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176話 再会

何故か分かりませんが……


今回めっちゃ文字量多い。

すみません……


お付き合い頂けましたら幸いです。

難しい事は何も書いてない……


ただの飲み会の始まりです。

 


 続々と集まっていく同級生達。だいたい15~6人ほどの人数になった所で瓶ビールを小さなグラスに注ぎ始める。


 服部が大きな声を出して手に持つグラスを掲げた。



「えー。まだ来てないメンバーもいますが、時間も押してる事ですし、先に始めたいと思いまーす! カンパーイ」


「「「カンパーイ」」」




 あちらこちらでグラスを交わす音が響いた。澪桜も周りに合わせてグラスを軽く重ねる。


 隣の田端が鼻の下を伸ばした変な顔で、澪桜のグラスを鳴らした。



「綺麗になった安達さんに乾杯」


「はは、そりゃどーも」



(スッポンは可愛くて好きだが、どうも私はスッポン顔の人間は好きではないらしい)



 冷静に田端を眺め、辛辣なことを思う。


 ほんの少しだけ口を付けてさりげなくテーブルに置いた。早々に烏龍茶を注文し、目の前の懐かしい料理に目を向ける。


 学生の頃、家族と綾音と一緒によく晩御飯食べに来ていた鉄心。



(この冷奴、特製の練りゴマ使ったタレが絶品なんだよなぁ〜)



 ワサビを多めにつけて、醤油と練りゴマが効いた甘めのタレで食べる。

 口の中に調和された旨みが広がった。



「んんー! 最高!」



 チラッと左に視線を向けると、田端の背中が見えた。今度は左隣に座った女子に必死で話しかけている。


 ようやく解放され、気が楽になった澪桜はゆっくり食事を楽しんだ。


 会いたかった綾音はまだ来てない。

 先程服部くんが気を利かせて 席を開けてくれた正面の席に目を向ける。



 その流れで視線をスライドさせると、斜め前のゆっきーというあだ名で当時名を馳せた男子が隣の女性と楽しそうに話をしている。


 今も変わらずイケメンの部類なんだろう。

 隣の女性がしきりに前髪を気にしながら話しているから。



 ゆっきーが気を遣ってたまに私にも話をふってくれるので、聞き耳を立てて空気を崩さないようにだけは気をつけた。



(綾音……まだかなぁ)



 大好物の鶏ワサは綾音と懐かしみながら食べたくてまだ口をつけていなかった。


 するとしばらくして、遠くの方で歓声が上がる。声のする方に澪桜は視線を向けた。



「綾音、久しぶり!! うわー! めっちゃ綺麗になってる」


「どこぞの芸能人みたいやん!!」


「あはは、やめてよ照れるやーん」



 少しくぐもった独特な声。

 久しぶりに聞く懐かしい響きに澪桜は胸が高鳴った。


 早速幹事の服部が綾音に席を伝える。



「香西さん、安達さんの前にしとったけん1番奥やけ!」


「……そうなんや。分かった」



 少しだけ声のトーンが落ちた気がしたが、それより澪桜は久しぶりに会話が出来ることが嬉しくて綾音を待った。


 ゆっくりと歩いてくる女性。



 綺麗に巻いたセミロングで茶髪からブロンドのグラデーションがかかった髪、切長で挑発的な涙袋が目立つ瞳に薄い唇。


 オフショルのカットソーとショートパンツという出で立ちで現れた綾音。


 黒髪のボブにいつもボーダーのTシャツだった昔とは全く違う髪型や服装に驚いた澪桜は、目を大きく瞬かせ見上げた。


 目が合う。



 一瞬綾音の視線が澪桜を上下し笑った。



「……久しぶりね、澪桜。あんたぜーんぜん変わっとらんやん! びっくりしちゃった」



 イタズラな声で言った。その挑発的な態度に少しだけ違和感を感じたが、気にせず澪桜は笑みで返す。



「久しぶりやね! 元気にしとった?? 綾音はめっちゃ変わったね! 前から綺麗やったけど、更に凄く綺麗になったね」


「そぉ? ……ふふ、ありがと。でも澪桜みたいなタイプのがモテそうやん? 素朴で親しみやすいし」


「……そこは別に興味無いからねぇ」


「えー? あたしはそっちのが羨ましいよ〜!」


「うん???」



(何の話だ? よく分からない。……それより最近の綾音の話がききたいのに)



