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282話 酒は飲んでも呑まれるな

すみません!変な時間に寝落ちしておりました!!!!


最新話

更新させて頂きます!



「おー佐々木ちゃん!珍しいね、こんな日に」


「暇だったから来てみた〜。チカちゃん元気だった?」



 ニコニコと花開くような笑顔で小柄な佐々木がいつもの席に座る。

 黒板に目を向けて手書きのおすすめを眺めながら席に着くなり寛ぎ始めた。



「お陰様で。最初何飲む?」


「今日はクラフトビールにしよっかな。黒いのがいい」


「OK。俺のおすすめ出していいかな?」



 嬉しそうに頷く佐々木に、近重は笑って慣れた手つきでおしぼりを渡し、飲み物の準備をする。


「チカちゃん達の結婚式はいつ〜?」


「んー? 12月だよ」


「いよいよだね! 緊張してるでしょー?」


「そりゃもう。彼女はラストスパートだしね。ブライダルエステラッシュだよ」


「ラッシュ!! そんな言い方する!?」



 楽しく談笑しながら深い色味、茶色い泡がシュワシュワと音を立てる飲み物を受け取った。


「んー! 美味い! 惚気話を聴きながらの酒は格別だね!」


「佐々木ちゃんってたまにオッサンになるよね」



 カランコロン


 入口の流木が音を奏でた。


 近重が目を向けたと同時に声が上がる。


「「ゲッ!」」


「お、俺やっぱ今日はやめとくわ」


「待ちやがれ!! テメーには話があんだよ! 佐野ぉ」


 トマト降臨。

 佐野が帰ろうとするのを袖を掴んで佐々木が阻止する。

 近重はオロオロしながら交互に見やった。


「ま、まぁ落ち着いて。二人とも! な?」


「お、俺は落ち着いてるだろ!? 噛みつかれてるだけだぞ」


「オルァ! 誰が狂犬だ!!」


「何も言ってねぇ!! 黙って座れ!」


 グイグイと引っ張られ強制的に隣の席に座らされた。

 ゲンナリとした表情の佐野は近重に助けを求めるように目を向けるが、ただ、首を振って返す。


 近重からすると正直、自業自得だと思っているから。


 あの時点で彼女と佐々木が繋がっていると分かっていたはずなのに、神崎の色香と演技に騙され暴走したのは佐野。


 ただ友達のヨシミとして、物理に出たら止めてやろうと見守っていた。



 佐野がガチガチに固まっている。

 すると意外にも佐々木は静かに呟いた。


「お前さ……」


「……も、もう既に怒られたよ。安達先輩にも土下座バリに謝ったし、結城さんにも謝った。許してもらったし、仲良くなったし!」


 それは佐野の個人的な意見。


「いや、澪桜さんから聞いたから知ってるけどそうじゃないよ。アンタさ、奪ってどうする気だったの?」


「え?」


「澪桜さんを、そんな浮気して他の男に簡単に乗り換えるような女にしたかったの?」


 鋭い指摘に佐野は慌てた。


「ちっ違う!」


「じゃあ何?」


「それは……」


 返す言葉もない。

 その通りだから。


 佐々木はクラフトビールに視線を落として続けた。



「それに初対面の女に唆されるなんて、マジで見る目無さすぎて笑えるよ。……神崎さん、あの人懲戒解雇だよ?うちの職場で結城さんの盗撮幇助に盗用、そして結城さんになりすまして機密情報を他社に漏洩してね」


「えーーー。エグ」


 思わず近重は声を上げた。

 佐野は唖然とする。


 あの日、俺をストーカーに仕立て上げられるつもりだったのかもと仮説を言っていた。

 好きな人である結城さんですら陥れようとしていた事が彼の仮説の証明となり、言葉を失う。



「……」


「信じられないって顔してるね。でもあの人はそういう人だったんだよ。そして悔しいけど私、あの女の気持ち少しわかるの。あんたもそうでしょ」


「うん」


 “推し活”


 佐々木が言っていたそれは恋を憧れに昇華したから出来たこと。

 同じだったからこそ言葉の重みが違った。


「お互い、恋に恋してた。幻想に憧れて夢見てただけなんだよね。相手を人間として捉えないでさ」


 素直に受け取る。

 同胞だから分かる気持ち。


 佐野は頷いた。


「そうかもしれないな。不思議と今はもう、あの時みたいな気持ち、全く無いんだよ。二人に幸せになってほしいなとしか。それに俺、結城さんみたいな男になりたいし」


 若干ズレる佐野の心境。

 佐々木は嬉しそうに頷いた。


「それそれ! それでいいんだよ! ココちゃん!! 一緒に箱推ししようよ! 結城マネージャー目指すなんてアンタ分かってんじゃーん」


 ぐしゃぐしゃと髪を撫でられ佐野は慌てる。


「うわっ!! や、やめろよ! そしてココちゃんってなんだよ!?」


「心って書いてキヨって読むんでしょ? だからココちゃん」


「や、やめろよ! そんなあだ名つけられたこともないよ! 犬みてぇじゃん」


「なんで? いいじゃん、優しそうだし可愛い名前でピッタリだと思うけどね。ココちゃーん」


 近重は目の前にポメラニアンが見えた気がした。

 耐えきれず爆笑する。


「重!お前まで笑うな!」


 こうして今日もウルグスの夜は賑やかにふけていった。



 ***



 翌日土曜日



 衣擦れの音だけが響く。

 薄く目を開けると、いつもの天井が見えた。


 やけに痛い……関節と頭。


 吐き気と目眩が抑揚を付けてまだ意識が朦朧としている佐々木を襲う。


 口が酒臭い。


 そして昨日の記憶も……曖昧だ。


(確かウルグスで飲んで……夜中歩いて帰ろうとしたら危ないからってココちゃんがタクシー相乗りしてくれてそれで……?)


 ゴソ……


 動いていないはずなのに、毛布と布団が動く。


 慌てた佐々木は重たい体を無理やり起こした。


 背中がやけに肌寒い。恐る恐る毛布の中身を見ると……肌色一色。


 ゴツン。何か硬い物に足が当たる。


「ん……もう朝か……いてて。飲みすぎたなぁって、ここどこ?……」


 布団をかぶっていた、ポメラニアンと目が合う。


「「あああああああああああああああ」」


 部屋中に朝っぱらから騒音(デュエット)が響いた。



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― 新着の感想 ―
佐野はワンちゃんなの、すごくよくわかるので笑いました。 名前は「ココ」しかもポメ。(≧∀≦) 憧れを推しに昇華できたのがよかったです! そして、衝撃のラスト!!さて、この二人はどんな道を選ぶのかとて…
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