182話 恋愛漫画とふたり
遅れてすみません!!!
なるべく20時ジャストが無理でも、20時台に更新をと思ってますので引き続きどうかよろしくお願いいたします!
「……炎天下すぎて……足湯は無理だねぇ」
「いや、うん。ごめん……よく考えたらそうなるよね。これは正しく地獄だね」
「ほら、見てご覧? ワニがバテて絶望的に口を開けているよ。まぁ、表皮と口腔内の殺菌には適しているけどね」
「言い方」
「にしてメガネカイマンの赤ちゃんは可愛かったね!」
室内で展示されていた小さなワニの話をしながらすぐに駐車場に向かい、車に乗り込む。
今は真夏。
源泉との相乗効果でより一層の熱気を浴びる為、滞在時間はかなり短くなってしまった。
軽く景色を楽しみながら、血の池地獄、海地獄、白池地獄でそれぞれ温泉卵を買ってメインイベントである食べ比べを楽しむ。
イートスペースで頬張る澪桜は、とても満足そうだった。
周も食べてみたが、確かに。澪桜の言っていた通り地獄によって味が違う。
色も……。
だけど
「……ゆで卵3個は多い……」
3つも食べるのはやはりヘビーだった。
「あははは! お昼に食べようと思ってた鶏天入りそうにないねぇ〜明日かな!?」
そんな風におちゃらける彼女が可愛くて笑みを深めた。
お土産屋さんで買った団扇で澪桜を仰ぎながらハンドタオルで汗を拭いてあげる。
何をしていても愛おしい。
周は冷たい飲み物を喉に流し込みながら、時刻を見た。
14時半……。
そろそろ向かうか。
ここから更に1時間半の所にある宿泊施設。
1部屋ずつ離れのロッジになっているそこは久住平原にある。
澪桜は大切そうにお土産を抱えて大満足の表情で歩いていた、そんな彼女と手を繋ぎ車に向かう。
「色んなアクティビティ予約してるからね。旅館に着いてもも楽しみにしてて」
「それはいいねぇー! ワクワクするよ」
だいぶ乗りなれてきたレンタカーに乗り込み、最大出力でエアコンを入れた。
少しずつ冷たい空気が車内を満たしていく。
また長いドライブが始まるので飲み物と澪桜の好きな曲のプレイリストを準備し、軽快に走り出す。
街中から少しずつカーブの多い山道に差し掛かってきた。
また気付くと可愛い鼻歌が聴こえなくなっている。澪桜が景色に目を向け、思考の海に深く落ちているようだ。
今朝からとても多い気がする。
(も……もしかして澪桜さんも意識して?)
すると澪桜が飲み物を飲みながら周に話しかけてきた。
「そういえば、こないだ沙也加ちゃんが休憩中に漫画読んでたんだ。それで私にも貸してくれて久しぶりに漫画を読んだよ」
思考の海に落ちてるからてっきり……少し意外な方向性の話だった事に驚きつつも、周は穏やかに返す。
ちょっとだけガッカリしたことはナイショで。
「へえ、どんな内容だったの? 面白かった?」
澪桜は楽しそうに周の方へ身を乗り出した。
フワッと優しいヘアオイルの香り。
思わず周はキュンとしながらも平静を装う。
「えっとね、主人公が学園の舞踏会で婚約者から断罪されるまでのタイムリミット半年以内に、フラグをへし折っていく話でね。義理の弟が主人公を好きで最終的にくっつくんだけど」
「うん……義理の弟なのに!? くっつけるものでもなくない!?」
「なんかねぇ、実は他国の王子様でねぇ。なんやかんや主人公の家が匿ってたんだって! 最終的に婚約者は浮気相手と共に断罪されて、主人公は隣国に嫁いでハッピーエンドだった!」
「なるほどねぇ。……少女漫画なんでしょ? ドキドキした?」
「うん。ドキドキした……物凄く」
「ど、どこに?」
周は少し食い気味に聞いてしまう。
澪桜のドキドキポイントが未だによく分からないから。
「なんかねぇ、こんな長いドレス、しかもコルセットでウエストを縛り上げてご飯って食べれるのかな? とか。
カテーシーって体幹しっかりしてないと綺麗に出来ないのに凄いなぁとか。
男尊女卑の凄い世界だからか、婚約者がいるのに他の女子と学園内で懇意になってる婚約者が断罪しようとする。なんとも闇を感じる世界だなぁとか。
それにあんな華奢な体型の騎士がクレイモアを扱うなど、どこにそんな筋肉が……」
「うん。思ってた回答と違う!!! 漫画の楽しみ方が独特!! いいけど!! いいんだけども!!」
「それ沙也加ちゃんにも怒られた! あはははは! 激推しポイントを教えてくれたんだけど、それがねぇ……」
推しのポイント。要はときめいたところと言う意味だろう。それくらいは何となく分かる。
澪桜と友達の時に色んな恋愛ドラマ、恋愛ドキュメント、ハウツーなどなど、調べまくったから。
「ああ、恋するふたりがドラマチックに惹かれ合うみたいな? キスとかハグとか?」
「そう! いきなり弟が主人公を壁に追いやりドン!! て壁を叩くんだよ。そしてガン飛ばして見下すの!! ムカつくだろう!?」
「いや、それは壁ドンという……過去に俺も似たような事した気がするんですけど……」
「ん? 何か言ったかい?? 頭突きかましたくなるだろう!?」
「……うん。まぁ身に覚えはあるよね。……所で澪桜さんはどんな所にときめくの?」
現に過去何度もやらかして澪桜から鉄槌を下された周はある意味納得しながら質問をした。
調子に乗って怒られてばかりの周は、どうせならキュンってさせたいと思ってしまう、切ない男心。
だって未だにときめいて貰えたことがない気がするから。
「周さんに? ……そうだね、よくあるよ」
「よくあるの!? た、例えば!?」
「例えばねぇ、先週寝癖で後頭部クリンって跳ねた髪をヒョコヒョコさせながら出勤してた時とか」
「いや、それその場で教えてよ!!」
「自分の家なのに身体感覚あんま無いのか、よく躓いてしょっちゅう小指ぶつけて悶絶してるとことか」
「毎回爆笑してるだけでしょ!?」
「穴の空いた靴下間違えて、また洗って履いちゃうとこ! 穴あく前に捨てればいいのに!! 変にケチ!」
「まだ履けるかなー? って思っただけだし! 全部俺のダメなとこじゃん!! しかも地味だし恥ずかしいし!! ……全然嬉しくねぇよ!!!」
「なんでだぁい。本気で可愛いと思っているのに」
「!! ……かっ可愛……」
思いっきりギャーギャーと物申していたはずなのに。
澪桜に優しい手つきで頭を撫でられた周は、一瞬で大人しくなってしまう。
振り回されて
手のひらで転がされて
何気ない言葉や仕草で愛を感じて。
結局いつもときめくのは自分のほう。
「なんかズルいんだよなぁ……」
「なにが」
君に溺れて執着して。
愛して。
多分気付いてないと思うけど
澪桜さんが読んだ恋愛漫画の男なんかより、俺の方がよっぽど君を溺愛してる。




