幕間 喧嘩の後の……
土曜日。
仲直りした二人は、式場に足を運んでいた。
「では、結婚式の予約は来年の4月15日、午後の部とさせて頂きますね」
小久保が微笑んで言う。
澪桜は頬を染めながら落ち着きが無さそうにワサワサしていた。
「い、いよいよだぁぁ!! ほ、本格的に始まった!!」
本気で嬉しそうにする澪桜に目を細めて呟く。
「……だね。俺も緊張してきたよ。何を準備しないといけないのか……タスク作らないと絶対忘れる!!」
気合いを入れる二人に、小久保が微笑んだ。
「結城様、澪桜様、これから半年間、どうかよろしくお願いいたします! 沢山打ち合わせして、コンセプトも細かく固めていきましょうね!! 分からない事はいつでもLINUで聞いてください!」
「私、宝探しゲームしたいです!」
「今言うんだ」
周と小久保が笑う。
しかも宝探しゲーム。
普通の結婚式で見ないような催しになることこの上なし。
「おー、珍しい。それ、いいですね! ……そうですねぇ。ガーデンを使って催しましょうか!!」
「ええ!?」
周が驚いていると、更に続けた。
「地域のレクリエーションで使った事のある、ウチの備品にお風呂に入れるヒヨコがあるので、それを隠して見つけてもらう! どうでしょう? 参列者様が汚れないように配慮して、オブジェとかたくさん置いて、そこにランダムに隠す!」
「良い!! 良いです!! それから、披露宴で食べるディナーをそこそこに止めて、途中からバーベキューしたいです。あと、式を終えた後に餅まきもしたい。めでたいからね」
澪桜からやりたいことが溢れるように、出てくる出てくる。
周は驚いていた。澪桜がそこまで余興を考えていた事に。
だがどれも結婚式と関係ない。
「おおー! それは珍しい! うち、実家が和菓子屋なのでお手伝いしましょうか!? 生餅の準備!」
「うおー! 紅白餅でお願いします! 柔い餅、撒き散らしたいです!!」
「言い方。そして結婚式に餅まきて」
周はツッコミしかできない。
この二人が話し始めると、止まらないから。
「ウチの田舎では、家が建つと餅まきしてたよ?」
「……俺見た事ない」
「良かったね! 周さん! 人生初で餅を撒く方だなんて最高だね!!」
「嬉しくない。意味がわからん」
「……じゃあ……下で餅を拾う方に? スカート履くと確率が上がるよ」
「そういう意味じゃない!! 履くか! スカートなんか!」
「ぶふ!!」
思わず笑う小久保。取り繕うように咳払いをして、続けた。
「バーベキューは……メインディッシュのヒレステーキからにしましょう! 豪快にシェフに外で焼いて貰いましょう! なので披露宴の途中から下に降りて貰う感じにしましょうか?」
「いいねぇいいねぇ♪ バーベキューでエビ食べたい!持ち込み大丈夫ですか?」
「エビて。肉じゃないんかい」
「あとイカ」
「全然いいですよー! ネットで買って、ウチに直送して貰ってもいいし!」
「おーーーい! まだ人前式に要る物すら確認してないでしょ、澪桜。あと無くて大丈夫か聞くイベント、あったんじゃないの?」
周のフォローで、やっと我に返る。
「そーだった! えっとですね。フォトムービー、したくないです。あと、ケーキ入刀。あと司会の人要らない。馴れ初めの語りも要らないし、親友や親戚からの祝辞も要らない」
「えええええええええええええ」
「その代わり、うちの親戚カラオケ好きなので、カラオケさせて下さい。……ん? 小久保さん?」
「ほら。言ったでしょ。こんな空気になるよって」
びっくりしすぎて意識が何処かに行ったまま固まった小久保におーい、おーいと声をかける澪桜の後ろで、周は一人ため息をついた。
***
「あー! 楽しかった! 日付決まったね! 大安吉日だ」
「俺たちがBALで出会った日」
振り返ると周が微笑んでいた。
「昨日はごめん。俺、嫉妬してばかりで最低だね」
「まーた謝ってる。もーいいってば。私こそごめん。自分から説明しとくべきだった」
「そんな事ないよ」
都心から離れた場所にあるオリエント・グレイス。
景観が美しくその中で二人は共に未来を想う。
「周さん」
「何?」
「大好きだよ」
「……俺もだよ」
澪桜の手を掠め取り指を絡めた。
決めることや準備する事はきっと多い。
だけどその工程一つ一つに幸せを噛み締めていくんだろう。
「さて。お腹空いたね。何食べようか」
青空の下、甘く優しい声が響いた。




