170話 田んぼの最強種とピンク色のアレ
すみません。
今回、澪桜と亮太が暴走します。
寄生虫と虫が出てきますので苦手な方はバック推奨。
基本、田んぼで姉弟がワチャワチャして、周が振り回される。
そんな回です←
のほほん回ですが、読んで頂けたら幸いです。
ちなみに、Google検索はしない方が……笑
「はっ……初めまして!! 俺、安達亮太って言います!25歳です!」
周に気付いた亮太が澪桜を下ろした後、かしこまって挨拶をした。ピシッと角度90°で美しいお辞儀だ。
周は拍子抜けするように何度か瞬きをして、柔らかく微笑む。
「初めまして、結城周です。2日間よろしくね」
「えっと……いえ! こちらこそ……てか周さん身長高ぇ! いいな〜何cmですか?」
いつか澪桜に聞かれた質問。姉弟なんだなと微笑ましくなった周は穏やかに答えた。
「185。亮太くんとあまり変わらなくない?」
「うわすげー。俺178ですからねぇ。靴で軽くかさ増してやっと180ですよ!」
ニシシ! と無邪気に笑う表情まで澪桜にそっくりな亮太。澪桜と同じ濡鴉色の艶めいた美しいサラサラの髪。
縦目の大きい二重に凛々しい眉毛。控えめの鼻と口が少年っぽさを醸し出していた。
和やかに周が話していると、遮るように澪桜が割って入った。
「それより亮太、アンタこんなとこで何しよったん?」
周との会話をやめて澪桜に視線を向けた亮太はニヤリと意味深な微笑みを浮かべ、また田んぼの方に向かって畦道ギリギリに立ち澪桜を手招きした。
「ちょお、こっち来てん! 姉ちゃんもビックリするけん」
「んん? なになに」
「あれ見てん?凄くね?」
「……!? まっまさか……」
田んぼにしゃがみこんでどんどんとテンションを上げていく姉弟の様子に、何となく……嫌な予感がした周は、少しずつ後退りして車に戻ろうとした。
ぐりん! と2人揃って目を輝かせこちらを見つめる。
ギリギリで逃げ遅れた周の裾を掴み引っ張った。
「周さん!! あれ見てごらん!? 東京じゃまず見られないよ!!」
「そうそう! 周さん! せっかくやけん見たがいいですよ! 俺が捕まえるけん接写します!?」
「なっ……何の話!?」
声が裏返りそうになる周。決して離して貰えない服。
亮太の手にはなにやら大きな黒い生き物。
それを間近で見せてきた。
シンクロした姉弟の声が響く。
「「タガメ!!!」」
(どうでもいいーーーーー!!!)
周は心の中で死ぬほど叫んだ。
ジリジリと照りつける日差しの中で大の大人が3人揃ってやることじゃない。
だが多分……そんな事ツッコんでもこの2人には通じない。
そんな気がしていた。
「あ、でも近くで見るだけにてくださいね! タガメに刺されたら死ぬほど痛いけん!!」
「そうそう。めっちゃ腫れるけね! いやぁカッコイイねぇ〜水生昆虫の最強種はやっぱ違うねぇ!」
「やろ? コンビニにから帰りよってたまたま見つけてさ! 思わず止まったけね! 最強種なのに農薬にはしこたま弱いけ、滅多にお目にかかれん絶滅危惧種やし」
「ぶはははははは! ウケる!」
爆笑する澪桜。
一体何にウケるのかがよく分からないこの二人の会話。
無駄にタガメの生態について知識が増えていく。
やっぱり血は争えないと周は何故か深く納得した。
キャーキャーと楽しそうにタガメを観察する二人を後ろからしゃがみこんで眺めていた。
ふと左側に視線を向けると、ちょいちょいピンク色の見たこともないツブツブが田んぼの端や稲にくっついていた。
不思議に思った周は指を差して聞く。
「ねぇ、そのピンク色のやつって何? 足元にも大きなカタツムリみたいなのがいて可愛いね。なんて言う生物だろう?タニシにしては大きいし」
「何を言っている!! ジャンボタニシの卵だよ! 触っちゃダメだからね、周さん!! タニシも触っちゃダメだよ!?」
「そうですよ周さん! 広東住血線虫に寄生されますよ!? そのタニシは特定外来生物ですからね!」
