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間違えられた番様は、消えました。  作者: 夕立悠理
五章 私が取り戻せたもの、取り戻せなかったもの

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20話

 そんなせっかく見ることができた夢の続き。

 この結末をただただ不幸にするようなことはしたくない。

「私は一度消えたいと願い、実際に消えました」

 団員たちの失望、親友だと思っていたエルマの豹変、師であり友でありライバルだったノクト殿との仲違い、そして今世での目標だったハロルド陛下に信じてもらえなかったこと。

 そうなるに至っただけの理由はいくつかあった。


「でも、生命活動を終える前にハロルド陛下に助けていただけました」

 消失魔法で異空間を彷徨っていた私を王城まで運んでくれたのは他ならぬ陛下だと、ノクト殿から聞いた。


「…………っ」

 ハロルド陛下の表情が苦しげに歪む。でも、私が言いたいのは、責めたいだとかそういうことではなくて。

「ありがとうございます、ハロルド陛下。ハロルド陛下のおかげで、私は見つめ直す機会を得られました」

 もし、あのまま消えることができたなら。

 私にとっては、とても楽だったと思う。

 自分の未熟さにも愚かさにも気付かずにすむことができたから。

 胸にある硬い感触を思い出し、そっと息を吐く。その感触は、ノクト殿のすべてに等しい魔力をかけた誓いの証である鍵だった。


 私の愚かさの一つ。私はノクト殿の目の前で消失魔法を使った。あの日は、限界でーーもう無理だと絶望してのことだった。

 でも、そうすることで傷つく人がいるのだなんて、考えられなかった。まるで、自分のことしか見えていない。身勝手で残酷なことをしてしまったのだ。


「だが……そもそも私が、君を信じていれば」

「そうですね。信じていただけたら、嬉しかっただろう、とは思います。でも、ハロルド陛下はミルフィアに愛された自分ではなくなったとおっしゃいましたが、きっとアレックスでは私を助けられなかった」


 アレックスの翼では異空間までは羽ばたけない。王であるハロルド陛下だから、私を助けられたのだ。

「……ハロルド陛下」

 私はハロルド陛下を見る。

「思うに、仮定を考えても仕方ないのです。私たちは、過去の選択の結果、残された結果を生きていくしかない」


 どれだけ、自分の愚かさが憎くても、苦しくても、逃げ出したくとも。それを抱えて歩いていく。

「陛下には陛下の、アレックスにはアレックスのできること、できないこと、変わったこと変わってないことがあるのでしょう」

 同じ魂を持つとはいえ、肉体が変われば変わる部分もあるだろう。それは、同じ魂、同じ肉体でも、年齢を重ねて出てくる変化とも似ている気がする。

 


「私は許されるのなら、それを知りたいのです」

 かつてのような焦がれる熱はない。

 でも、前世というフィルター越しではないハロルド陛下。そんなあなたと向き合う機会を得られた。

「ハロルド・ソフーム陛下。あなたという生で得たあなたを知りたい。そして、私ーーロイゼ・イーデンのことも知って欲しい」

 その結果、私たちの道は別れるのかもしれないし、またつながるかもしれない。

 どうなるかはわからないから、もう一度を望んだかつての私たちの望みとは異なってしまうこともあるのかも。

 それでも、きっとそれでいい。

 私たちの前世と今世は繋がってはいるけれど、今この瞬間を選択するのは私たちなのだから。

いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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こちらも覗いていただけたら幸いです。完結作なので安心して読んでいただけます。
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