 更に声をかけようとしたが、少し高めの優しい声に遮られた。



「綾音ちゃん、今日も本当に綺麗やね」


「やだ、ゆっきーったら!お世辞上手いんやけ」



 ゆっきーが綾音に視線を移した。髪をかきあげ笑いながら返して上機嫌になった綾音は、座った途端彼と話し始めてしまった。


 もっと他にもたくさん話したかったのだが、邪魔してはいけないと澪桜は静かに食事を続けた。



(まだ時間はたっぷりあるんだ、焦る必要はない)



 自分に言い聞かせて飲み物を口にする

 するとしばらくして綾音の方から話しかけてくれた。




「そういえば澪桜ってまだ東京なんやろ? 仕事続いとるん?」


「うん、続いてるよ細々とね」



「え?安達さんって東京なんや! すごいカッコイイね」



 また田端がこちらに話しかけてきたが、目の前の2人もいるからそこまで嫌ではない。笑って首を振り澪桜は続ける。



「そんなことないよ。しがないOLやってるだけだよ。給料安いしね」


「そ、この子手取り25万でやりくりしとるんよ。アタシならムリムリ、そんな貧乏生活」



 呆れてるという仕草で澪桜の個人情報を晒す綾音。

 昇給も大してない残念な給料を暴露するのはやめて欲しい。


「? 香西さんはなんの仕事しよると?」



 田端は自然と綾音の方に視線を向けた。

 田端の左隣の女性陣も気になるようでこちらの話に入ってくる。



「大した仕事じゃないけど、企業から案件頂いて、動画やコラムで宣伝?のお手伝いをさせて頂く感じのお仕事とかな?後は投資を少し」


「え!? 待って……それって、インフルエンサーってこと!? 凄くない!? ガチで芸能人やん」


「そんな事ないよぉ〜私なんて底辺やけさ〜」


「ちなみにフォロワーって何人くらい?」


「さあ……あんまり気にした事なかったけど15万人……くらいかなぁ」



「15……すげー!!! ガチで凄いやん香西さん」


「やっ……やめて!? 私目立つの苦手なんやけぇ〜」



 煌びやかなネイルを見せつけるように華奢な手を振る。

 女性陣は綾音を羨望の目で見つめた。


 凄いとか、羨ましいとか、色んな声に綾音は満足そうに微笑み、ポケーっと見つめる澪桜に視線を向けた。


 目線が合った事に喜び姿勢を伸ばす。


 やっと積もり積もった話ができると意気込んだ。

 すると綾音の口が開く。



「澪桜さぁ……」


「うん!? なんだい??」


「なんであんた、そんなモノトーンの地味な格好なの?」


「へ?」



 キラキラした爪の先が澪桜の胸元を指す。

 グリッターが綺麗な眩い爪を見た後、自身の服に視線を落とした。

 確かに白と黒。というか澪桜はあまり色味の物を持ってない。似合わないから。



「髪の毛も真っ黒だし……もしかして!? 自分のことブルベ冬とか思ってるんじゃないでしょうね!?」


「ぶるべふゆぅ?」



 前から大して変わってないはずの私服のセンスと色味を指摘されて、なんのリアクションも出来ないでいると怒られた。



「ちょっと! 聞いてる!?」



 澪桜は慌てて返す。



「あ、ごめん。よく分からんし、意識したことないよ」


「いやいや、言い訳しなくていいから。口紅の色も合ってないし。あんた……どう見ても日本人に多い ブルベ夏でしょ。勘違いするのやめときなよ、恥ずかしいから」


 

 口紅なんか塗ってないのに、何故か説教される。

 少しモヤッとしたが、まぁそんなの別にどっちでもいい。



「綾音ちゃん詳しいね! パーソナルカラー診断したの?」



 女子が目を輝かせて会話に入ってきた。



「うん、プロに診断して貰ってちゃんとセカンドまで調べたの。私はイエベ秋らしいんだー」


「わー! イエベ秋ってたしか珍しいやつだよね!? すごーい」


「えー? でも渋い色しか似合わないからおじさんみたいだし、迷惑だよぉ」


「大人っぽくていいじゃん!」



 目の前で繰り広げられる軽い女子っぽい会話。

 全くついていけない。



 前によく綾音と話していたような……菓子パンマンの中で誰が最強説とかが話したかったのに。


 タガメが田んぼに居たよって教えたかったのに。


 今綾音が何にハマってるのか聞きたかったはずなのに。


 少し、距離を感じてしまう。




「とりあえず澪桜はもう少し色味入れた方がいいよ。ボートネックも澪桜は肩幅あるし、なで肩だからやめた方がいい」


「……はは、そうだね」



 この服は周さんが選んでくれたお気に入りだったのに。



『澪桜さんは線が細くて首が長いからボートネックが似合うね。綺麗だよ』



 少し悲しくて料理を食べるふりをして下を向いた。



 私は綾音とどんな話をしたいんだろう。

 今の彼女は何を言ったら興味を持ってくれる?

