15話 肩が凝る
(結局昼飯の時、周が憐れに思って終わっただけだったな……)
そう思いながら就業時間を終え、帰る支度をする山本。
「周のヤツに、変に期待させて悪かったなぁ」
ポツリと呟き
何と弁解しようかなと考えていた。
コツコツ
規則正しい音が廊下奥から近づいてきた。
営業部に打ち合わせに行っていた澪桜が戻って来る。
「あ、山本さん……お疲れ様です。まだ帰ってなかったんですね、ちょうどよかった」
帰る支度をしている山本に声をかけた。
「おう、お疲れ。……ん? どうした?」
「いや、お昼の時の話なのですが……」
澪桜もデスクを片付け帰る支度をしながら山本の方を向く。
「周の話か?」
「はい。沙也加ちゃんがいると冷やかされそうでタイミング見計らってました」
ちょっと言いにくそうな困ったような顔をした。
お? やはりさっきのは照れ隠しだったか? 安達め、小賢しい真似しやがって。と少し心の中で悪態を吐きながら期待した。
「なんだよ。言ってみろ、LINUするのが嫌になったとかか?」
敢えて考えの反対の事を言う。照れているであろう澪桜が話しやすくなるように。
「いえ、LINUトークはとても楽しいです」
含みのある言い方をする。その表情に何ら嘘が無さそうで山本は急に不安に駆られた。
「ん? なんか引っかかることでもあるのか?」
「……はい。でもこれ、言っていいのかな」
澪桜はとても申し訳なさそうな顔をする。早く相談の内容を確認したい山本は優しい上司のフリをして、頷いた。
「言ってみろ。大丈夫だ、何か嫌な事があるなら俺からアイツに言ってやるよ。心配するな」
(まさかあいつ……オヤジ構文を?)
山本は内心不安で仕方ない。
その言葉を聞いてホッとする澪桜。
モジモジと話し始める。
「実は、最近肩が凝ってしまって……」
「ん? 肩?? 何で肩こり?」
予想のはるか斜め右過ぎて話が読めない
「結城さん、LINUの返信が物凄い早いんですよ。ほぼ秒で返ってくるんです。両手フリック何ですかねぇ」
「だから、それがどうしたんだよ。早いのは別にいいだろ
」
分からなさすぎて山本は当たり前の返事をした。
すると澪桜はうんうんと頷く。
「そうなんです。会話が楽しいから私も頑張って返すんですが、結城さんほど早く返せないし、手も疲れるし、肩も凝るし。それで、音声入力使って入力してみたんですよ!そしたら誤字だらけで結局打ち直さないといけなくて、本当に───」
「あいつに電話させればいいだけじゃねぇか、そんなの。……面倒臭ぇ」
内容を聞いてるうちに呆れる。心配して損したと思った。余りのくだらなさに脱力する山本。
「ええええ!? それはっ盲点!!!!」
顎がハズレそうなほど驚く澪桜。
それを見て山本は余計に脱力し、ため息をついた。
「いやいや、むしろ思いつかねぇのが盲点だよこっちから言わせれば。……ところで1日どのくらいレスしてたんだよ?」
「……200ほど」
「にっ……200!? バカかお前らは!! 高校生かっ!!!」
「いや……だって。返ってくるから返さないと」
律儀か!山本は心の中でツッコんだ。
「だから、電話すれば全部解決だろ」
「でも……それはっ。結城さんにもプライベートがあるでしょうし、ご迷惑なんじゃ」
澪桜は不安そうにする。
「いや、そんだけ即レスしてる奴にプライベートなんかあるか。喜んでかけてくるぞ、あいつ」
山本は冷ややかな顔をして、最もな正論で結城にとって、とてつもなく恥ずかしい痛恨の一撃を言い放った。ここに結城が居ないことだけが不幸中の幸い。
(あいつ、どんだけ必死こいてLINUに齧り付いてんだよ。……ぶっ。痛々しすぎる。後でいじってやろ)
思わず口元が緩む。
「……うーん、そうですかねぇ。申し訳ないなぁ。でもなんて言って切り出せば」
考える澪桜。
(こいつはなんで、こんな対人関係ポンコツなんだ?)
こないだのBALの時も少し話を聞いたが、どうも普通の人と考え方がズレてる気がする……と、悩む澪桜を見て呆れた。
(……まあ、周もだいぶズレてるけどな。似たもの同士ってやつだな)
ため息をつき、仕方ないという態度で山本は手を振った。
「あー分かった分かった、俺から言っとくよ。何気なく自然にな。お前は家で待機でもしとけ」
澪桜はそれを聞いて感心し、拍手しながら満面の笑みで山本に言う。
「おお!なんか上司みたいですね!業務でもない、こうゆう時に限って!!珍しい事もあるもんだ!!」
「うん。おまえ……マジで埋めるぞ♥」
山本もニッコリと笑顔で言った。




