275話 巻き込み事故
翌日金曜日。
週一のオシメイトの進捗報告と4回目のベータテスト推移のカンファレンス当日。
アポを取っていた岡本のオフィスに向かう周。
社員証をかざし、自動ドアを抜ける。
「お疲れ様です」
「お疲れ様です」
優雅に一礼して、エグゼクティブフロアを進んでいった。
ノックをして扉を開けると……藤堂と冴木までいる。
思わず片眉をあげてしまった。
「お疲れ様です……あれ? お忙しいメンツが何でこんな勢揃いなんです?」
呆れた顔の岡本が周に座るよう促しつつため息混じりで呟いた。
「お前からのアポは毎回不吉だからだよ。……前回の件で思い知った」
「ですね。……まさか女の執念でオシメイトの骨組みを流出させるなんて」
「いや、それ僕のせいじゃないですよね。……まぁ、結局問題ないらしいし、いいじゃないですか!それに一番の被害者、僕だしっ。ふふ」
あっけらかんと笑う周に三人はまた深い深いため息をつく。
「それで? ……今日はなんの呼び出しだ?」
「そうそう。これ見てください……封筒の中をそのまま覗き込んでね」
封筒をまず岡本に渡した。
それを恐る恐る覗き込んだ岡本は目を見開く。
「……こ、これは……結城、お前一体どうやった!?」
順番に確認し、それぞれ同じ顔で驚愕していた。
「まさか本当に神崎と繋がって裏工作していた事暴いてたのか!?」
「……いえ?」
キョトンとした顔で周は首を傾げる。
「「「はああああああああああ!?」」」
「おっお前……! 証拠があったら神崎と繋がってる男の方の素行も調べるって言ってたじゃないか!」
「だって……あの場はハーディンマネージャーまで居ましたし、流石にそう言いますよ。まぁ、ここでの会話は録音もされてないし、カメラには封筒の中身見えませんから問題なしですね!」
そう。このエグゼクティブフロアのオフィスは映像は残る。だが機密情報保護の為、音声録音はされない。
定期的に盗聴器などが仕込まれていないかの検査まで行われるほどだ。
「お前……それ、だいぶグレーゾーンな橋渡ってることわかってるか?」
「ええ。分かってますよ? 相手が全く落ち度が無ければこちらに非がある。……でもまぁ。尾行されてるなんて気づかなければ……咎められる術もない」
「いや……そうだが……」
冴木が苦い顔をする。
「この写真の日付、10月29日……なんと、神崎が懲戒解雇された日なんですよね。ふふ、怪しいでしょ? だから後で経理部行って調べてみます」
「だが……ちょっとこれは」
「……大掃除。皆さん手伝ってくださいね。確定したら……ハーディンマネージャーにもお願いしないと! ……ではお忙しい中お時間割いて頂いてありがとうございました。失礼しますね」
封筒を持って周は頭を下げ、颯爽と出て行った。
残された三人は
現実が受け止められないという苦々しい表情で眉間を押さえる。
「ああ。あいつと関わると本当にろくな事がないですな」
藤堂が誰に言うでもなく呟いた。
「いや、面目ない。入社当初から藤堂マネージャーには負担ばかりかけさせてますね……はは。今回のこれ、確定したら……腐った部分全て洗い出さないといけなくなる……ほぼ監査ですね。この年末に……」
頭痛を感じているのか、冴木の顔色はすこぶる悪い。
「まぁ……腐ったままよりはいいと考えて……手を貸すしか他無さそうだな。ははは、この役職になってまで、部下からこんな面倒事の共犯者にさせられるとは……末恐ろしいな結城は」
遠い目をした岡本が何かを悟ったように呆れて笑った。
「いや、全くですよ」
「ほんと、今回で最後にして欲しい」
その言葉に藤堂と冴木は激しく同意し……今から巻き込まれる事のデカさと面倒くささにただただ、項垂れていた。