 笑ってくれる?


 何も考えずに話せてたあの頃。


 今は喉が詰まって何も言葉が出ない。



「……あれ? 澪桜、その指輪」


「あ!! 安達さん結婚したと!?」



 田端の思った以上の大きな声に周りから注目を浴びてしまった。

 不意をつかれてびっくりした澪桜は慌てて答えた。



「あ、あははは。結婚はまだしてないよ、婚約はしたけどね。これはただのファッションリングで」


「だよね!? びっくりしたぁ……そんなおもちゃみたいなダッサイのが結婚指輪なんて有り得ないよね!? ……てかエンゲージもちゃんと貰うんでしょうね!?」



「えっと……それは、まあ」


 大切な思い出のある指輪。決して安物なんかじゃないと思う。悔しいのに何も言葉が出てこない。始まったばかり同窓会の空気を壊したくない。


 なにより……今の綾音には何故か言い返したくなかった。

たった一言で関係が終わってしまいそうで。



「ならよかった。親友が変なカス男に引っかかったんやないかって焦ったよ。……で? どんな男? 私が見定めてあげる。写真ないと? 年収は?」


「年収か、気にした事なかった。500万円はあるんじゃない?」



 モヤる気持ちを切り替えて、軽く返す。一応、自分より100万ほど上乗せした。多分そんな訳ないけど。



「はあ!? あんた結婚する相手の年収すら聞いとらんの!? 今すぐLINUで聞いてみりいよ」


「いいよ〜聞くの怖いから(桁違いだと腰抜かしそうで)」


「いや、そこは大事やろ。あんたよくそんなんでよく結婚しようとしよるよね……信じられん。何処で働きよるん?」


「クレストリンクって会社だよ」



「へぇ、めっちゃ大手やん。でもどうせ平でしょ? ……まぁそれなら年収6~800はありそうね。普通かな」



 綾音の第一審査はパスしたらしい。

 敢えて余計なことは言わずにやり過ごそうとしたらさらに追求される。



「で? 顔は?」


「えっと」



 澪桜がスマホの画面を開こうとしていると、綾音から奪われてしまった。

 ロック画面には旅行の時に撮った周が優しく微笑んでいる。



「? ……何この写真。あんた推し活してたっけ? それともこれAI?」



 ブッ!!!

 思わず烏龍茶を吹き出してしまう澪桜。



(周さん、君AI画像と言われているよ……)


 周を憐れに思いながら口を拭きつつ訂正する。



「……それが私の婚約者だよ」


「ええ!? う、嘘でしょ!? これ……人間!?」



 あまりの驚きに画面と澪桜を何度も見直す。

 すると周りに人が集まってきた。知らぬ間に澪桜の同級生達に晒される周。



「ちょっと見せて? ……うわ! 確かにAIっぽい!!」


「めっちゃイケメンやん!」


「すご!! 綺麗〜」


「てか安達さん結婚するとー!? おめでとう!!」



 みんなの視線が澪桜に向き、祝福ムードになり始めた頃、爪を軽く噛んだ綾音は口を開いた。



「……でも気を付けなよ? こーゆー男は大体浮気しとるんやから。そんなテキトーな安っぽいネックレスとか指輪贈るってのがもう怪しいもん」


 澪桜の胸元に光るネックレスに視線を向けて言った。



「っ!!」


「香西さんって人生経験豊富なん? なんか悟りの境地って感じの話し方やけど」


「まぁね〜伊達にモテてきてません!」



 あははははと、笑いが起きる中

 澪桜だけがその笑いに乗れない。



 綾音の心無い一言に澪桜は胸を締め付けられた。


 なんで周さんのこと何も知らないのにそんな風に言うのだろう。


 友達だった頃、心を込めて贈ってくれた大切なネックレスを貶された事に腹が立ち、何も言わずに唇を噛み締めていると眉を下げた綾音が優しく声をかけてくる。



「あ、ごめん言い方悪かったね。でも私は心配やけ、心を鬼にしてアドバイスしよるだけやけね! それに澪桜は硬すぎる! もう少し柔軟にならないと」



「? ……柔軟?」


「そ。……後でわかるよ」



 意味深に笑う綾音。

 よく分からないまま、不快な感情が少しずつ広がっていく澪桜。


 その時座敷にまた1人、最後のメンバーが現れた。

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