16話 悪友
社員達がキリをつけて続々と帰っていく中、
結城はデスクで次の会議に必要な書類の最終確認の為、チェックしていた。
「マネージャー、お先に失礼致します」
「お疲れ様です。」
女性社員3人が結城に頭を下げる。
ゆっくりと顔を上げ、彼女達に優しく微笑む。
「はい、お疲れ様です。また明日」
少し動きを止める女性社員。慌ててオフィスを出て行った。
視線を手元に落とす。
次の書類を手に取った。契約の抜けがないか調べ、部下のミスを補填する。全てのチェックを終え、ゆっくりと椅子にもたれかかって背伸びした。
「……ふう」
(今日も終わった。安達さんも終わったかな? LINUしてみ―)
ブーブー
スマホが鳴る。
安達さんだ!! そう思って、慌てて画面を覗き込んだ。
……山本だった
「なんだ」
落胆した気持ちをそのまま口にして、内容すら見ずにスマホをポケットに入れる。
バックアップを取った後パソコンの電源を落とした。書類を手際良くファイルに1つ1つ挟み、全てをデスクの中に入れ鍵をかける。これで今日の業務は終了だ。
おもむろに立ち上がり帰る支度を始めた。
やり残しが無いか一応確認した後、オフィスの電気を消して、フロアを颯爽と歩く。
高身長の為、歩幅が広く歩く速度もかなり速い。すれ違う社員達と微笑みながら会釈を交わす。おもむろにポケットのスマホを取り出した。
(……安達さんにLINUしよう。終わったよって)
ソワソワする気持ちを抑え、表情に出さないように気を付けながら画面を見る。すると先程の山本のバナーが目に入った。
『朗報だ連絡しろ』
(……朗報?なんの事だ)
はぁ。
結城はゲンナリとした顔でため息をついた。
死ぬほど面倒臭い。
(あいつがこう言う時は基本ロクなことが無い。大学の頃からずっと。
何かと俺のダメな部分を弄ってくるし、ウザいし。
ことある事に昔の事持ち出してくるし、ウザいし。
なんかこう、そこはかとなく……ウザい。
まあ、安達さんに関してはちゃんと感謝してるけど)
仕方なくLINUを開き返信した。
『何』
それだけ。
そう、本来の結城はこんな感じなのだ。
基本的に返信は要件のみ。既読スルーも多い、そんな男。
山本なんぞどうでもいい……という感じで澪桜にLINUをする。最近の日課となっている今、仕事終わったよLINU。
『お疲れ様です。俺は今から帰ります。安達さんは今日は定時上がりですか? 気を付けて帰ってくださいね』
するとすぐ既読が付いて返信がきた。
『お疲れ様です。はい、私もギリギリ定時で上がれました。結城さんはお車でしたよね? 運転気を付けてくださいね』
それを見て……自然と頬が緩んだ。
自分の身を案じてくれた事がとてつもなく嬉しい。
澪桜の優しさが心に染み渡る。
(おっと……いけない。まだ会社だ)
エントランスを抜けて外に出るまで、結城は緩みそうになる頬をを制御した。業務上の結城を完璧に"演技"する。人にプライベートは一切見せない。そう決めているから。
早くまた澪桜にLINUしたくて急いで駐車場に向った。
(車に乗ったら、運転する前に何回か返信しよ♪)
内心ウキウキの結城は足取り軽く歩いて行った。
***
「…………チッ! こいつのどこが丁寧なんだよ」
山本はイラッとする。
人が朗報だと教えてやったにも関わらず、電話してくるでも、LINUすぐ返すでもない。やっと返ってきたかと思えば
『何』
それだけ。
……コイツは本当にっ!! と、イラついて頬が引き攣る山本。
思えばいつもそうだった。
基本的に良い奴なのだが、雑に扱われ過ぎてなんかムカつく。綺麗な顔して言う事もキツい。
お互い気を使わないでいられるが、多分腐れ縁というヤツだ。
(大人になったから……自分に隙はないとでも思ってんだろ? 残念だったなぁ、さっき手に入れた取っておきのネタで弄り倒してやる。覚悟しとけよ? 即レス男のあ、ま、ね♪)
クックックッ
悪魔のような笑い声を上げながら
山本は会社を出た。
結城と山本、どっちもどっち笑
LINUに慣れてきてようやく僕→俺に一人称が移行完了した結城さんでした。
ちなみにLINU3日目は砕けた時のみ俺でした。




