240話 色気のない風呂イベント
238話が抜けていたので補填しております。
すみませんでした( ;ᯅ; )
「みぃぃぃぃぃおぉぉぉぉぉぉぉぉ」
玄関から地鳴りのような声が聞こえてきた。
珍しく残業で澪桜もさっき帰ってきたばかり。
仕事着のまま、パタパタと玄関に向かう。
「おかえり〜! というかなんだい変な声なんか出し……クッサぁぁぁぁ!!!」
ズザザザザー!!
勢いよくそのまま膝で廊下を滑り、ゴールパフォーマンスをしてしまった。
ポリエステルのパンツスーツはよく滑る。
籠ったような物凄く甘い匂い。
胸焼けしそうだ。
澪桜が顔を顰めて鼻を摘むと
雨に打たれた猫のように凹んだまま
周は玄関でいそいそと服を脱ぎ始めた。
「うう。よくわかんないんだけど、昼過ぎからなんだよぉ。神崎さんのあのくっさい香水の匂いが何故か付いてて……最悪だよぉ」
「……だと思った。この匂いあのボインちゃんの匂いだもん」
一瞬、服を脱ぐ手を止め感心するように澪桜を見て周が笑う。
「……すごいね。澪桜さん1回道端で会っただけでしょ? よく覚えてたね」
「バニラとジャスミンが強すぎるんだよ。グルマン系自体は私も好きだが、その匂いは日本人向けじゃない……。って君、本当は彼女と浮気してたんじゃ―――」
澪桜は上から下まで周を舐め回すように見つめ、目を細めた。
「やめてよぉ! 俺、神崎さんは生理的に無理!! 同じ空間にいるのも無理! てか澪桜以外の女なんか全員ゴミだもん!!」
「……拒否の仕方が最低。そして世の中の女性に謝れこのボケナス」
澪桜のツッコミを気にする事なく、玄関でパンイチになる哀れな男、周。
周が脱いだ服をその場で受け取り、澪桜は洗面台に持っていく。
後ろから付いてきたパンイチ男が情けない声を出す。
「もうこの服死んだかなぁ?」
「まぁ、一か八か、匂いの救世主、オキシさんに任せてみよう。それでダメだったら諦めろ」
熱いお湯を出しながら眉を下げて、慰めるように周を撫でた。
「あああああああ。今期新作のお気に入りのセットアップがぁぁぁぁ。おのれ神崎!!! いつ俺に……あ」
「ん? どうした?」
「わかった。あの時だ……。エレベーターで目の前にいたんだよ今日の昼。俺が上層部の月例ミーティングから戻って人事部の藤堂さんとの打ち合わせに行く途中だったと思う。あの時以外接触してない」
「なるほどねぇ。そりゃ災難だったね……っと。これで良し、30分したら洗ってみよう。荒業だから色抜けしてても怒るなよ」
トングで周のセットアップとカットソーを漬け込み、スマホのタイマーをセットした。
少し不貞腐れた周が靴下を脱ぎながら唇を尖らせた。
甘えるように澪桜を見つめて。
「もし落ちなかったら捨てるからいいよ……はあ。ショック。今週新しいセットアップ見に行きたいから澪桜ついてきてぇ」
「はいはい。ついて行くよ。ついでに私もストッキングほしい。伝線ラッシュだよ」
「あのさ澪桜、毎回思うけど扱いが雑すぎるんだよ。毎回履く時、親の仇みたいにめいっぱい引っ張るのやめなよ。……いっその事、100デニールのタイツにしたら? 分厚いやつ」
スカートの際、足が出るのが前から気に食わなかった周はここぞとばかりに提案した。
澪桜はトングを戻して首を傾げる。
「100でにーず?」
「デニール!!」
笑いながら突っ込んで澪桜の頭を撫でたあと、周は風呂に消える。
まだ微かに籠った甘さが残る空間。
周が上がるまでに少しでも改善してやろうと、澪桜はエアフレッシュスプレーをふりかける。
相変わらず、自分以外の女性に対して辛辣な周の態度に安心感と何故か優越感を感じて。
(……私と仲のいい人以外には、今のまま辛辣でいてほしいなんて思うのは……私も大概性格悪いな)
周の下着を準備して、タオルを置きながら、一人反省した。
ガラッ。
薄くシルエットが見えるバスルームのドアが開く。
驚いた澪桜は振り返った。
「どうしたんだい? シャンプー切れてた?」
「違うよ。ねぇ澪桜もおいでよ、お湯溜めたから♡」
「わ、私は後で入るから」
「ほら、早くおいで」
「あまっ周さ……やめろォ! 服が濡れるぅ!」
周に掴まれた腕が既にもうびしょびしょ。
「どうせ風呂から上がったら、俺が洗濯おじさんになるんだから別に濡れても良くない?」
洗濯おじさん。
周の潔癖ルーティンに付けられたあだ名。
澪桜は顔を真っ赤にしてたじろいだ。
まだお風呂など共にしたことは一度もないから。
「そうだけどっそうだけども! 一緒にお風呂なんて無理!いつか結婚してからね!」
「ね? お願い、今日は甘えさせて」
「無理ぃぃい!!」
茹でダコになりながら首を振った。
すると掴んでいた腕の力が緩む。
「ちぇっ……甘えたかったのにぃ。いいもん澪桜がお風呂から上がったら甘えるもん」
バン!
口を尖らせ、拗ね倒す周はドアを素早く閉めた。
熱気と湿度の残る洗面所で、濡れた服を眺めて澪桜は呟く。
「……既に甘えまくってる自覚は無いのか……」
たまに周が年上だと言うことを本気で忘れそうになる澪桜。
恥じらっていたのかなんかバカらしくなった。
ガララ
「なっ……何!?」
思わず乙女のように身体を隠すかっこ悪い周。
仁王立ちの澪桜はシャワーを奪い周に言う。
「仕方ねぇ、入ってやるよ」
「えっ……い、いいの?」
「いいよ。ったく、いちいち拗ねるんじゃないよ」
「みっ……澪桜!!! カッコイイ! 俺惚れちゃう♡」
「はいはい。そりゃどぉも。身体洗うから風呂に浸かっとけ」
「いえ、私めがお背中お流し致します!」
「うむ! 良きに計らえ!!」
「ああ、澪桜……惚れる。好き♡」
「おー、惚れろ惚れろ。もっと惚れて、タランチュラを飼うことを承認――」
「それは嫌!」
その後、保湿たっぷり入浴剤入の乳白色の湯船に浸かりながらシャンプーやヘッドマッサージ、メイク落としにフェイスエステまで。
周のおもてなしにより、澪桜は極上のバスタイムを過ごしたという。
次回は19日20:00更新です!
どうかよろしくお願いいたします!!
くっさい周と澪桜のじゃれ合いの回でした。
次回はお話が動き始めます!




