↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社会不適合者の恋愛論~変人に恋は難しい~  作者: 澄泉
女郎蜘蛛編 〜動き出す蜘蛛〜
258/318

250話 トマト、再び



「は〜美味しかったぁ」


「私も〜」


 満足そうな二人を眺めながら、澪桜も微笑んだ。

 少し丸みを帯びたお腹を摩る。


「だねぇ、大満足だしおなかいっぱい」


「にしても良かったんですか!? わ、私まで結城マネージャーに奢って貰っちゃって……」


「本当に! なんか申し訳ないです」


 既に会計が終わり、二本目のワインを愉しんでいた三人。澪桜へ頭を下げる。


「んー? 私も要らんって言ったんだけど、ゴリ押しされたからねぇ。本当は私が奢るつもりだったのに。……まぁ、後でお礼言っとくよ。ここのお店、凄く美味しかったしね!」


 いつもの事だよ。

 と、軽く笑う澪桜。


 そこに、食後のコーヒーが運ばれてくる。ゆらゆらと上品に湯気が登る、芳醇な香りが部屋を埋めていく。


 宴の終わりを告げる雰囲気に、つい松井が声を漏らした。


「でもまぁ。いつもの澪桜先輩に戻ってくれて良かった。今日は本気で心配しましたから」


 ピタッとワイングラスを傾ける手を止め、澪桜が気まずそうに慌てた。


「さ、沙也加ちゃん、その話はもう。……恥ずかしいよ」


「……ん? 今日何かあったんですか?」


 佐々木が松井の真面目な声に反応し、ナイフの動きを止めた。



「それがさ〜、今日休憩中に澪桜先輩が泣いちゃって」


「や、やめ――」


「えっ!? どうして!? パワハラ!?」


「……だとしたら良かったんだけど。その場合、澪桜先輩は鉛の女だから泣くどころか、返り討ちにしてたと思うし」


「失礼な! 私は放射線通すぞ!?」


「澪桜先輩、それ、ツッコミズレてますから」


 二人のやり取りについていけない佐々木が唖然としていると、松井が彼女に目を向けて何かを思い出したかのように手を叩いた。



「あ。そうか、佐々木ちゃん、結城さんのとこの部署だったっよね? そこにさぁ〜、神崎って人いる?」


「え。神崎……さん?何でお二人が彼女をご存知で……?」


 一気に曇る佐々木の表情を見逃さなかった松井は、ここぞとばかりに事の顛末を掻い摘んで聞かせた。

 SNSや佐野からむしり取った画像を見せながら。



 佐々木も驚きの余り開いた口が塞がらないというように、最近あった事を話し始めた。



「わ、私の部署もそれで少し雰囲気悪くなってて! 結城マネージャーの誤った噂を聞く度に訂正して回ってたとこです! 

 ……ただのストーカーじゃないですかっ怖っ! しかもこの匂わせ、あからさまにデスクで撮ったっぽい写真もあるし!」


「まだその匂わせまで神崎って人か確定ではないんだけどさ。爪とかほぼ同じだから7割クロだよねぇ〜」


「ですね。しかもその生々しいベッド・イン。偽物だとは思いますけど。澪桜さんの立場なら……一瞬ショック受けるのは無理ないです。……まぁ、あのコンプラ査定機が職場恋愛、しかも浮気なんてありえないけど」



「コンプラ査定機……ぶふ」


 ものすごいあだ名につい、笑ってしまう澪桜。


「ひ……被害者の澪桜先輩が笑っちゃダメですよ……ひひ」


 松井もつられて肩を揺らす。



「……そういえばどうやってその性悪写真を見せられたんですか? 神崎さんが直接出向いてきて?」



「いやいや、うちの部署にさー。佐野って後輩がいるんだけど、ソイツが持ってたんだよ。

 なんか変に正義のヒーローぶってさー。『安達先輩を助けたかったんですぅ〜』とか言っちゃって。最悪だよ」


「も、もういいって沙也加ちゃん。私、周さんのこと疑ってないし、佐野くん謝ってくれたし!」


 佐々木はBARウルグスのことを思い出す。


「え? ……待って。佐野って人、女性じゃないんですか?」


「男だよ男。今年入ってきた新入社員」


「まさか……佐野心優(さのきよまさ)って人……?」


 松井が首を傾げた。


「そうだけど、なんで佐々木ちゃんが知っ――」



 ダァァァァァン!!!!


 ビクッ!


 二人は物凄い轟音に肩を揺らした。

 何事かと目の前のテーブルに目を向けると、か細い佐々木の拳から鳴った音だった。



「あの野郎……あれだけ言っても分かんなかったのかぁぁぁぁぁ!!! 上等だぁぁぁぁ! 久々にアタシ直々に焼き入れてやらァァァァ!!」


 怒号が個室内にこだまする。



「さ、沙也加ちゃん。目の前にスケバンがいるよ。スケバン……」


「澪桜先輩。それ昭和です」


 今ので一気に酔いが覚め、妙に冷静になった松井が静かにツッコんだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
前回から超個人情報を披露されていた周さんが、ここのお支払い! 流石、スパダリ(≧∀≦) そして、智子の紅に染まるトマト再び! あの威勢のよい声がとても好きキャラです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。