幕間 追憶 ①
本日より、周の過去編に入ります。
需要はないかもしれないなと思いつつも
書かせて頂きました。
しばらく続きますが
もし宜しければお時間のある際にでもお読み頂けた嬉しいです(*^^*)
言葉を探すように周は少し考えていた。
簡潔に、誤解を解く為に。
チラリと助手席に目を向ける。
澪桜の表情はいつもと変わらない。
だから余計に分からない。
何を考えているのか……
とりあえず、周はサクッと説明を始める。
「まず俺は、世の中の女性全てに偏見と嫌悪を持って避けてるわけじゃない。トラウマがある訳でもない」
「えぇ!? そうなのかい? ……でも君前に……」
「そう。付き合う前に君に言ってしまったアレ。あれはね、君に『俺に女の影はありません、君以外に興味も何もありません』て意味で言ったの。女嫌いって言えば君だけが親友として特別だって伝わりやすいし、君を好きな気持ちも隠せると思ったんだよ……ったくバカにも程がある」
「あ、なるほど……そういうことか」
「まあ、欲を向けてくる、擦り寄ってくる女性は嫌いだっていうのは事実だけどね。浅はかで気持ち悪いから」
「うん。辛辣!」
「というか、留学してインターンでクレストリンク本社に入るまで、本当に人付き合い苦手だったよ。今は仕事は仕事と割り切れるようになったけど、プライベートは変わらず苦手なままだしね」
「なのに私に一目惚れ。意味がわからん」
「意味なんか無いよ。どの年齢、どのシチュエーション、どのタイミングで君に出会っても変わらない。絶対一目惚れしてたから。ただ単に、俺にとって君は唯一無二だったってだけ」
「……分からんような分かったような。とりあえず私以外の女性には元々興味無くて、別に私で女性不信を克服した訳じゃないし、そんな意図も最初から全くなかったって事だね?」
「さすが澪桜さん♡ 完璧です」
「最初からそう言えよ……ったく! 付き合う前に勘違って傷付いた私の気持ちを返せ」
「うう。それは本当にごめん。一生かけて償わせて頂きます」
「重い!! 超重力!!」
太陽が少しずつ高くなって行き青空が澄んでいく。
先程までビルの影に隠れていた遠くの積乱雲がやっと姿を現し始めた。
途中で見付けたカフェに寄り、テイクアウトのサンドイッチとアイスコーヒーを買ってまたドライブを続ける。
ローストビーフを挟んだ極厚なサンドイッチを幸せそうに頬張る澪桜に笑みを向けて、周はコーヒーに口を付けた。
「さてと、誤解も解けたみたいだし。面白くない昔話を始めますかね。どこから話そうか」
「生まれる前から!」
「えぇ〜?ばあちゃんとじいちゃんから聞いた話と、大人の話を盗み聞きした会話を、俺が今になってから推測した内容だから……ホントかどうかは知らないよ?そこから語ると残念な話だけど……まあいいか。じゃあ始めます」
周もサンドイッチを頬張り一息をついた後、眉を下げて『変に期待するなよ』と念を押した上で話し始めた―――
***
俺の父親、結城 司は早稲田大学に通ってた。
第一文学部。
夢は通訳だった。
卒業を控えた大学4年の秋。卒論と就職の目処が立った父は構内の生協に貼ってあったパンフレットに心を奪われる。
『スウェーデン、ノルウェー、オーロラの旅』
テレビでしか見たことがなかった幻想的な景色。バイトで貯めた金を使って行くことに決める。
空港に向かうバスの中で、たまたま隣の席になった女性。
たまに講義で一緒になる程度の顔見知りだった。
軽く挨拶をして、旅を共にする者同士、他愛ない話をする。
彼女の名前は如月 雫
俺の母親だ。
夢は翻訳士。
二人が意気投合して距離を縮めるのにはそんなに時間はかからなかったと思う。
有意義なスウェーデン旅行を楽しみ
旅行から帰ってきた頃には、恋人になっていた。
二人で夢を語り、海外で活躍する自分達を想像してグローバル企業に就職する。
バリバリと働きキャリアを積んでいく両親。
恋人としても濃厚な時間を共有していた。
働き始めて5年ほど経ったある日。
妊娠が発覚する。
雫の実家は北海道。
愛し合う二人だけど互いに夢を叶えきれてない今、まだ結婚など考えてもいなかった。
雫は動揺し、堕胎をする為に病院を探し、司と話し合っていた。たまたまかかってきた祖父母からの電話で司がそのことを打ち明ける。
すると祖母が静かに話した。
「司。彼女を幸せにする気があるなら結婚しなさい。妊娠で体を傷めるのは女性なのだから。もし産むなら子育てのサポートは任せなさい。あなた達はまず、自分達の生活環境を整え、自分達の行動に責任を持ちなさい。せっかく授かった命なのだから安易に決めずに……後悔しないようにしっかり考えて行動しなさい」
その言葉に諭された二人は自分達の行動と考え方を改め、婚姻届を提出し雫は堕胎せずに、出産を選ぶ。
「それって……」
話を割って口を開く澪桜の言葉に頷く。
「そう。それが俺……」
周は寂しそうな笑顔のまま、続けた。
……周という名前は祖父が付けてくれた。
俺が生まれてからも両親は変わらず仕事に生きていた。
祖父母が子育てをし始めて半年後、父と母は念願の海外赴任の切符を手に入れる。
父親は直接海外の会社と契約し、母親は勤めていた会社からの打診で転勤となった。
場所は、カナダ。
両親は俺を連れて行かずに、祖父母に預けたままカナダに渡る。
そこから、祖父母との生活が始まった。




