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エピローグ 結婚式 ①

失礼致しました!1年後→半年後に訂正です!

 


 半年後――



「拓海……もうちょい御祝儀丁寧に扱いなさいよ」


 ポソッと可愛らしい小さな声が響く。

 隣から気怠い声が返る。


「ああ? ……ちゃんとしてんだろうが。

 !……本日はお忙しい中、ご出席ありがとうございます。こちらの方にご記名頂きまして、あちらのガラスボードの中にお持ち頂いた星型の……はい。そちらを入れてください」



「ありがとうございます。お預かり致します」


 出席者は言われた通りに星型の木のフレークをガラスボードに入れて、松井に御祝儀を渡しその場を離れていく。


「……なんか前から思ってたけどその営業スマイルと口調がねぇ……胡散臭いのよ」


「おま! ……バカ! これで何人の女が骨抜きになったか知らねぇからだろ!?」


「……はいはい。ウソ乙。モテないのは私が一番よくしってるもん」

 


「こんのっ言わせておけばっ!! 俺に惚れぬいた癖に何を言う!?」


「なんですって!? この私の美貌にメロメロになったのは拓海の方じゃん! 『私の事、好きなんですか?』って聞いたら『……だったらどうなんだよ』とか言ってたじゃん!」


 顔真似しながら松井は言い返した。

 勿論、異議を申し立てる。


「俺はそんな変な顔してねぇ!! ナイスワイルドだったはずだ!!」


「フツメンがうるさい!」



「……さっきからうるさいぞお前ら。受付してくれるのはありがたいけど、控え室まで丸聞こえなアホ喧嘩やめてくれる?」


 音もなくヌッと現れた高身長の儚げ美人。

 ギャーギャーと騒いでいた二人が見上げる。


「よっ! 主人公」


「お疲れ様です! 結城さん! 顔面のコンディション、今日は際立ってバッチリですね☆」


「……それ、喧嘩売ってる?」


 新郎の服を雑に着崩し、現れた周。

 ワイシャツの胸元は開きっぱなし。裾はズボンから出しっぱなし。タイは首にかけっぱなし。


 着替える途中で気になって出てきた模様。


 山本は笑って周の背中を叩いた。



「てか、お前気軽に出てくるなよ。参列者はビシッとキメた姿を一番に見たいもんなんだから。ほら、準備して待機してろ。なんか飲み物とかいるか? 緊張して喉カラカラだろ」


