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181話 義理の妹はカブトムシ

すみません、本日更新1時間遅れてしまいました……。


ずぅぅっと頭の中で方向性がさだまさしで(定まらなくて)ご迷惑おかけしました(༎ຶ⌑༎ຶ)



「じゃあね、2人とも元気で。風邪ひかんようにね」


「うん、お母さん達も。皆元気でね」


「息子よ! 澪桜をよろしく頼んだぞ!」


「はい。勿論ですお父さん」



深く穏やかに周は微笑んだ。

父は満足そうに彼の肩を叩きながら


「いいか? プロポーズは踊ったり歌ったり自己満足なサプライズだけはするな!? 黒歴史になる!!」


と訳の分からんことをアドバイスしている。

経験者語るだろうか……



そこに亮太が近付いてきた。



「ねぇちゃん、次帰ってきたらカブトムシの幼虫取りいこうや!」


「となると冬かな?……うーん、どうかなぁ」



澪桜は周に視線を向ける。

笑顔のまま頷き、優しい声で答えた。




「正月、また二人で新年のご挨拶に来よう」


「……そうしなさい。正月はゆっくり3~4泊したらいいけん」



母の声、皆の笑顔が嬉しくて明るい笑顔で澪桜は返した。




「うん! そうするよ!じゃあまた正月にね!」




車に乗りこみ、実家を後にする。


家の前に立って見送ってくれる家族、ずっと手を振っていた。

どんどんシルエットが小さくなっていく。


豆粒ほどのサイズになっても、誰も家に帰らず見えなくなるまで手を振り続けていた。


窓の外を眺めなが物思いにふける小さな背中に向かって周は話しかける。




「お会いできて本当に良かった。また正月に来ようね、澪桜さん。今度はもっとゆっくり過ごそう」



「……そうだね。周さんも一緒にカブトムシの幼虫探そうね!」


「うん! それはいらない!! というかセンチな気分になったんじゃないの!?」


「センチ? ……いやアイツ、つい最近カブトムシのせいでフラれたって嘆いてた癖に、懲りてないなぁと思っただけだよ」



「相変わらず紛らわしい!!」




昨日、縁側に座ってハーゲンダッシュを食べていた時のこと。いきなり周に泣きついた亮太。



『聞いてくださいよ! オレ先週、結婚考えてた彼女に振られたんですよ! 彼女の誕生日の前の日に、ちょっと仕掛けてたナイトトラップ回収してくるって言っただけなのに! カブトムシ採ってくるって言っただけなのに!! どうせ当日はずっと一緒に過ごすんだから、少しくらい良くないですか!? カブトムシ、夜採らないでいつ採るんだよって話じゃないっすか!?』



アイスクリームを食べながら半泣きで相談してくる亮太に、恋愛経験がほぼ無い周は何てアドバイスしていいのか全然分からなくて、



『……そもそも彼女の誕生日とカブトムシを同じ天秤に乗せてたのがダメだったんじゃない? 日にちずらせば良かった話だし』



『ガーーーーーーン!!』




と痛恨の一撃を食らわせたのだ。

悪気は無い、でも時に正しい言葉は人を奈落に突き飛ばす。

それなのに。昨日の今日で……。



昨日の出来事を反芻した周は残念そうに笑って呟いた。



「まぁ、ある意味タフだね、彼は。……カブトムシ好きの女子と出会える事を願うよ」



「……そうだねぇ。いるかなぁ? カブトムシ女子」


「いや、気持ち悪いよ……足6本あってずんぐりむっくりした節足動物の女の人。嫌でしょ? そんな義理の妹」




アホな話をする二人を乗せた車は爽快なスピードで大分県を目指した。



***



「本日の第一のイベントは何でありますか!?」





湯布院という温泉街でお土産をたんまり買い、テンションの上がった澪桜は周に敬礼をしながら聞く。


駐車場に向かう周は楽しそうに振り返った。



「はい! 本日は以前不発で終わった温泉卵食いだおれツアーを決行したいと思っております」



「温泉卵!!イヤッホーーーーイ」



駐車場代を周より先にササッと支払い急いで車に乗り込む澪桜。周は『やったな!?』と大袈裟にリアクションしながら笑って運転席に戻った。


飲み物を飲みながら抜けるような青空と照り返しで蜃気楼ができているアスファルトを颯爽と進んでいく。


好きな曲が流れる度に嬉しそうに口ずさむ澪桜にチラッと目を向け幸せそうに周は微笑んだ。



夢にまで見た澪桜との泊まりがけの旅行。

付き合う前からずっと見せたかった景色を今日、見せることが出来る。


前から何度もネットで調べ、確認したから大丈夫だと自分に言い聞かせる。


後は……天候だけだ。

天気予報では今夜は快晴になってる。



自然に触れる事が好きな澪桜なら絶対に喜んでくれるはず。

そう思ってサプライズで予約していた今回の宿。



信号待ちのタイミングでまた澪桜に視線を向ける。



「……さっきからチラチラとなんだい?? コーヒー欲しいのかい?」



ドリンクホルダーのコーヒーを取って周に渡す。

全然違うけど、その気遣いが嬉しい。周は口角を上げたまま受け取ったコーヒーに口を付けた。


しばらく走っていると、


さっきまでテンション高く車内で歌っていた澪桜が急に静かになった。

彼女がこうなった時、何か急に思考の海に落ちた時だと知っている。


一昨日の親友の事だろうか……ご家族と離れて寂しくなった?


それとも……



キス……して?



ぶわっ!!!


あの日の澪桜を思い出し猫のように全身粟立たせる周。

思わず両手でハンドルを握ってしまう。

「ん?」



(きっきききききききききききキス……澪桜さんと……キス……)



恋愛初心者の周は一人、勝手に撃沈した。



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