫌だ。
俺はなるべく安達さんに全集中したいっ!
ちゃんと心を込めてLINUを打ちたいんだ。
だから努力を惜しまない。
彼は澪桜を繋ぎ止めたくて必死だった。
とてつもなく不純な動機だが……結果は必ずもたらす。
でないと無能な給料泥棒になってしまうから。
それは俺のプライドが許さない。
仕事の出来る男、結城周の全てが一直線で澪桜に向かっていた。
……そのせいでタイムスケジュールを巻き込まれているとは夢にも思わないであろう結城の部下たちがとても憐れ。
女性社員などからは感謝すらされていたというのに。
知らぬが仏。
まさに言葉通り
ある程度仕事を片付けパソコンを閉じた。
澪桜を迎えに行く支度を素早く済ませ
鏡を見る。
ネイビーのノーカラージャケット、白いカットソー、黒の細身のスラックス……ビジネスカジュアルにまとめた服装。
大丈夫、完璧。
「ふふふ。嬉しい。嬉しすぎる……今日から安達さんと一緒に、出社出来るなんて。」
ニヤニヤが止まらない。
澪桜は朝の9時までに出社。
結城の会社は出社時間が決まっていないから、いくらでも合わせられる。
「俺……外資系に務めてマジで良かったかも。ふふ」
こないだまではGWのやすみが違うとイライラしていた癖に現金な男だ。
口笛を吹きながら颯爽とマンションを出た。
澪桜を迎えに行く為に。
──────
ソワソワしながら澪桜は待つ
「……本当に来る気なのかなぁ。」
『着いたら連絡しますので、家の中で待っててくださいね』
先程来たLINU。
自力で行けるのに。
朝は別に危なくないし、なんか申し訳なさすぎる。
でも結城さんと会話しながら楽しく出社できるのは嬉しい気もする……
ガソリン代要らないって昨日言われたけど
至れり尽くせりすぎて居た堪れない。
なにか……お返しを……
うーん……思い浮かばない。
澪桜は悶々と考えながら部屋の中をウロウロしていた。
ポコン
通知が来る
ドキッとする澪桜
画面を見ると
『着きました。』
待たせてはいけないと慌てて外に出る。
少し小走りで公園の方まで行った。
するとハザードを炊いて立って待つ結城が居た。
「おはようございます。安達さん」
朝日に照らされた爽やかで透明感のある男性。
優しく甘い声が澪桜を呼んだ。
初めて見る……ビジネス姿の結城
「っ……おはようございます結城さん」
この人、朝は特に破壊力すごいなぁ。
スーツが似合い過ぎている。
フェチなら万死。
と感心し眩しそうに見つめる。
「……?……昨日は晩御飯ご馳走様でした。フリカッセ……本当に美味しかった」
照れたように言う結城。
ドアを開けて澪桜を待つ
「本当に気に入って貰えたみたいでなによりだよ。
食べたいものがあったらリクエスト聞くよ?何がいい?
今日は帰り買い出しするから特別。普段はあまり答えられないかもしれないからね。……君に野菜食べさせないといけないから。」
冗談ぽく言うその仕草が堪らない。
「っいいんですか!?と……得意料理とか……ありますか?苦手な料理とか……」
ドキドキしながら聞く。
作って貰えるだけで天にも登る気持ちなのにリクエストまで!?
幸せ過ぎて死にそう。
そう思う結城
(肉じゃがとか……ハンバーグが得意とか言うのかな。可愛いな)
想像する
「……苦手なのは和食だね。作れるけど私が作ると全部同じ味になるからちょっとね!きんぴらとかは弁当のおかずに作るけど!
得意料理は特にないよ。ジャンルは……台湾、中華、韓国、スウェーデン、フランス、イタリア、メキシコ、タイ、インド、モロッコ、……そこら辺かな」
「料理聞いたのに国の名前沢山出ちゃったよ!!!
リクエストできない!絞れない!!!!
そんな色んな国の料理、俺知らない!!!!!!」
「ええーなんでだよぉ。せっかく聞いたのにぃハリラとかどう?」
「何!?ハリラって!?止めて!朝から知らない単語出すの!!!」
想像の斜め上すぎて思わず朝から突っ込むピュアボーイ(28)だった。