「ありがとう、でも大丈夫。既に飲み過ぎてトイレが近くて困ってる」



「あはははは! 顔と言ってること合ってない!」


 周の冗談に松井は爆笑する。

 楽しそうな二人に、コソッと周はポチ袋を差し出した。


「それはそうと二人とも受付、ありがとうな。この後渡せるタイミングがあるか分からないから。これ受け取って」


「わ、悪りいなぁ」


「あ、ありがとうございます」


「いや、ささやかで申し訳ないよ。それから、澪桜からもあるらしい。それは引き出物に入ってるから後で確認してね」


 ヒラヒラと手を振り微笑んだあと、周は控え室に戻って行った。


「さて、出席者全員来たし。御祝儀預けて俺らも行くか。沙也加、鞄忘れんなよ」


「あ、ちょっと待ってよ!」


 御祝儀袋の入った紙袋を両手に持って受付から離れた山本は小久保に全て渡しに行く。


 言われた通り、鞄を持って駆け寄った松井は、嬉しそうに華やかなドレスワンピースを揺らした。



 ***


 1時間後


 続々とチャペルに人が集まっていくのが、窓ガラス越しに見える。

 澪桜の親戚に、2人の友達、職場の人間……そして。



「新郎様、お時間ですのでチャペルのほうにお越しください」


「はい」


 もう一度、ペットボトルの水で口の中を潤した周はソファから立ち上がり、控え室を出た。


 薄いグレーのセットアップに白いシャツ、そしてネイビーのベストとアスコットタイ。


 ウェットワックスで軽く濡れた質感を出し、ハーフアップにセットされた色素の薄い髪が柔らかく靡く。




 コツコツ


 美しい姿勢で歩みを進める。


 小久保が笑顔でチャペルのドアに手をかける。


「いよいよですね」


「はい」


「……新郎様、参列者側を向いて祭壇の前にお立ちになってお待ちください。バッチリキマってますよ!!」


 緊張が筒抜けなのか、茶化すように言われた周は眉を下げる。


「そうかな? ……そうだといいんですけどね」


『新郎様のご入場です』


 扉の向こうから、司会の声が聞こえ、厳かにスタッフ達がチャペルの扉を開いた。


 カツ


 カツ


 一歩一歩、足を前に出す。


 左右の参列席へと交互に視線を向けた。


 山本、松井さん、冴木さん、藤堂、ハーディン、佐々木さんに、佐野くん。


 優しい目で、微笑みかけられ胸に温かいものが溢れてくる。

 気持ちを返すように笑みを深めた。


 更に歩みをゆっくりと進める。


 久しぶりにお会いする、澪桜のご親戚の方々。澪桜の帰省について行った時人数が多くて呆気に取られれてたっけ。


 目が合う度に頬が綻ぶ。


 すると声が聞こえてきた。


「周くん! カッコイイぞぉ」


「後でツーショット撮ってねぇ!」


 明るい澪桜の親戚がヤジを飛ばし、笑いが起こる。会場が一気に明るくなった。


「ぷはっ! ……はい喜んで」


 思わず周の顔が崩れる。

 和やかなムードが溢れはじめる中で祭壇に近づく俺は


 次の瞬間、懐かしい二人からの視線に気づく。


 祭壇の手前の席。


 まさか、来ると思っていなかった人達が座っている。


 涙を拭う俺によく似た顔の母と、その肩を優しく摩る色素の薄い……父。



 軽く頷く父に、俺は会釈と笑みを返した。



 祭壇の前に立って、振り返る。

 吹き抜けガラスの天井からはスポットライトのように、俺が立つ位置に光が集まる。


 優しい視線を向けてくれる、結婚式に出席してくれた人達。


 俺たちを祝福してくれる、大切な人達。


 澪桜、俺はこの日をずっと


 ずっと待ってた。



「新郎様、心のご準備はよろしいですか?」


 インカムから何かを聞いたスタッフが声をかけてきた。


 喉を鳴らし、俺は静かに頷く。


 すると、スタッフは何かを誰かに伝える。


 徐々に心拍が高まる。

 だって、それが意味するのは――



『皆様、チャペル入口にご注目ください。只今より新婦様のご入場です』


 司会進行の後


 アメージンググレイスの曲が、静かに流れ始めたチャペル内。


 その歌声がより、神聖さを孕み、参列者は静かに振り返る。

 俺は瞬きも忘れて、その視線の先の扉に集中した。


 ガチャリ


 チャペルの重厚感のある扉が、ゆっくりと開き、眩い程の光が隙間から漏れ始めた。



 少し小柄なお父さんに手を引かれ、チャペルに一歩、また一歩と進む。


 背後の扉がゆっくりと閉まる音がした。


 逆光で眩しくてシルエットしか見えなかった彼女の姿が、ゆっくりと鮮明になっていく。


 繊細なレースとジャージー素材のエンパイアドレス。

 5mのマリアヴェールは澪桜が歩く度にしなやかに後を引き、参列者の視線を釘付けにする。


 手に持つブーケはパンパスグラスをベースにした、俺の色味を取り入れたドライフラワーブーケ。

 緩く巻いた濡鴉色の髪がヴェールの中でさりげなく揺れる。


「うわぁ」


 どこからか、感嘆の声があがった。

 ため息も。



 チャペル内サイドの縦長い窓にはめ込まれた真っ青なステンドグラスが午後の日光を燦々と浴びて色鮮やかに輝き、斜光にそってキラキラと埃が舞う幻想的な光の道を進んでいく。


 まるで聖女かのような神聖さを孕む彼女の



 宝石のような瞳が


 俺を捉えた。


 口パクで何か言っている。


『カッコイイよ』


 何言ってんの。

 生きる奇跡みたいな君をお嫁さんにしていいのかなって、幸せすぎて今もまだ信じられない俺に。


 愛しさをこれでもかというほど滲ませて深い笑みで返す。



 この世で一番美しい花嫁に目を奪われたまま、俺はずっと息をするタイミングを見失っていた。




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― 新着の感想 ―
読了しました!! 今回もめちゃくちゃよかったです!! 周、澪桜の前だけど、人前だからここではとろけることはできないですね笑 かっこいいよ、なんて言われたら狡さすぎて蕩けること間違いなしの台詞! 結婚…
山本さんと松井ちゃんの距離が一段も二段も深まっているのが時間の経過として感じられました。 そして、式に参列している周の両親。 これまで、期待しても叶わなかったのに、周にとって一番大事な瞬間に二人揃って…
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