21話
「……ロイゼ」
ハロルド陛下が私の名前を呼ぶ。複雑な感情を噛み締めるようにも聞こえた。
「私は、間違えた。『運命の番』がいるのに君に――揺らいだことが怖くて、攻撃することで自分を守った。そんな愚かな男だ」
美しい深青の瞳を長いまつ毛が隠す。
ゆっくりと息を吐き出したその音からは、自身の行動に対する後悔が見てとれた。
「……だが」
ハロルド陛下がまぶたをあげて、私を見つめる。
「そんな愚かな私だが、ただ愚かなままで終わりたくない」
ゆらりとも揺れない、強い意志の輝きを秘めた瞳。その瞳を好ましく思った。
「ロイゼ、私も君のことを知りたい。君という人が何が好きで、何が嫌いなのか。君が何を感じ、どうありたいのか……その全てを」
「……はい」
ハロルド陛下の言葉に、頷く。すると、ハロルド陛下は深く頭を下げた。
「君を信じることもせず、一方的に疑い、私を守ることを優先してしまった。本当に申し訳なく思っている。……本当にすまない」
一国の王が頭を下げることは簡単ではない。
慌てて止めようとして、その手が震えていることに気づいた。
「許されることではないと思う。その上で、君を知りたい」
人は誰だって、間違いを犯すこともある。
それが取り返しがついたり、つかなかったり。
今回の私は――。
「ハロルド陛下」
私は、ハロルド陛下の手を握った。
初めて自分の意思で触れた温度は、かつて――アレックスのものと限りなく近く、でも違う温度だ。
「許されない罪は私にもあります」
はっとした顔で、ハロルド陛下は顔を上げた。
私は、自分の大事な友に、一生の傷を負わせるところ――というか、ほぼ負わせてしまった。
ノクト殿は、私が記憶を失ってからずっと献身的だった。それはノクト殿の元来の優しさももちろんあるだろうけれど……私の行動のせいなのではないかと今では思う。
「私たちが知ることは、とても苦しいことになるかもしれません。お互いの罪を思い知ることになるから。……でも」
ハロルド陛下をまっすぐに見つめる。
「だからこそ、私も逃げたくない。せっかく見られた夢の続きを、このまま終わりたくない。だから――」
小さく、息を吐き出した。
こんなに緊張するのは、ハロルド陛下に告白した瞬間以来かも知れない。
「!」
そんな私の手を、ハロルド陛下が握り返した。まるで、励ます様に。
……緊張すると、手を握ってくれるところ、アレクと変わっていないわ。
ひとつ、知ることができたことに微笑んで、息を吸う。
「私の友人になっていただけませんか?」
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