287話 闇堕ちダークヒーロー(偽物)
※今回の回は胸糞話です。性加害を匂わせる描写、犯罪描写がございますので苦手な方はブラバされてください。
あらすじで言うと、黒瀬は周への復讐を夢見るしつこいクソ野郎。
というお話ですのでそこだけ把握して頂ければ。
11月最後の金曜日。
「ちょっとわりぃ。電話だ」
物凄いウーハーが鳴り響く箱。
黒瀬は電子タバコを吸いながら分厚く重たい扉を開けた。
外の空気がしっとりと肌に触れる。
一つ、白い煙を吐いて通話にした。
『誠様、夜分遅くに申し訳ございません。CEOからの言伝でございます。「今回はだいぶやらかしたようだな。金で解決出来なくはないだろうが、お前はもうクレストリンクは諦めて、うちの会社を継ぐことを考えて帰ってこい」との事です。示談金はこちらでご用意致しますが、これ以上は……』
言葉を濁し、釘を刺す側近にイラつく。
「ちっ! わかってる。……親父はいつまでに帰ってこいって?」
『こちらで弁護士をご準備致しますので、物件などの引き払いが済み次第帰ってくるようにと……。ご面倒であれば手続きの為に誰か迎えに行かせましょうか?』
「そうだな。10日後くらいに来られるか? アメリカに戻る手続きと示談については全部任せる。まぁテキトーに荷物くらいはまとめておいてやるよ」
『かしこまりました。CEOからはもうこれ以上は庇えないとも言われておりますので。私と致しましても、クレストリンク社との提携を切られるかもしれない瀬戸際なのでできれば――』
「既に俺は懲戒解雇されてるんだ! これ以上クレストリンクと何があるんだよ!?」
思わず外で電話に向かって怒鳴り上げた。
裏路地だから人はいないが一応まわりを確認し、黒瀬は咳払いをする。
「……とにかくだ。お前は何も気にしなくていいんだよ。10日後に誰かこっちに寄越せ」
『……かしこまりました。では、失礼致します』
通話終了の画面を眺めながら、またたばこを咥える。
思い切り息を吸って体にニコチンが廻るのを感じながら呟いた。
「俺にはまだ、最後にやることがあるんだ」
薄く口角を上げる。
(俺はな。しつこいんだ。結城 周……お前だけは許さねぇ)
「璃乃から情報を買いたいが……いや足元見られて脅されるかも知れねぇから無理だな。……興信所でも使うしかねぇか。その前にアイツらに話持ちかけねぇと」
一服を終えて上機嫌でまた箱に戻る。暗がりにブルーライトが目に鮮やかで、独特の匂いが漂うクラブ。
心臓と腹部に直接振動が来るような重低音が響く。
酒に酔いしれながらその場のノリで相手を探す女
自分に酔心しながら音に体を委ねる男。
その1番奥に向かおうとした。
最近行きつけのこの箱のVIPルーム。
だがスタッフに止められてしまった。
「黒瀬様。大変申し訳ございません。本日はVIPルーム貸切でして」
「ちっ……そうか」
先程まで共に飲んでいた取り巻きが笑いかける。
「黒瀬さん、どしたんすか?なんかまた面白い遊びっすか?」
「こないだ連れ込んだ女は良かったよな」
「また遊びましょうよ! 黒瀬さん! 適当に女探して」
媚びるような、諂うような動きで取り巻きは黒瀬をもてはやす。
気持ち良くなった黒瀬はスタンドテーブルに肘をつき人差し指でテーブルに集まれと合図した。
「ちょうどいい女見つけたんだよ。まだ調べてないがな。多分上玉だ。……手伝うか?ある男の婚約者でな」
「NTRっすか!? やべぇ! 興奮する」
「金貰えるならオレ何でもしますよ。黒瀬さんにはお世話になってますしね」
「俺も!」
ケラケラと笑って酒を煽る3人の若者。
まだ大学生ほどの幼い顔つきで見た目は普通の男性達。
あからさまに黒瀬の友達とは思えないタイプだ。
「じゃあ、俺が興信所使って女調べるからお前らは車、準備しとけ。足がつくような車じゃダメだぞ?」
「ここに連れてくるんすか?」
「いや。ここじゃ警察に目をつけられるだろ。察しろよ」
「黒瀬さん悪ぃ!! それ犯罪じゃないっすか!」
「いいんだよ。俺は結城のクソに死ぬほどコケにされたんだ! キャリアも失った! だから今度は俺が痛い目に合わせてやるんだよ!! あいつの女めちゃくちゃにしてな!!」
「誰か知らねぇっすけど、いいっすねそれ! 闇堕ちダークヒーローじゃん!」
「そうだ! 俺を怒らせた罪を思い知らせんだよ。俺の逆鱗に触れるとどうなるか……お前達も気を付けろよ?」
「やべぇ! 怖え!!」
あははは! と笑い飛ばす男性。
初めこそ小声で話していたが爆音が響く箱だからと油断し、酒によりテンションが上がっていった黒瀬達は最後には大声で下卑た話をしてしまった。
壁に耳あり障子に目ありという言葉を知らない愚かな4人の男達。
そこに
まさか自分を尾行している興信所の人間が紛れ込んでいるなんて思いもせずに……。