「日本住血線虫かもしれないよ!! 住血線虫とはね――」
「……ああ、誰か俺を助けて」
「周さん! ちゃんと聞いてるかい!?」
「いえ、聞いてません」
こうなったらもう止まらない事を周はよく知っている。目を輝かせて寄生虫について語り始める。愛しの澪桜の唇から地獄のような知識がまた溢れ出していった。
***
しばらく田んぼで道草をくったあと、亮太をピックアップして3人でで家に向かう。
ものの2分ほど走った所に誘導されてそこの敷地内に停めた。
真新しい大きな家。白い壁が眩しい。
最近の1階建てのデザインハウスな感じでとてもオシャレだった。
澪桜の言っていたオンボロな家はそこには無く、周は首を傾げる。
だがそれは澪桜も同じだった。
「な……なんじゃこりゃ。掘っ建て小屋の面影皆無!」
自分の実家に酷い言いよう。
亮太が笑って返す。
「そっか、姉ちゃん改築してから見てないんか。だいぶ綺麗になったやろ? 老後の事考えて平屋にしたんやって」
「ものすごい綺麗になったね! 話では聞いとったけどここまで変わっていたとは!! そういえばあんた工場で働きよるんやろ? 継ぐん?」
「継ぐわけねぇやん! 俺はメンテナンス専門の技術者だよ。機械いじってる方が好きやし、経営とかどーでもいいもん」
和やかな二人の会話に周は一瞬忘れてしまっていた。
結婚のご挨拶に来た事を。
思い出した途端一気に緊張が走る。
楽しそうに話しながら進んでいく二人について行く足取りがどんどんと重くなっていった。
遂に澪桜の手がドアにかかる。
「ただいまー! 実家に帰ってきた感全くないけどもー」
斬新な帰省の挨拶。
「あ、澪桜! おかえりー」
パタパタと奥から出てくるエプロンをした年配のスレンダーな女性。
顔を見ると澪桜にそっくりで周はびっくりした。
女性は品のあるふわっとした笑顔で頭を下げる。
「初めまして、澪桜の母です」
「はっ……初めまして、澪桜さんとお付き合いをさせて頂いております結城周です」
緊張した様子で周が頭を下げる。
すると電話の時のテンションで母が返した。
「んまーーーー!いい声♡ 周さん写真で見るより断然美人さんなんやねぇ! ささ、おあがりになって?」
「おあがりになってやって……ぶふ」
「どこの貴族や」
普段母が使わないであろう口調に澪桜と亮太は小声で笑う。
するとよそ行きの母の皮が剥がれ、一瞬で素が滲んだ。
「というか亮太! 澪桜! なんでそんな汗だくなんよ!? あんた達まさかとは思うけどまた虫探しよったんやないやろうね!?」
さすが二人の母親。すぐに行動がバレる。
バツが悪そうに2人は目を泳がせた。
早く上がりたいのに母が上がらせてくれない。
「うぐぐ」
「……バレたか」
「こんのバカ子が!!!! 周さんまで付き合わせたんやろ! お客様が熱中症にでもなったらどうするんかちゃ!!! 周さん、うちの子らがごめんさいね。先にお風呂入り! あ、水分補給しっかりしてからね」
姉弟二人を無視して母が心配そうに謝る。
眉を下げて周は遠慮した。
「あ、お気遣いなく。僕は全然大丈夫ですので」
「いやいや、良くないけん! ほらほらこっち」
「は、はぁ。ではお邪魔します」
静かにあがろうとする周。靴を揃えていると後ろから大きな声が聞こえた。
「んー? 騒がしいなぁ。お母さん、周さんと澪桜が到着したんか?」
振り向くと、タンクトップにトランクスという下着姿の大柄な中年男性がお腹をボリボリと掻きながら歩いてきた。
「っ!?」
あまりの衝撃の光景に周が固まっていると澪桜と亮太と母が3人揃って同じ言葉を叫んだ。
「「「お父さん(オトン)! ズボン履け!!!」」」
(遺伝子って色んな意味ですごいなぁ)
家族全員に出会って3分で周の緊張がほぐれたことは言うまでもない。
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